日中朝鮮,ロシア150年戦争史(51) 副島種臣外務卿(外相)の証言③『明治の外交ー日清戦争、三国干渉から日露戦争へ』★『ロシア朝鮮支配の陰謀・奸計で山県外交手玉にとられる』
日中朝鮮,ロシア150年戦争史(51)
副島種臣外務卿(外相)の証言③
『明治の外交ー日清戦争、三国干渉から日露戦争へ』
((大隈重信編『開国五十年史』上巻 明治40年12月)
日清、日露戦争の原因は朝鮮をめぐる清国、
ロシア対日本の紛争である。北朝鮮問題のルーツ・・
『明治の外交の争点は朝鮮問題(明治37年12月稿)』
(大隈重信選、副島八十六編『開国五十年史』上巻 明治40年12月)より
次いで五月、韓国に東学党が蜂起し、奸吏を更を殺戮し、弊政の改革を図る。
定時、日本駐在清国公使・江鳳藻と清国公使袁世凱とは、我内政の衝突は以て外に出兵すること無かるべきを臆断し、奇貨居くべしと為して、李鴻章に謀るに清兵の派遣を以てせり。
李も初めは多少躊躇する所ありしが、遂に三千の兵を威海衛より韓国牙山に急行せしめたり。
而して天津条約により、清国は正式に出兵の事を帝国政府に通告せしかば、我も亦同条約の明文によりて、同一の挙に出づるに決し、ここに八千人より成れる一混成旅団を派遣し、京城に入らしめたり。
清国時に我に撤兵を要求せり。然るに、我政府は清国と共に韓国の改革をなすの必要を以て之に応へ、清国之を拒絶せしかば、我は自らから改革案を作成して、韓国政府に迫るに其遂行を以てしたるに、彼は我が撤兵の後にあらずんば、何等の改革をも行はざる旨を以て答へたり。
事ここに至りては、帝国は自由行動に訴ふるの外なく、更に清国政府の決心を促したり。是より先き露国は我政府に通告すらなく、若し日本直に遼東半島より撤兵することなくんば、平和を破るの責任は日本に在るべしと。
而して我之に応ふるや、其理を尽くせり。是に至りて我政府は尚ほ更に平和人道の大義により、清廷に議るに、彼我、両国協同して韓国の善後を処理せんことを以てせしに、清廷の答ふる所更に要領を得ず。
是に於て、我政府は遂に独力、事に富るの止むを得ざるに至れり。
七月二十五日偵察の目的を以て派遣せられたる我一遊撃艦隊は、豊島附近に於て清国の二軍艦と戦ひて之を走らせ、又、英国旗を掲げたる運送船・高陞号の清兵を載せて牙山に赴かんとするに合するや、我命に従はざるの故を以て、浪速艦長東郷大佐(今の大将)終に之を轟沈せしめたり。
是れ実に日清開戦の祝砲なりき。此、轟沈は英国の言論界に是非の批評を喚起し、事態容易ならざるの観ありたるが、幸にも高陞号船長ガルスウオルジーの明確なる陳述と、ホルランド及びウエストレーキ両教授の如き公法学泰斗の公平なる判断は、一時猛烈なりし英人の激昂を鎮静したり。
七月二十九日、我軍は清兵を牙山に被り、八月一日に至りて東京及び北京に於て宣戦の布告を見たり。
日清戦役は上述の如き事態より破裂して、遂に翌二十八年四月十四日に調印せられたる馬関(下関)條約によりて、其局を結びたり。其規約せし所、左の如し。
一 清国は韓国の独立を承認すること。
二 遼東半島及び其沿海を日本に割譲すること。
三 台湾及び澎湖島を日本に割譲すること。
四 二億両の償金を日本に支払うこと。
五 沙市、重慶、蘇州、杭州等を開港場となすこと。
六 楊子江の航行を自由となすこと。
条約の調印後六日、当時、伝ふる所に由れば、露国はドイツの後援と、仏国の賛同とによりて、我政府に左の忠告書を途致せり。
露西(ロシア)皇帝陛下の政府は、日本が清国に提供したる平和の条約を見るに、日本の要求せる遼東半島の領有は、絶えず北京を威嚇し、且つ又。韓国の独立を空文となし、従って絶東に於ける永遠の平和を害するものなりと認む。
故に皇帝陛下の政府は、日本皇帝陛下の政府に対し、誠実なる友誼を保つの証拠して、遼東半島を確有するなからんことを勧告するものなり。
日本は実に当時、此等三大強国の抑圧に屈せざるを得ざりしなり。日本は遼東半島及び其沿海を還付したる報酬として、所謂三国の友誼の力によりて、清国より三千万両を収めたり。
日清戦役の終局と共に、井上馨伯は公使として韓国京城に赴任し、其特有なる精力を以て直に韓国の改革を企て、其軍隊は日本を模範として改造し、地方政府の組織も亦革新せられたり。
されど二十八年九月、井上伯の韓国を去りて、三浦中将の之に代はるや、日ならずして紛擾起り、韓国暴徒等は数多の日本壮士と結託して王城に突入し、遂に閔妃を殺したり。
是に於て、我政府は三浦中将を招還して、極力此暴挙に由って失ひたる既得権の回復を計りたりと雖も、如何にせん京城に於ける我威信は全く地に堕たり。露国公使館は礼厚うして国王を館内に迎へ、是より韓国の政柄は露公使の左右する所となれり。
爾来露国は或は韓国軍隊の日本教官を罷めしめて、之に代ふるに自国の将校を以てし、或は各所の森林伐採値を獲取し、而も加ふるに満洲鉄道を半島内に延長するの特権を獲たり。
是より我政府は大に戒心する所ありて、二十九年五月、山県有朋元帥は陛下の御名代として露国に差遣せられたる伏見宮殿下に随行し、ニコラス第二世の戴冠式に参列したるを機として、我政府のため彼の外相ロバノフと交渉したる結果、有名なる山県、ロバノフ日露協商に調印したたり。
本協商の主旨として、両国は韓国に於ける対等の居住権を有し、又同国の財政を強固ならしむる目的を以て、共に顧問権を有することに同意し、且つ秩序の回復と共に国王を王宮に還幸せしむることに決したり。
韓国のため、絶東の平和と富盛との為、幸にも日本は過去の失政を認めて、直に協商の主旨に従ひて行動せり。
然りと雖も、露国は此協商を見ること恰も死文の如く、而して韓国に於ける天然上及び財政上の富源は露国の掌握する所となり、
加之宮廷に於ける露国の陰謀は更に一層の甚しきを加へたり。
然れども日本は決してこれが為に排斥せられたるものにあらず、断乎として其権利を主張し、露国政府に迫りて、両国均等の樽限と機会とを以てすべき新協商を締結せんことを要求して、数回の商議を重ねたる末、西、ローゼン協商は調印せられたり。
本協商によりて両国は韓国の独立を承認し、而して兵学教官及び財務顧問の招請には、両国政府あらかじめ協議を遽ぐべきことを約し、露国は韓国に於ける我商工業の計画に対して、其発達を妨碍せざることに同意せり。
明治三十二年、日本は京釜鉄道建設の計画を立てたり。其他に重要なる事件とては起らざりしが、露国の陰謀は久しからずして日本と干戈相見るを免れしめざるべしと、しきりに巷説は伝へられぬ。
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