<名リーダーの名言・金言・格言・苦言・千言集③>〇「能ある鷹はツメを誇示せよ」ホンダ創業者 本田宗一郎ほか10本
<名リーダーの名言・金言・格言・苦言・千言集③>
前坂 俊之選
〇「首の差が勝負、そのわずかな差が巨大」
東北大学学長 西沢潤一
江崎玲於奈博士が、ノーベル賞を受賞した「江崎ダイオード」のデータ発表は、タッチの差であった。江崎は学生にデータを測定させたら、「江崎ダイオード」の特性を示していた。何かあると思い、いろいろ調べて理論的に説明し、結果を論文として発表した。
そのころ、同じようなデータ測定をしていた学者は、世界に数人おり、同じ現象に気づいていた。しかし、一人は説明がつけられないので、論文を発表せず、他の研究者は「原因は表面に付着した水のせいである」と見過ごしてしまった。
ほとんど同時に、同じものを見つけながら、トップになるか否かは、首の差である。実験を繰り返して、奇妙な現象に気づき、疑問をあたためて、説明がつくように解明しているのである。
ほんのわずかな〝運″を活かしたところに偉さがあり、そのちょっとの努力の差が大変、巨大な差になる。
◎●〇「先義後利」
大丸創業者 下村彦右衛門
大丸は江戸時代に「越後屋」(現在の三越)、「白木屋」(現在の東急百貨店)と並んで、三大呉服店の一つに数えられ、大衆向けの商法で、江戸町民に人気があった。
その彦右衛門の信条が「先義而後利者栄」(義を先にし、利益を後にする者は栄える)である。
つまり略して「先義後利」。今も大丸の経営精神に、脈々と流れている。
彦右衛門は次のように商売道を説いている。
「客のためにならぬ物は売らぬこと。世間では、目先のことだけを考えて、商いをする者があるが、そういうやり方はダメだ。いかに急のものでも、そのために高値にせず、客に上下をつけぬよう」
「必ず、自分だけのことを考えずに、広く天下の御用を勤める、という考えでなければならぬ。衣服・食事のおごりもいけないが、心のおごりがもっといけない」
☆☆☆「下問を恥じず」
明治・大正財界の大御所 渋沢栄一
「下問を恥じず」とは、わかりやすく言えば「知らぬことは誰にでも聞く」という意味である。渋沢はこの言葉を処世訓にしていた。
よく「知らぬことは誰にでも聞くさ。俺はそんなことなんか、恥ずかしいとも何とも思わない」という人があるが、実際は口ばっかりで、低い位の人にも下って、聞くということは決して容易ではない。たいていの人は、知らないことを他人から教わると、自分の位置が引き下げられたように感じるものだ。
伊藤博文にしても、他人が公が知らないことを、知らせてあげようとすると「そんなことは昔から知っている」といった態度に出られた。〝下問を恥じぬ″、ことは君子にしてやっとできることで、凡夫には難しい。これは考えようによると、他人に聞くのは、自分が知らないのを恥とすることなので、大いに勉強、修養しようという心掛けかも知れぬ。下問も恥じて、勉強しないでは全く見込みがない。
〇●「能ある鷹はツメを誇示せよ」
ホンダ創業者 本田宗一郎
「能ある鷹はツメを隠す」という諺があるが、本田は「そんなに手腕を出し惜しみしていたら、スピード時代の今日には通用しない。
せっかくの手腕も宝の持ち腐れだ」と言う。
せっかくの手腕も宝の持ち腐れだ」と言う。
「自分はこういう考え方をしている」という意思表示し、「自分は鷹だ」「自分は鳩だ」と、堂々と主張してほしい、と。
自分の個性を十二分に自覚して、表明できてこそ、立派な仕事もできるし、仕事に対する強い自信がプライドとなる、というわけだ。
世の中に無益なものはない。石ころだってセメントと、混ぜればコンクリートになる。能があるのに口をつぐんで、ツメを隠しておいて、人に評価されようというのは、虫がよすぎるのではないか、というのが本田の持論である。
要するに、自分の主張をはっきり表明すること、自分の価値を理解させること、実力のある者は堂々とその実力を誇示せよ、本田らしい至言である。
「需要がそこにあるのではない。
我々が需要をつくり出すのだ」
ホンダ創業者 本田宗一郎
ウォークマンは、今や若者のアクセサリーと化してしまった。
必需品である。ソニーのある技術者が「こんなものがあったら、音楽好きの自分には便利だな」と思って、つくったのが爆発的な大ヒット商品となった。本田の言う「常に需要はアイデアと生産手段によってつくり出すものだ」という典型である。
新商品ばかりではない。昔からあって、新たな需要がのぞめそうでないものも、やり方次第である。例えば、カサである。これなど、新規の需要など見込めそうもないと思われるが、戦後、コウモリ傘は爆発的に売れたが、すぐ生産過剰に陥って、メーカーはつぶれた。次に折りたたみ式の傘が考案され、第二のブームが再び訪れた。そしてダメになった。
