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地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(145)』 エマニュエル•トッドのグローバル・トレンド『近い将来台頭するドイツ帝国とアメリカ合衆国の衝突を極めて危惧する』

   

 

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(145)』

エマニュエル•トッド著「ドイツ帝国」が世界を破滅させる

日本人への警告 (文春新書) 新書 (2015/5/)を読んで②

<F氏の名解説です>

、E・Toddの指摘、一つ一つ含蓄があり、読み流せず要点を拾ってしまいました。彼の発言を聞く事で、欧米〜中東までの国際政治の舞台が、平面から立体画面に変わり、各国間の井戸端会議を聞く趣で、親しみがわくと同時に、ここでも彼の著作は全部読んでおく必要を感じました。

①フランス人、E・Todd のドイツ、ドイツ人に対する評価は、実に冷徹です。
国として、またドイツ人としてパワーを持つと、他国そして他人と互恵平等、対等、いわばデモクラティックな関係を保持できず、支配と被支配の行動しか取れない民族であると云う。( 上下の関係でしか行動できない )

②フランス人が愛する自由、平等、博愛、デモクラシー全般 の価値や、アングロサクソンの英国が重視するリベラルな自由主義、米国のデモクラティックな自由主義。 ドイツには、これら仏、英、米が最も重視する価値観を軽視する精神構造が有るという。

③ドイツでは、国家や各セクターがパワーを備え始めると、己れの利益しか考えないエゴイストが現れ、周囲の平和と安定よりも、帝国主義的な動き、略奪と破壊を伴う様な行動をする情緒不安定な指導者が現れる。

④従って、世界は、ドイツのこの様なアブナイ歴史的性癖と精神構造を忘れる事なく監視し、間違った方向に向かわない様ブレーキをかける必要があると云う。

④筆者は近い将来台頭するドイツ帝国とアメリカ合衆国の衝突を、極めて危惧している。

「 ドイツ帝国が世界を破滅させる 」 の要点メモ

> ① ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る。 p-21(ロシア脅威論は西洋が病んでいる証)「西洋の問題」とは 財政危機、所得の低迷と低下、経済格差の拡大、将来展望の不在、少子化など。 EUはもともとソ連に対抗して生まれた。
> ロシアというライバルなしでは存在しない。
>  p-22 ロシアは「 自由主義万能 」の 道を走る西洋諸国に追随しなかった国。国家とかネイションの観念が西側諸国とは異なる。
ロシアは立ち直り始めている国、出生率の上昇、乳児死亡率の低下、失業率も水準は低い。ロシア人たちは自信を持ち始め、より良い将来に向かっていくという実感を持ち始めている。

②(新冷戦ではない)、 紛争が起こっているのは、昔からドイツとロシアが衝突してきたゾーンである。今やドイツがヨーロッパをコントロールしている。

p-24 (アメリカと衝突し始めたドイツ) ドイツはある時は、平和主義的で控えめで協調路線をとっていると感じられるが、逆に先頭に立ってロシアへの異議申し立てと対決姿勢を引っ張っている時もある。
この強硬路線は日々力を増している。ヨーロッパ委員会の委員長人事で、メルケルはキャメロンを屈辱的な目に遭わせている。
③ p-25 -ドイツの連邦情報局BNDも米へのスパイ活動をしている。ドイツの政治行動に曖昧なところがあり、ドイツの政治責任者をCIAがモニタリングする事に私は賛成だ。仏の諜報局も独の監視に積極的に参加してほしい。
ドイツの政治家たちには、アメリカ人への深い侮蔑がある。深い反米感情が蓄積されている。
p-26 以前から、独政府は経済運営に関する米国の諫言を意に介さない態度を取っている。独が自国の利益のみを全て優先させる姿勢には目に余るものがあると、米は感じている。
>
③ p-25 -ドイツの連邦情報局BNDも米へのスパイ活動をしている。ドイツの政治行動に曖昧なところがあり、ドイツの政治責任者をCIAがモニタリングする事に私は賛成だ。仏の諜報局も独の監視に積極的に参加してほしい。
ドイツの政治家たちには、アメリカ人への深い侮蔑がある。深い反米感情が蓄積されている。
p-26 以前から、独政府は経済運営に関する米国の諫言を意に介さない態度を取っている。独が自国の利益のみを全て優先させる姿勢には目に余るものがあると、米は感じている。

