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『Z世代のための米大統領選挙連続講座② 』★『前代未聞の「81歳対78歳の老害・怨念デスマッチ」はますますエスカレートしている(下)』★『マイケル・ムーア監督は「最も残酷な形の高齢者虐待だ」と非難した』

      2024/07/12

2024/07/10
世界、日本リーダーパワー史(933)
民主党でバイデン米大統領(81)の撤退論が一部に広がってきた。

民主党内では、大統領候補を交代させるべきだという主張が急浮上。「トランプに勝てる候補」としてギャビン・ニューサム・カリフォルニア州知事やピート・ブティジェッジ運輸長官、グレチェン・ウィトマー・ミシガン州知事らがメディア上に登場した。その逆に、民主党幹部には「党内の内紛勃発」の火消しに追われている。

その一方で、こうした議論を封じようとする識者や情報筋もいる。バイデンが出馬を取りやめた場合、カマラ・ハリス副大統領以外の人物が大統領候補になることは、あり得ないという。なぜか?

  • 米大統領選の手続き

 アメリカの大統領選は、民主・共和両党とも1月から各州で予備選が開かれ、その結果選ばれた人物を、各州の代議員が党全国大会(今年は共和党は7月、民主党は8月)で投票することにより、党の大統領候補が一本化(指名)され、11月の本選を迎える仕組みになっている。

 もし、バイデンが大統領候補を辞退して、各州の代議員を解放すると宣言した場合、バイデンがハリスを大統領候補に推す可能性はある。ハリスなら、バイデンとハリス選挙対策委員会が調達した2億ドル超の資金を直接管理できる。ハリスは、民主党の大口寄付者や党幹部と緊密な関係を築いているので、すぐにハリスを支持するだろう。他の候補者はゼロからのスタートとなる可能性が高いので不利になる。

  • 民主党内部分裂の危機か!
  •  ニューヨーク・タイムズ(電子版)は7月7日、同日に開かれた民主党の非公開の電話協議で、少なくとも4人の下院議員がバイデン氏に撤退を求める意見を述べた。また、同党のクレイグ下院議員は6日にX(旧ツイッター)で撤退を求める声明を発表。「新たな世代のリーダーが踏み出せるようにすることを求める」などと述べたという。
  • バイデン氏へのプラスの数字も出ている

ブルームバーグが7日までに発表した接戦7州の最新世論調査は、7州全体の支持率でリードを維持してきたトランプ氏の47%に対し、バイデン氏は45%で2ポイントの差にまで縮小、昨年10月以降で最も差が縮まった。 州別では、トランプ氏がペンシルベニアや西部ネバダなど5州でリード。バイデン氏は中西部のミシガンとウィスコンシンの2州でリードしている。

  • 7月8日 バイデン氏への憲法修正25条発動の強制退場論も浮上

バイデン大統領の職務を停止する手続きを定めた合衆国憲法修正25条を発動してバイデンを罷免し、「強制退場」させるべきという強硬論まで出てきた。

修正25条では、大統領が在任中に死亡するか辞任するか、または副大統領と過半数の閣僚が大統領の職務遂行は不可能と申し立てた場合、副大統領が大統領職を代行するものと定めている。

ある民主党の幹部は「カマラ・ハリス副大統領が大統領となり現職として出馬できるように、バイデンは「できるだけ早く」辞任すべきだ」と訴えた。 共和党でも、修正25条の発動によるバイデン退陣を求める動きが再燃している。一方、閣僚のジュリー・スー労働長官代行はFOXニュースで修正25条発動案について尋ねられると、「ばかげている」と一蹴した。

  • トランプ氏はバイデン氏にエールを送る

トランプは7月6日、SNSで「バイデンは多くの批判者など無視して、広く支持され、勢いのある選挙運動を、てきぱきと前に進めていくべきだ。討論会の時のように、鋭く、正確に、精力的に政策を売り込むべきだ」と皮肉を込めたエールを贈った。バイデンの方が戦いやすいということだろう・

  • 大統領には「拒否権」もある。

「拒否権」も 憲法修正25条によれば、副大統領と閣僚の過半数の判断で、大統領が職務上の「権限と義務を遂行できない」と書面で申し立てを行うことができる。申し立ては下院議長と上院議長に送られ、その時点で副大統領が大統領の権限を「ただちに引き継ぐ」ことになる。 大統領は内閣の申し立てに拒否権を発動し、大統領職に復帰することができる。

内閣と副大統領は4日間の猶予を与えられ、大統領の異議を事実上無効にするかどうかを判断する。無効にすると決定した場合、議会は48時間以内に会議を開き、上下両院は大統領が「権限と義務を遂行できない」のかどうかについて議決する。できないという決定をするには、両院とも3分の2以上の賛成が必要になる。

  • 自発的撤退ならどうなる?