続いて、ボタンを押すと自動的にパッと広がるアイデアで第三の波がきた。本田の言う通り需要は潜在的にあるもので、新しいアイデアで、商品化に成功すれば、石油層にボーリングが到達した時のように、ニーズは噴き出すのである。
〇●「活き金はいくら使っても、死に金は使うな」
三井物産常務、政友会領袖 山本条太郎
事業を成功させるためには、「三つの活用に留意せよ」と山本は言う。
「人の活用」「時の活用」「金の活用」の三つであり、もう一つ「ムダを省くこと」を加える。
事業をするには、見込みがたてば、寸刻を待たずに着手し、「これはいけない」と思えばためらわずに、即座に退却する。つまらぬ〝小利小損″にこだわっていてはダメ、という。
大事なことは「人間、いかに金に不自由しても、活き金を使わなければならない。どんな小さなところにも心を配って、死に金というものを決して使ってはならない」ことだ。
さらに忘れてはならないことは「一つの満足すべき結論が見つかると、それを他に必ず活用すること。人間、志を大きく持たなばならないが、計画倒れにならぬように注意し、実行の伴なう限度にとどめよ」ともいう。また、実行や現実にのみとらわれて、一日先、一年先、十年先を見通すことを忘れてはいけない。
「すべての物事に全力を尽くす。いかなる細事もよく研究し、万事疎漏がないように」と。
●〇「主観を入れた情報はこわい」
巨人軍監督 川上哲治
巨人が十連覇を逃したのは、この「主観を入れた情報」が原因であった。
九連覇したあと〝十連覇目″の年。それまで、川上にはチームで何があっても、細大もらさず情報が入っていた。何のトラブルの報告もないので、うまくいっている証拠と、信じ込んでいた。九連覇もすると、どうしても選手のモラルもゆるみ、トラブルも起きがちだ。幹部も気が大きくなる。こんなことぐらい、監督に言わなくてもいいのじゃないか、とコーチが勝手に判断して、情報はそこでストップして、川上の耳に届いていなかった。
コーチがたいしたことではないと思っても、監督の立場で見ると、重大なこともある。
主観を入れて、報告する必要がないと思う情報の中に、異に大切なものがひそんでいる。
最強の時に、危険はひそかに忍び寄ってくる。
組織には、最終判断に必要な情報は細大もらさず、トップに入るようなシステムにしておかねばならない。
●〇◎「得手に帆を上げよ」
ホンダ創業者 本田宗一郎
本田は「鍛冶屋」の息子である。父親が真っ黒くなって、機械づくりをしているところで幼い時から一緒になって、遊んでいた。機械いじりが飯より好きだし、得意であった。
生涯の仕事としても、この機械いじりを選んだのも、このためであった。
本田の持論は「得手に帆を上げよ」 である。人間には得手、不得手がある。得手なものなら、進んでやるし、やればできるが、不得手や苦手なことは、やりたくないし、やってもうまくいかない。やはり「好きこそ物の上手なれ」 である。
本田が社長になっても、ナッパ服で、真っ黒くなって工場で機械と取り組んでいると、人は陣頭指揮などと誤解する。本田は好きだからやっているだけの話である。
得手に帆を上げるために、本田は「社員は得意分野で能力を発挿せよ」といい「能ある鷹は爪を隠すな」という。どのような能力があるのか、積極的にアピールしてくれなければ、上司もわからないからだ。会社も人間も「得手に帆を上げる」のが成功の道なのである。
☆★「経営者の資質」
ダイエー創業者 中内功
経営者の資質には何が必要か。中内はこういう。
一.仕事への信念である。経営についての、確固たる信念を持って、先頭を走る経営者にこそ、万軍の兵は従ってくる。経営者の信念は、一人ひとりの信念となる。
二.勇気を要する。経営者は決意を下す人である。結論を出すのは経営者しかいない。たとえ、四面楚歌になろうとも、自己の信念を貫き通すのが、経営者である。
三.経営者は柔軟性を持つ。確固たる信念と勇気は必要だが、それは独善であってはいけない。より正しいこと、より善いこと、より美しいことに対しては、謙虚に座を譲る姿勢が大切である。
四 経営者は行動力を持て。すべてはここに結集される。不退転の決意を心に秘めて、最も困難な仕事を受け持ち、陣頭に立って、叱咤する経営者の姿こそ最も美しい姿である。全社員を心服させる力を持つ経営者がいる経営体は敵なしである。
〇◎「勝つことより、勝ち続けること」
巨人軍監督 川上哲治
プロ野球には、昔から次の三つのジンクスがあった。
一.勝つことは難しい。
二.勝ち続けることは、なお難しい。
三.いったん手放した覇権を取り返すことはそれ以上に難しい。
