日中韓対立のルーツ『日清戦争』を日本の新聞は どう報道したのかー徳富蘇峰,福沢諭吉、朝比奈知泉らの主張は・② 『直ちに開戦を』ー福沢諭吉の主張〔明治27年7月24日 時事新報〕
日中韓対立のルーツ『日清戦争』を日本の新聞は
どう報道したのかー徳富蘇峰,福沢諭吉、朝比奈知泉らの主張は・・②
『直ちに開戦を』ー福沢諭吉の主張〔明治27年7月24日 時事〕
支那(中国)、朝鮮両国に向かって直ちに戦いを関くべし
今回、我が国が朝鮮の内政を改革せんとするに就いては、欧米の諸外国一として異議を唱うるものなく、現に或る国のごときは、「このたびの改革事業は何卒充分に実行せられんことを希望す」との旨を我が政府に申し来たりしほどの次第なりといえば、
日本はこの際、宜しく文明人道の保護者を以って自から任じ、誰侍る所なく、思う存分に改革の実を挙ぐるの覚悟ありてしかるべきことなり。政府に於いてもその辺の決心は既に熟したることと見え、過般、大鳥公使より朝鮮政府に向かって政治改革に関する数個条の要求をなしたるに、しかるにかの政府はいったんは異議なくその求めに応ずる旨回答したるにも拘わらず、後数日を出でずして、たちまち前言を取り消し、都合により我が申し出の箇条にはいっさい応じ難しとの次第を通牒し来たりしこそ奇怪なれ。
韓廷の有司いかに頑迷なりとは云え、眼前に日本の大軍が戦備を整えて京城の内外に充満するを見ながら、倣然、恐るる気色なく、既に諾したる約束を無視して我が正当なる要求を拒絶するとは、いかにも大胆千万の仕打ちにして、ほとんど本気の沙汰とは思われざ
れども、また退いて考うれば、朝鮮政府をしてこの向こう見ずの処置に出でしめたるものは、彼の胸中自分から頼む所のものあるがためなり。
その頼む所のものとはなんぞや、云うまでもなく支那政府の後楯すなわちこれなり。
そもそも支那は世界に類なき頑固守旧の腐敗国にして、これを朝鮮に比較すれば国土の大小こそ異なれ、その腐敗の加減はまさしく同
様にして、支那人の眼を以ってするときは朝鮮の国事に改革すべきものなく、強いて改革と云えば、夫子白から改めざるべからざるほどの次第なれば、この際、日本の挙動を見て心に快しとせざるは分かり切ったることにして、
今は公然日本に向かって論ずべき議論もなく、またこれを論ずるの気力もなく、ただ陰に同類の朝鮮政府を教唆、一煽動して、以って日本の政略を妨げんとするのみ。
その証跡の既に事実に顕然たるものを挙ぐれば、例えばかの李鴻章より朝鮮政府に送りたりと云う電文中に、「内に徳政を修め、皇恩に負(そむく)くなかれ、倭寇放埓、敢えて狡毒を恃(たの)み、ただ視る天兵一挙、石をもって卵を圧するに異なるなきなり」云々の語のごときは、日本に対し無礼千万なる言葉にして、朝鮮人を教唆するの手段なりと認めざるを得ず。
なおこの類の証拠を尋ねたらば、これを見出だすこと決して難からず。
されば支那政府が日本の方針を妨ぐることに尽力して、ついに朝鮮政府をして我が要求を拒絶せしめたるの事実は、疑うベきにあらざれば、もはや彼は日本の朋友として見るべからず。
もしもこのままに差し置きたらんには、世間知らずの老大国人が、盲人蛇にお長じずの誓いに漏れず、ますます増長して種々雑多の妨害を達しうし、これがため日本はただに改革の目的を達せざるのみならず、
事の成り行き次第にていかなる不利益の地位に陥ることあるやも知るべからず。
今日に至りて押し問答は無益なり、一刻も猶予せず、断然支那を敵として我より戦いを開くにしかざるなり。これまで我が国が平和の方針を取りたるは、支那が我に対して未だ直接の損害を加えざりしがためなれども、今日はしからず、李鴻章、袁世凱の輩があらゆる手段を尽して韓廷を教唆したるその証跡の明白なれば、我が国はこの際なんの躊躇する所かあるべき、直ちに開戦を布告して、以って懲罰の旨を明らかにすると同時に、彼支那人をして自から新たにするの機を得せしむる.は、世界文明の局面に於いて大利益なるべし。
またここに看過すべからざるは朝鮮政府の所行なり。彼が1度我が要求を承諾して後、なんの謂われもなくこれを拒絶したるはいかにも我儘至極の挙動にして、我が国に対しはなはだしさ無礼を加えたるものなれば、支那に向かって開戦すると同時に、その向穴狐狸(こり)の違約罪をも糺さざるべからず。
朝鮮の小弱これを討つはいささか気の毒に似たれども、多年来。彼等の脳裏に染み込みたる支那崇拝の迷夢を覚破するには、弾丸、硝薬に勝るものあるべからず。
聞く、我が兵の一部分は既に水原に向かって進行したりと云う。軍機はもとより知るべき限りにあらざれども、我輩はその進軍のなお進んで牙山兵を破ると同時に、朝鮮政府に向かっても大いになすことあらんを希望するものなり。
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