バイデンに対しては、複数の民主党議員のほか、富豪の後援者からも選挙戦からの撤退を求める声が上がっている。 もしバイデンが8月19日の民主党全国大会前に撤退することになった場合、1968年以来となる「オープン・コンベンション」(代議員が自由に候補者に投票できる大会)方式で指名候補が選出される可能性がある。

バイデン氏はすでに予備選・党員集会で大統領候補の指名確保に十分な代議員数を獲得している。民主党は8月7日よりも早い時期に候補を正式指名し、同月19日からシカゴで党全国大会を開く予定であり、軌道修正する時間はほとんど残されていない。バイデン本人も「撤退の意思」を全面否定している・

●バイデン氏は討論会直後と翌日の集会で撤退を否定。

民主党員集会ではバイデン氏への反対は最小限にとどまっている。バイデン氏への誓約代議員は99%に達している。バイデン氏を候補から外す可能性は低い。バイデン氏への対抗馬は中西部オハイオ州での大統領選挙の投票用紙氏名記載手続きの期限の8月7日までに立候補を表明しなければならない。民主党全国委員会(DNC)はこの期日前に党候補を正式指名する計画を示している。残された時間はあと1ヶ月もない。

●バイデン氏が党大会後に立候補を取り下げたらどうなるのか? 

バイデン氏の後任を決めるのはDNCのメンバーでハリス副大統領が最も妥当な後任だろう。トランプ対ハリスの一騎打ちとなった場合7月2日のロイター通信などの世論調査結果では、ハリス氏の支持率はトランプ氏を1%下回ったが接戦となる。一方、ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が3日公表した世論調査によると、トランプ氏とバイデン氏の争いではトランプ氏が49%。バイデン氏が43%とその差は6ポイントに広がった。

バイデン陣営と民主党には5月末時点で2億1200万ドル(約342億円)の現金を手元に持っており、ハリス氏が次期大統領候補となった場合はこの資金が利用できる。他の候補者はゼロからのスタートとなる可能性が高い。

民主党足並みの乱れは解消せず

  ニューヨーク・タイムズ(7月9日)は再び社説で、「バイデン氏がここ数日で行ってきた演説やインタビューでも、有権者が抱く健康不安を払しょくできていない。民主党には、トランプ氏に対抗できる候補者が必要だ。バイデン氏の反抗は、トランプ氏に勝利を譲る恐れがある。民主党の幹部から本人に伝えるべきだ」と忠告した。

一方、「ウォールストリート・ジャーナル」は、民主党が9日に開いた会合で、現状に不満を漏らす議員はいたものの、候補者の交代に向けた「協調的な動きは見られなかった」として、党内で“バイデン降ろし”の勢いに陰りが見え始めていると指摘した。

主党の下院トップは、バイデン氏をめぐる党内の議論は「今週いっぱい続く」との見方を示した。

 トランプ氏(78)は9日、先月のテレビ討論会以降、初となる演説集会を南部フロリダ州で開いた。バイデン氏に向け「挽回のチャンスをやる。今週また討論会をやろう。ゴルフ対決もしよう」と余裕の表情で申し入れた。バイデン氏陣営は「トランプの奇妙な行動に付き合う暇はない。バイデンは米国を率い、自由世界を守るのに忙しい」と拒否。

トランプ氏はさらに「ハリス副大統領(59)を「能力がない」と揶揄。「民主党が誰を指名しようと、大統領選で地滑り的勝利を収める」と述べた。

CNN(7月10日16時配信)によると、米民主党のマイケル・ベネット上院議員は9日、CNNとのインタビューで、バイデン大統領が再選を果たすことはできない。トランプ氏が勝つ見通しで、大勝するかもしれない。上下両院が共和党が占めれば、それこそ米国にとっては「悲劇」だと」と強調した。
●マイケル・ムーア氏は「最も残酷な形の高齢者虐待だ」と非難

東スポWEB(7月10日配信)による、ドキュメンタリー監督のマイケル・ムーア氏が、バイデン大統領に選挙戦継続を迫る陣営に対して「最も残酷な形の高齢者虐待だ」と激しく非難した。米紙ニューヨーク・ポストが9日、報じた。「討論会でバイデン氏は頭の中のあらゆる認知機能が停止しているようでした。もし彼を愛し、抱きしめていた人だったら、夜9時に81歳の老人をステージに送り出して、夜10時42分まで終わらない<怪物との乱闘>をやらせますか?」と批判した。

そして、「医師に診察してもらい、正しい処置を受けてください。あなたの体がやめてほしいと懇願しています」と、任期が終わる前に辞任すべきだと訴えた。

Z世代からみると前代未聞の「81歳対78歳の老害・怨念デスマッチ」はますますエスカレートしている。

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