書評・『マスコミ文献大辞典』(全三巻)日本図書センター刊に寄せて
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<『図書新聞』 03、7,12に掲載>
  前坂 俊之
  (静岡県立大学国際関係学部教授)
  わが国での最初の新聞は1862 年(文久3)の「官板バタビヤ新聞」で、67 年(慶応3)
  には最初の雑誌『西洋雑誌』が発刊、70 年(明治3)には最初の日刊紙『横浜毎日新
  聞』が発行されなど新聞、出版、印刷の活字メディアは明治維新前後に一斉に登場し
  た。
  放送は1925年(大正14)、東京放送局(NHK の前身)がラジオ放送を開始し、世紀
  中ばの1953 ( 昭和28 ) 年2 月にはNHK が、次いで民放がテレビ放送を始めてテ
  レビ時代へと突入する。
  マスメディアの重層化現象が始まり、マスコミによる大量の情報が流され、大衆化時
  代の到来、情報化社会を迎えて、世界に冠たるマスコミ大国へと発展していった。
  この間、電話、無線通信についてもメディア技術の進歩も著しく、マルチメディア、デジ
  タル、インターネット時代に入り、百年余年の歴史を迎えた。
  この『20 世紀・日本』の約130年間にわたるマスコミ、マルチメディアの飛躍的な発展
  を、文献的に徹底して網羅し、解題しようというのが本事典の壮大なネライである。
  明治6年の『新聞大意』から、2000年度までに刊行されたマスコミ文献まで実に約5,
  000 点が紹介され、単なる書誌、目録文献とは一味違って、そのすべてにわたり克明
  な解題を付しているのには驚く。
  多岐複雑にわたるマスコミ文献を【言論の自由】【新聞】【出版】【放送】【広告】【マスコ
  ミ一般】【情報化】と大きく分類。
  新聞人、出版人、放送人、その研究者によるおびただしい出版物を、本格的な研究
  書はもちろん、ジャーナリスト、記者論、事件記者もの、ルポルタージュ、取材日記、
  自伝、紀行、政治、経済,国際、文化などに関する多岐にわたる評論、エッセーからノ
  ンフィクションまで、よくぞここまで集めたと言うほど一点一点現物に当たり、チェックし
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  て文献を網羅している貴重な労作である。
  こうした書籍の中には「ジャーナリズム」そのもののように日々の記録が中心で、数多
  く出版されながら、後世に残され、図書館でも永久保存されることのない、いわゆる生
  命が短い著作が少なくないが、それだけに解説付きの目録として刊行されることは大
  きな意義がある。
  このほか、書籍ばかりでなく、非売品の社史、団体史、機関史、ページ数の少ない、
  入手困難なパンフレット類、年鑑、年報、定期刊行物、学術、学会誌、研究機関誌、
  大学紀要から私家版まで、ありとあらゆるマスコミ関係文献を丹念に蒐集して、それ
  にも的確な解題をつけるという気の遠くなる内容である。
  最後に索引についても、あいうえお順の「書名索引」と、別個に雑誌,叢書,全集などは
  「シリーズ名索引」。
  著者、編者、訳者、監修者別による「著者名索引」まで、懇切丁寧な「索引」が付され、
  研究者への便宜をはかっている。正に決定版と銘打った「マスコミ文献大事典」に恥
  じないものである。
  単なるマスコミに限った全文献としてだけでなく、タイトル、解題、発行年月「をたどる
  でけで、激動の20世紀を、世界と日本の現代史をマスコミュニケーション,ジャーナリ
  ズムの視点からふりかえってみる歴史、社会史、政治史、世相史としてもおもしろい。
  以下は
  『マスコミ文献大事典』刊行のことば
  編者・関西大学教授 藤岡 伸一郎
  本書は、以下いくつかの点において本邦初のマスコミ関係文献解題日録である。
  西暦1800年代の後期、幕末明治の項から大正・昭和を経て、平成の今日に至るお
  よそ一三〇余年の問(西暦二〇〇〇年まで)に出版された関係文献(書籍・冊子)をタ
  ーゲットにしている点において。一歩譲っても「二〇世紀」の一〇〇年間をカバーする。
  3
  いま一つは、収載するそれぞれの文献は、その現物一冊一冊に当たり、長短ある
  がすべての文献に「解題」(内容紹介)を付している点において。
  したがって、ここに納める文献は、検索すればそのほとんどが現在手にしうるもので
  あると 同時に、一冊一冊の概要が便に簡便に把握しうるものである。
  さらに一つは、それだけで文献日録として総覧しうる「書名索引」、および その文献
  の著者・編者・訳者あるいは監修者などの別による「著者名索引」の、検索上の便宜
  を考慮した「索引」を用意した点において。
  本書はおそらくこうしたハードコピー(印刷本)の文献解題日録としては最後となるで
  あろうものである。
  本書編纂の計画当初から、収める諸文献に関するデータを蓄積(データベース化)し、
  ネットワークを利用してパソコン端末から検索可能な形にするこ と(あるいはその前
  段としてCD-ROM 化、ディスク化など)は考えられていた。
  現に本書編纂の過程には、多くのデータが電子化されてはいる。
  しかし、いうような電子システムを完璧に活かすためには、諸データの初期人力段階
  で手元の文献一冊一冊の内容を細かく分類し、書名や、著者名はもとより、当該文献
  の内容に分け入り、本文からキーワードを抽出してシソーラスを用意しておき、ある特
  定の「事項」「見出し語」(キーワード)から、目的の諸文 献に到達しうるようにして、
  はじめて機能する。
  これには、膨大な作業と、また別な専門知識、別なる製作体制が求められることも分
  かっていた。この作業、電子的な文献探索システムの構築はそれこそ次世代の課題
  とし、本書はそのための最も基本的なデータを提供することとし、いわば印刷本の最
  終形として、より活用しやすいものとすることに力を傾けた。(後略)
  マスコミ研究に関する文献の全軌跡を集成する
  内川芳美
  東京大学名誉教授
  マスコミ研究は二〇世紀の後半期に興った新しい研究分野であるが、比較的早い時
  4
  期に文献目録が二冊出版されている。『放送関係文献総日銀』(放送文献目録作
  成委員会編、NHK 総合放送文化研究所・日本民間放送連盟放送研究所、昭和43)
  と『マスコミ文献集大成』(総合ジャーナリズム研究所編、東京社、昭和49)がそれで、
  ともに当時としては大変充実した貴重な目録であった。
  それから今日までの約三〇年間に、マスコミ研究は睦目すべき発展と変容をとげ、
  おびただしい文献を産み出してきた。そのようなマスコミ研究に関する文献の全軌跡
  を、改めて明治初期に遡って集成した新たな文献目線『マスコミ文献集大成』が出現
  した。非常な労作で、収録文献のすべてに要を得た解題が付いていて、索引が充実
  しているのも貴重である。
  新世紀を迎えマスコミ研究も転機に臨んでいる今日極めて時宜を得た待望の書とい
  える。
  (以上)
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