前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(96)「高速増殖炉「もんじゅ」は破綻(10/14)」『小泉元首相が「原発ゼロの方針を打ち出せ」 と強調(10/07)

   

  池田龍夫のマスコミ時評(96)

 

●「高速増殖炉「もんじゅ」は破綻している(10/14)」

●『小泉元首相が「原発ゼロの方針を打ち出せ」
と強調(10/07)

 

 

  高速増殖炉「もんじゅ」は破綻している(10/14

 

 

 文部科学省の作業部会(主査・山名元京大名誉教授)は925日、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅ(福井県)の研究計画案をまとめた。高速増殖炉の技術確立に向けた研究を続け、運転再開から約6年後に継続の可否を判断するとしている。

 もんじゅは原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクルの要となる施設だ。それが1995年のナトリウム漏れ事故以降トラブル続きで、稼働できずに行き詰まっている。

 

        政府は「延命ありき」の政策を改めよ

 

 福井の隣県に位置する京都新聞は104日付朝刊に「もんじゅ計画案『延命ありき』を改めよ」との社説を掲げ厳しく批判している。

 「もんじゅとともに核燃料サイクルのもう一つの柱である青森県六カ所村の核燃料再処理工場もトラブル続きで、実用化のメドは立っていない。核兵器に転用できるプルトニウムも海外での再処理で増え続け、世界の懸念が高まっている」と主張。

  

       役に立たないのに、維持費だけで年間200億円

 

さらに「もんじゅに投じられた費用は1兆円を超える。停止していても維持費は年間200億円もかかる。(政府は)もんじゅを『中核的な研究開発の場』と位置づけるが、もはや核燃料サイクルに見切りをつけ、廃炉こそ検討すべきだ」との警告を発していたが、共感する人は多い。電力供給に何ら役立っていないもんじゅに何時までも執着する姿勢こそ問題で、国費の無駄遣いそのものである。

 

        最優先課題は福島第1原発の汚染水対策だ

 一方、福島第1原発からの汚染水流出はますます深刻な事態になっており、各国も海洋汚染を心配している。109日には新たな汚染水漏れが見つかり、水しぶきを浴びた作業員6人が被ばくしていたことが明らかになった。

 

このほか汚染水処理の切り札となる多核種除去装置「ALPS」もトラブル続き。試運転を再開した927日以降、タンク内にゴム製シートを置き忘れたり、作業員の操作ミスによって停止を繰り返している。7日には作業員が誤って原盤の停止ボタンを押し、1号機の炉心を冷やす注水ポンプが一時停止する事態まで引き起こしている。

 

 今後何十年と続くであろう、汚水処理と廃炉作業にとって、作業員の量と質の確保、士気の維持管理がカギを握っている。東電はこの期に及んでも、▽責任の所在が不明確▽緊急的な口頭指示で作業予定表などのなどの改定が未実施▽東電と協力企業間の情報共有不足――などと分析するだけで、〝当事者意識〟が欠落していることに呆れる。

 

 いずれにせよ、当面の最優先課題は汚染水対策だ。安倍政権は口先の対応ではなく、もっと積極的な姿勢を示すべきである。日本への国際信用を取り戻すために、真剣な対応を要望したい。

 

小泉元首相が「原発ゼロの方針を打ち出せ」

と強調(10/07)

 

 

 朝日新聞デジタルなどの報道によると、小泉純一郎元首相は101日、名古屋市内で講演し「核のゴミ処分場のあてもないのに原発を推進する方が無責任だ。今こそ原発をゼロにする方針を政府・自民党が打ち出せば、世界に例のない循環型社会を約束できる」などと述べ、脱原発への政策転換を訴えた。

 

フィンランドの核廃棄物処理場などを視察

 

 小泉氏は講演の中で「原発はクリーンでコストも一番安いとという専門家の意見を信じてきたが、東日本大震災が起きて、原子力を人類が制御できるか大きな疑問を抱いた。再生可能エネルギーを普及を進めるドイツやフィンランドにある核廃棄物処分場などを今年8月に視察したことが、循環型社会を目指す考えに変わった。フィンランドの設備が10万年持つか、これから厳しい審査がある。

 

それでも同国にある原発4基のうち2基分の廃棄物しか処理できない。現地の人は、10万年後の人類に(廃棄物を)取り出してはいけないと言って分かってもらえるかまで心配している。原発から出るエネルギーは本当に安いのか、事故が起きれば人体や農作物、地域へのリスクは計り知れず、原発ほどコストのかかるものはないと多くの国民は理解している」とも述べている。

 

       安倍首相は「日本の原発技術は安全」繰り返す

 

 これとは対照的に、安倍晋三首相は9月ニューヨーク証券取引所でのスピーチで次のように述べていたが、一人よがりの言動にびっくりした。

「日本の原発技術は安全で、これからも世界に貢献していきます。放棄することはありません。福島の事故を乗り越えて、世界最高水準の安全性に貢献していく義務があると考えます。一方、福島沖で高さ200㍍の巨大風車で発電するプロジェクトにも挑みます」と語っていたが、汚染水海洋流出が拡大している現状からみて、まことに能天気な話ではないだろうか。