④ p-27 (ヨーロッパの支配圏を手にした独)
>  台頭してきた正真正銘の強国、それはロシアである前にドイツだ。この5年間でヨーロッパ大陸のコントロール権を握った。債務危機の際にドイツはヨーロッパ大陸全体を牛耳る能力があることが明らかになった。
> 同時にこの5年を経た今、ヨーロッパは既にロシアと潜在的な戦争状態に入っている。
p-28 (オランドは「ドイツ副首相」)
>
> 仏は自ら進んで独に隷属する様になったという事実を相変わらず認めない。しかし、ドイツが持つ組織力と経済的規律の途轍もない質の高さを、そしてそれに劣らないくらいに途方もない政治的非合理性のポテンシャルが独には潜んでいることを、我々は認めなければならない。
オランドは「ドイツ副首相」だ。「ドイツ首相府広報局長」と言っても良い。

⑤ p-30 (ドイツの強さの源泉)
> 仏は独を制御出来ないので、他の国が制御しなくてはいけない。前回は米と露がその任務を担った。(第二次大戦)
> 「独というシステム」は驚異的なエネルギーを生み出し得る、という事を認める必要がある。ある種の文化はそういうもので、仏の長所はこれとは別のものである。
>仏は、平等や自由の理念、世界を魅了する生活スタイルを生み出し、知的 芸術的には先進国でありつつ、今では出生率の高い国になっている。仏は人生についてバランスが取れて満足のいくビジョンを持っている国であると認めるべきと思う。
もしある国が工業と戦争に特化したら、どうやってその経済的 技術的な特化とパワーの突出を制御できるのかを世界は検討しなくてはならない。
> p-31 ( 米によるヨーロッパ制御の鍵は独)
>  アメリカによるヨーロッパの制御の鍵は、独をコントロールする事である。アメリカ帝国の保全の為には、外にいるロシアよりドイツの擡頭の方が遥かに危険である。
>⑥ p-32 (ドイツ外交は不安定ー歴史の教訓)
ドイツという国は屡々平和的に見えるが、他方でドイツに制御されているヨーロッパは攻撃的に見える。ドイツには今や二つの顔がある。ヨーロッパがドイツであると同時にドイツがヨーロッパなのである。
>  ロシアは自国が事実上ドイツとの戦争状態にある事を知っていると思う。
>> p-34 (アメリカ帝国の凋落)
>  米は配下の国々が各々の地域で行う冒険的な行動をコントロール出来ず、むしろ是認しなければならない立場にある様な体たらくである。

> ジハード勢力へのサウジの財政的協力、韓国の中国との共謀、など世界中いたるところで米国システムのひび割れが起きている。
>  p-35 (アメリカ対ドイツ帝国)
>  ロシアは未来の問題ではない。中国は軍事的パワーという観点から見て、未ださほど大きな存在ではない。
>
> これから、二つの大きなシステムの真正面からの対立の出現を予感できる。アメリカとドイツ帝国の対立である。
⑦ p-36 (ロシア崩壊こそアメリカの脅威)
>
> ウクライナ危機がどの様に決着するか、分かっていない。もしロシアが崩れたら、ウクライナまで拡がるドイツシステムとアメリカとの間の人口と産業の上での力の不均衡が拡大し、アメリカシステムの崩壊に行き着く。
>  米国が最も恐れなければならないのは今日、ロシアの崩壊なのである。
>  オバマはヨーロッパの事は何も分かっていない。オバマの視野に存在するのは太平洋圏だけである。
>  p-39 (東欧支配で衰退したソ連、復活の独)
ドイツのパワーは、かつて共産主義だった国々の住民を資本主義の中の労働力とする事によって形成された。共産圏諸国が崩壊後に残したのは、時代遅れの産業システムだけでなく、教育レベルの高い住民達であった。
>  ドイツはロシアに代わって東ヨーロッパを支配する国となった。アメリカのお蔭でドイツにとって軍事支配のコストはゼロに近い。
> p-43 (フランスの協力で完成したドイツ圏)
>ドイツはフランスの協力無しにはヨーロッパ大陸の支配圏を握ることは出来なかった。フランスの経済システムの自主的隷属とユーロという金ピカの監獄を受け入れた事実がある。
> フランスは6500万人の国民をドイツ圏に付け加えている。又、南欧はドイツ圏の被支配地域になっている。
>  p-45 (ロシア嫌いのポーランド、スウェーデン、バルト3国)
> フランスには最早 夢が無い。フランスが希求している事といえば、服従する事、模倣する事、そしてタイムカードを押す事くらいだ。
>
> ポーランドやスウェーデンやバルト三国には夢がある。ロシアを破滅させる夢だ。ドイツ支配権に進んで参加する事でその夢を信じられる。これら諸国は、ドイツが悪い方向へ走るのを助け兼ねないので要注意である。
>
> フランスのエリート達は、すでにドイツを神格化し ドイツ批判を拒否する事で、ドイツが悪い方向へ向かうのを助けた。フランスの屈従は、ドイツに将来訪れる精神的アンバランスに根本的な貢献と映るだろう。