これはプロ野球だけではなく、企業、組織にも共通することである。
業界でトップに立つこと、ナンバーワンの組織をつくることは難しいが、それ以上に難しいのがトップを維持することであり、一度転げ落ちたトップを再び奪い返すことである。
常勝巨人の黄金時代を築いた川上は、勝ち続ける秘訣として「好調の時不調を思って部下を育成し、後継者の育成も抜け目なく行っていること」と言う。
勝ち続けると慢心、オゴリが生じ常勝のブレーキとなる。得点力の八割は精神力が決める。気のゆるみ、慢心は勝つことへの甘さを生みやすい。企業経営にも同じことが言える。
●〇「会社は利益より信用が大事」
イトーヨーカ堂創業者 伊藤雅俊
イトーヨーカ堂が、小売業のトップに躍進した秘訣は、取引先への心くばりであった。伊藤は四つの点を心掛けている。
一.お客様と同時に、取引先があってこそ成り立っている。会社が大きかろうと、小さかろうと、取引先とイトーヨーカ堂は対等である。
二.取引先との約束は必ず守る。支払いについても、取引先に待っていただいたことは創業以来、一度もない。
三.取引先の接待は受けない。人間は弱いもの。接待を受けると、つい情実が働いて、そこに腐敗の温床ができる。会社がつぶれるのは、外圧ばかりでない。
四.返品を出さないようにする。わずかな返品額でも、小さな取引先は生きるか、死ぬかの問題。取引先に損害を与えることは絶対避ける。
「お客様、お取引先に、いつも謙虚な感謝の心を持ち続けないと、会社は崩壊します」
関連記事
-
『オンライン/真珠湾攻撃(1941)から80年目講座①』★『この失敗から米CIAは生れたが、日本は未だに情報統合本部がな<<3・11日本敗戦>を招いた』★『2021年、新型コロナ/デジタル/経済全面敗戦を喫している』(上)』
2011/09/09   …
-
長寿学入門(216)<松原泰道老師!百歳>『 生涯150冊、百歳こえてもマスコミ殺到! その長寿脳の秘密を尋ねると、佐藤一斎の『言志晩録』に「見える限り、聞こえる限り、学問を排してはならない、とある。私も、いまや、目も見えない、耳も聞こえませんが、読み、書く、話すことは生涯続けたいと思います」と語る。合掌!
松原泰道老師百歳 生涯150冊、百歳こえてもマスコミ殺到! その長寿脳の秘密は・ …
-
オンライン説法/清水寺貫主・大西良慶(107歳)の『生死一如』12訓★『 人生は諸行無常や。いつまでも若いと思うてると大まちがい。年寄りとは意見が合わんというてる間に、自分自身がその年寄りになるのじゃ』
2018/11/18 記事 …
-
世界/日本リーダーパワー史(891)ー金正恩委員長からの会談を要請に飛びついたトランプ大統領、「蚊帳の外」に置かれた安倍首相、大喜びする文在寅韓国大統領のキツネとタヌキの四つ巴のだまし合い外交が始まる①
世界/日本リーダーパワー史(891)ー 平昌オリンピックは2月25日に閉幕したが …
-
『Z世代のための百歳学入門』★『日本最長寿の名僧・天海大僧正(108歳)の養生訓』★『長命は、粗食、正直、日湯(毎日風呂に入ること)、陀羅尼(お経)、時折、ご下風(屁)あそばさるべし』
天海の養生訓『気は長く 勤めは堅く 色うすく 食細うして 心広かれ …
-
日本リーダーパワー史(67) 辛亥革命百年⑧孫文と国民外交を展開したパトロン・犬養毅②
日本リーダーパワー史(67) 辛亥革命百年⑧孫文と国民外交を進めた犬養毅② <鵜 …
-
日本メルトダウン脱出法(870)『コラム:世界から手を引くアメリカ』●『セブン&アイ/鈴木会長兼CEO、退任表明で緊急記者会見』●『ドル108円後半、約1年半ぶり安値へ下落:識者はこうみる』●『コラム:米国が導く円高、ドル100円割れあるか=唐鎌大輔氏』
日本メルトダウン脱出法(870) コラム:世界から手を引くアメリカ …
-
日本リーダーパワー史(710)『28年連続で増収増益を続ける超優良企業を一代で築き上げた「ニトリ」創業者・ 似鳥昭雄氏の『戦略経営』『人生哲学』 10か条に学ぶー「アベノミクス」はこれこそ「二トレ』!
日本リーダーパワー史(710) 『28年連続で増収増益を続ける超優良企業を …
-
日本リーダーパワー史(459)「敬天愛人ー民主的革命家としての「西郷隆盛」論ー中野正剛(「戦時宰相論」の講演録①
日本リーダーパワー史(459) 「敬天愛人ー民主的革命家としての「西 …
-
日本リーダーパワー史(161)『3・11<第3の敗戦>からの復活は可能か?②歴代総理ランキングは賢相、悪相、凡相、愚相、病相、劣相・・』
日本リーダーパワー史(161) 『3・11<第3の敗戦>からの復活は可能か?② …