 

        「改めるに憚ることなかれ」

 

 政策のミスや失敗があれば、「改めるに憚ることなかれ」である。この点で新旧両首相の姿勢を比較すると、小泉元首相の「脱原発発言」は潔く、好感が持てた。毎日新聞826日付朝刊3面コラム「風知草」で山田孝男記者と小泉氏とのやり取りが興味深かったので、その一部を紹介しておきたい。

 

 「脱原発、行って納得、見て確信――。8月中旬、経団連首脳らが同行した小泉元首相のドイツ、フィンランド視察の感想はそれに尽きる。いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら納得できると思った。ますますその自信が深まったよ」と率直に語る。

 

フィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」見学とドイツ視察の旅。「オンカロは世界で唯一、着工された核廃棄物最終処分場だ2020年から一部で利用が始まるというが、核燃料廃棄は10万年単位の難作業を自分の目で確かめて反省しきりだった。

 

(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長、紙面審査委員長など。

 

 <2013.10.13 No Nukes Day 国会正門前ファミリーエリア
釣竿隊さんのスピーチです。新たに釣竿隊を結成されたそうです
>


 - IT・マスコミ論 , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
真相究明に〝新聞力〃を  = 「旧石器発掘ねつ造」スクープの教訓=

1 平成16 年3 月1 日          新聞通信調査会報     <プレ …

『Z世代のための昭和史の謎解き①』『憲法第9条と昭和天皇』『吉田茂と憲法誕生秘話①ー『東西冷戦の産物 として生まれた現行憲法』『わずか1週間でGHQが作った憲法草案』①

  2016/02/28日本リーダーパワー史(675) 『日 …

★『オンライン天才養成講座/エジソンの発明術を学ぶ』➂ 』★『発明発見・健康長寿・仕事成功11ヵ条」★『私たちは失敗から多くを学ぶ。特にその失敗が私たちの 全知全能力を傾けた努力の結果であるならば』★『臨終の言葉――「将来に信仰を持ちなさい。前進しなさい。私は人々のためにするだけのことはした。もう思い残すことはない。ブルーに輝いた美しい国の人々が待っている。さようなら」』

2018/11/23  百歳学入門(96)再録 「史上最高の …

『オンライン動画/岩切徹(評論家)が斬る1970-80年の戦後芸能史講座①』★『美輪明宏こそ稀人、本物のアーティスト』★『「若大将』の加山雄三の苦労』★『落語界の天才・立川談志のイケメン』★『「007は二度死ぬ」でボンドガールとなった浜美枝』★『民間版の皇室アルバムの 吉永小百合の人気』→『以上は写真家・佐々木恵子氏の撮影』

この一連の写真は40年以上、週刊誌、雑誌で半世紀以上活躍中の佐々木恵子カメラマン …

『オンライン/日本興亡史サイクルは77年間という講座①』★『明治維新から77年目の太平洋戦争敗戦が第一回目の亡国。それから77年目の今年が2回目の衰退亡国期に当たる』★『日本議会政治の父(国会議員連続63年間のギネス級)・尾崎行雄(96歳)の語る明治、大正、昭和史政治講義』★『日本はなぜ敗れたのか、その3大原因』

『日本はなぜ敗れたかー① 政治の貧困、立憲政治の運用失敗 ② 日清・日露戦争に勝 …

no image
ナショナルジオグラフィック協会会長に就任した ゲーリー・ネル氏の記者会見(5/12)「意見よりも事実の提示を」

   ナショナルジオグラフィック協会会長に就任した ゲーリー …

『Z世代のための米大統領選挙連続講座⑩』★『世論調査はハリス氏42%、トランプ氏37%で、5%差が拡大』★『民主党副大統領候補にはミネソタ州知事・ティム・ウォルズ氏(60)に決定』★『「ラストベルトでの世論調査でもハリス氏がトランプ氏を僅差で上回った』

  8月5日、バイデン大統領の後継候補について、民主党の代議員によるオ …

no image
TOKYO PACK2018(東京国際包装展)-大成ラミック(TAISEIPACK)の高速自動充填機「DANGAN-G2」のプレゼンテーション

日本の最先端技術『見える化」チャンネル   TOKYO PACK201 …

『和製ジェームス・ディーンと言われた「赤木圭一郎」の激突死(1961/02/21)』★『不死鳥の“トニー”は嘘だった』★『鎌倉英勝寺に眠る』

  赤木圭一郎が1961年(昭和36)2月14日昼休み、ゴーカートを運 …

『オンライン現代史講座/日本最大のク―デター2・26事件はなぜ起こったのか』★『2・26事件(1936年/昭和11年)は東北大凶作(昭和6ー9年と連続、100万人が飢餓に苦しむ)が引き金となった』(谷川健一(民俗学者)』

『2・26事件(1936年/昭和11年)は東北大凶作(昭和6ー9年と連続、100 …