> p-46 (イギリスに近いデンマーク、ロシアに近いフィンランド)
> スウェーデンが右翼化してドイツを助けているのに対し、デンマークは真正のリベラルだ。デンマークが持つイギリスとの絆。
> フィンランドはソ連と共に生きる事を学んだ国であり、ロシア人と理解し合う可能性がある。
>
⑧ p-48 ( 離脱途上 ーー イギリス )
>
> イギリスは離脱途上である。イギリスはある種のフランス人達と違い、ドイツ人に従う習慣を持っていない。彼らは、エキサイティングで権威主義的で無いもう一つの別世界「英語圏」、つまりアメリカやカナダや旧イギリス植民地の世界に属している。
> 貿易上は格別に重要であるが、メンタル的にはどうしても和解できないタイプのヨーロッパは、イギリス人にはとても居心地が悪いのだ。
>  イギリスはEUから去ると思う。彼らは背後にアメリカ合衆国を持っている。ドイツの覇権よりアメリカの覇権を選ぶと思う。
>  p-49 (離脱途上 ーー ハンガリー )
>  EUからの離脱の試みではハンガリーもイギリスと同様である。ドイツのプレッシャーに抵抗している。ハンガリーはロシアを許す事ができる。
>

p-50 (併合途上 ーー ウクライナ )
ウクライナはEUへの併合途上にある。非常にコストの安い労働人口の併合になる。新しいドイツシステムは基本的に労働人口の吸収によって成り立つ。
>  当初の段階で使われたのが、ポーランド、チェコ、ハンガリーの労働人口だ。ドイツはコストの安い彼らの労働を使って自らの産業システムを再編した。
>  第二段階として、4500万人の人口を有するウクライナの労働人口は、ソ連時代の遺産である教育水準の高さもあり、ドイツにとって又とない獲得物となるはずだ。これは今後長きにわたりドイツが支配的な地位を保つ可能性、アメリカを上回る実質的な経済大国になるという可能性をもたらす。
>
> p-52 (ヨーロッパという階層システム )
>
> 今日のヨーロッパは不平等な諸国家のシステムになりつつある。それは一つの階層秩序であってその中には、過酷な支配を受けている国々、攻撃的な国々、支配的な一つの国、そしてヨーロッパ大陸の恥そのものであるフランスが含ま
>
⑨ p-53 (ドイツの一人勝ちのシステム )
>
> 2005年以降、ドイツを中心にヨーロッパが容赦無く序列化されて来ている。ドイツとの関係における他のヨーロッパ諸国の脱落、フランスやイギリスの様な大国を含めてだ。
>  全体としては、一人当たりGDPでも常にドイツが抜きん出ている。これが行きつく先は、ヨーロッパ大陸のドイツ以外の国々の産業システムが崩壊して、ドイツだけが得をするシステムだ。
>  ドイツの産業システムがヨーロッパ全体をコントロールする事になると、人口面でアメリカは単独ではヨーロッパに対抗できなくなる。

 p-58 (ウクライナは国家として存在していない )
>  我々の世界は今や、ポスト民主主義的で、不平等な世界である。ここでは給与水準の低いゾーンへの膨張の動きが潜在している。
>  新たなドイツ帝国にとって、ウクライナが国家として存在していない事が、大きな利点となる。
>  ウクライナは、二つ又は三つに分かれている。崩壊途上にあるシステムで、見せかけの国家であり、破綻してしまっている
>  西ウクライナは存在感が薄く、中部ウクライナ人はロシア人が嫌いだが行動しない。東部は親露派だ。
>  Pー59 ( ウクライナ問題の行方 )
>
> しかしこのウクライナの獲得は、まだドイツによって実現されてはいない。
> ウクライナは崩壊し続けるが、ドイツの傘下を嫌いロシアに向かう可能性もある。
>
⑩ p-60 ( アメリカによるユーラシア大陸コントロールの鍵ーーー ドイツと日本 )
>
> アメリカによるユーラシア大陸コントロールの鍵は、ドイツと日本である。これは、アメリカ自身が産業規模において明らかに優越しているという仮定ででのみ機能する。
> 1928年の米国の工業生産高は世界の45%をを占めていた。第二次大戦後も米は相変わらず45%を占めていた。それが今では17.5%にまで落ちている。
>
> ユーラシア大陸をコントロールしようとする米国のシステムはこれでは成り立たない。
>
⑪> p-63 (今後20年に衝突の危機 )
>
> 専ら力関係の現実に注目する戦略的現実主義の立場から見れば、今日二つの大きな先進的産業世界を確認する。一方にアメリカ、他方に新たな「ドイツ帝国」で、ロシアは二次的な問題でしかない。
>  ドイツシステムの台頭は、米と独の間に紛争が起こる事を示唆している。
>  歴史家の観点から見て、米 と 独は同じ諸価値を共有していない。大不況の際、リベラルな民主主義国のアメリカはルーズベルトを登場させ、権威主義的で不平等な文化の国であるドイツはヒットラーを生んだ。
>
> p-64 ( 米国の白人デモクラシー )
> アメリカ人の平等は、非常に相対的な信念でしかない。経済的不平等の拡大はトップであり、黒人への差別の国でもある。
>  しかし米国は又、非常に多様な出自の人々を糾合して一つの世界を作ろうとする試みにおいてリーダーの国でもある。
>
> ドイツ国民だけを見れば、その中での経済的不平等の拡大は、アングロサクソンの世界の格差に比べれば、程度は低い。
>  しかしドイツシステムをヨーロッパ全体の中で、東ヨーロッパの低賃金や南ヨーロッパの給与の抑制等を加味して考えれば、英米よりもはるかに不平等な支配のシステムが生まれつつある。平等はドイツ人の間だけのことである。
> p-66 (ドイツ専用のデモクラシー )
>
> アパルトヘイト時代の南ア、人種差別時代の米国、イスラエルの民主主義など、が例に挙げられるが「支配者たちのデモクラシー」があった。今のドイツでは、支配者たち専用のデモクラシーがありその周りに諸国民のヒエラルキーが形成されている。
> このところのヨーロッパ像の中では、ドイツ人達を人種差別時代のアメリカにおける白人達の様に見ることができる。
>
> 政治的不平等は、アメリカのシステムの中よりも 、ドイツシステムの方が大きい。ギリシャ人はドイツ議会の選挙で投票することは出来ないが、米の黒人は大統領選挙や連邦議会選挙で投票できる。ヨーロッパ議会は見せかけである。
>
> p-67 (力を持つと非合理的に行動するドイツ )
>
> ドイツの権威主義的文化は、ドイツの指導者達が支配的立場に立つと、彼らに固有の精神的不安定性を生み出す。
>  歴史的にも確認できるが、ドイツ人は支配的状況にある時、平和で合理的な未来を構想できなくなる事が、屡々ある。
>  どの様にしてドイツは悪い方向へ転回して行くのか? 指導者層の年齢の中央値が高いことや、これと言った軍事組織が無いことでブレーキがかかる可能性はある。フランスのドイツへの自主的隷属が、ドイツの支配を強めているので仏との関係も今後影響してくる。
>
⑫> p-69 ( 平等と自由をめぐるドイツ• フランス•アメリカ )
>
> ドイツの社会文化は不平等的で、平等な世界を受け入れる事を困難にする性質がある。自分達が一番強いと感じる時には、ドイツ人達は弱い者による服従拒否を受け入れない。
>  フランスでは、逆で服従の拒否はポジティブな価値である。不服従が日常茶飯事であるが、一方では秩序と効率への潜在力も存在している。
>
> アメリカに対しては、ドイツ的なタイプの規律ある上下関係は通用しないだろう。アングロサクソンの社会文化は、平等的ではないが、本当に自由主義的である。英米系の社会文化は、諸国間の差異をそこそこリーズナブルに管理する事ができる。
>
⒀> p-70 ( 価値観の違いが対立を招く)
>
> 結局、米と独という二つのブロックは、その性質上対立的であり、その間には経済規模の均衡の破綻、価値観の違いなど、紛争を生みやすい全ての要素が積み重なっている。
>  ロシアが弱体化するのが早い程、両者の差異が早く表面化してくると思われる。
> 米は脅威となる独を新たな現実として受け入れるかどうか、それはいつになるか?が歴史的な問いとなる。
 > p-71 ( ロシア接近を阻まれた日本)
>
> ウクライナ紛争による衝突が、日本とロシアの接近を停止させているが、エネルギー、安全保障の観点から見ると、日本のロシアへの接近は論理的で政治的に重要な要素である。

 

 

 

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