前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

★『明治維新から154年目、日本で最も独創的,戦闘的,国際的な経営者とは一体誰でしょうか(❓) <答え>『出光興産創業者・出光佐三』でしょうね。 かれのインテリジェンス、国難逆転突破力、晩年長寿力 に及ぶ大経営者は他には見当たらない』★『「海賊とよばれた男」出光佐三は石油メジャーと1人で戦った』

   

 

   日本リーダーパワー史(727)記事再録

その出光佐三没後35年の今年、昭和シェル石油との合併問題を巡って、出光の経営陣と創業家が真っ向から対立、お家騒動に発展している。

出光興産経営陣、統合反対の創業家に反論 ―対立が激化する可能性

http://toyokeizai.net/articles/-/131813

以下で、異色すぎる『波乱万丈』の出光佐三の人間像をたどってみる。

<記事再録>

日本リーダーパワー史(419

『百田尚樹の「海賊とよばれた男」(100万部突破)のモデル・出光佐三-石油メジャーと1人で戦った男』<歴史読本(2008年8月号)に掲載>

前坂俊之(静岡県立大学名誉教授)

 

〔 俯仰(ふぎょう)天地に恥じず 〕

今(2008年6月現在)、原油価格の暴騰が世界経済を直撃しているが、日本にとって忘れられない歴史的事件がある。昭和二十八年(一九五三)五月九日、出光興産(出光佐三社長)の「日章丸二世」(一万九千トン)が、イランからの石油を満載して川崎港に帰港し、世界をアツといわせたのだ。

当時、石油争奪戦争が勃発していた。世界有数の産油国イランは、一九五一年に突然、「石油国有化法」を議会で可決、イラン石油の全権を握る英国アングロ・イラニアン社(BPの前身)を一方的に接収して、国際紛争に発展していた。

怒った英国はペルシャ湾に艦隊を派遣、イラン石油の売買は盗品にあたるとして、買いつけた外国タンカーは撃沈するという声明を出して、海上監視を強化していた。これに引っかかったイタリア・スイス共同資本のタンカーは、アラビア海で英海軍に舎補され、国際紛争に発展していた。

世界の石油業界は、欧米の国際石油資本(メジャ1)が市場を牛耳って、国際カルテルを結んで独占支配していた。独立系の民族資本・出光興産は「消費者に安いガソリンを提供する」を企業理念に掲げて、長年、メジャーと闘争を続けてきた。

一方、イランは産出国として初めて石油メジャーに挑戦して、各国に売却を呼びかけたが、英国の報復を恐れて手を出すところはどこもなかった。

こうした事態に、石油界の反逆児・出光は一挙に勝負に出たのだ。イランと秘密裏に交渉し、世界有数の大型タンカー「日章丸」を、船員には一切行き先を告げずに派遣した。

撃沈、拿捕、浮遊機雷の接触の危険を避けながら決死の航海でイラン・アバダン港に入港し、イラン全国民の熱狂的な歓迎を受けた。

今度は英国の反撃をかわしながら、石油を満載して奇跡的に帰港した。アングロ・イラニアン社は「日章丸」の積荷の所有権を主張して東京地裁に提訴したが、出光は「日本国民として俯仰天地に恥じない行動をいたします」と証言し、裁判は出光側が全面勝訴した。

超大国英国を相手どり、国際正義にのっとった出光の勇気ある行動は、占領下からやっと独立したばかりの日本人に大きな感動を与え、出光は国際的な経営者として、一躍脚光を浴びた。

〔「人間主義の経営方針〕

出光佐三は明治十八年<1885)八月、現在の福岡県宗像市に生まれた。同四十二年、神戸高等商業高校(現神戸大学)を卒業後、従業員三人の石油販売店に丁稚奉公に入り、友人たちから「大学のつらよごしめ」と批判された。

このスタートからして、出光の面目躍如たるものがある。二十五歳で出光商会を設立。人の意表をつく、奇想天外な行動でのし上がっていった。

大正の初めにはいち早く満州に進出して、満州鉄道に不凍油を納入して成功をおさめた。その後、独自の潤滑油や機械油を開発して、メジャーを抑えて、満州、朝鮮、台湾までの幅広い海外市場を押さえた。しかし、敗戦によって、海外資産を一挙に失った。この時、出光は還暦六十歳である。

昭和二十年九月、中国や海外から千人以上の従業員が次々に引き揚げてきたが、出光は人間尊重を唱え、「一人たりとも首を切らない」と宣言した。しかし、巷には失業者があふれており、出光興産にも何の仕事もない。「まだ仕事は見つからないが、人間しばらく眠る時間も必要、活眼を開いて眠っておれ」「順境にいて悲観し、逆境にいて楽観せよ」と訓示した。

その後、出光興産は石油元売大手に発展するが、「首切りなし」「定年なし」「出勤簿なし」という、どこの会社もやったことのない破天荒な人間主義を実行した。

とにかくやることなすこと奇想天外で、「日章丸事件」の決断が六十八歳の時というのだから、出光は遅咲きの天才なのである。

その出光の独創性はいったいどこからきたのか。出光は子供のころから病弱で、とくに目が悪く、やっと見える程度だった。「眼がよく見えないために、オレはよく考える。だから、独創的なのだ」と豪語していた。

生涯現役を貫き、米寿88歳でこの悪い目を手術してから、初めてものがはっきり見えるようになったという。それからは、九十歳を過ぎても毎週ゴルフを楽しんでいたというから驚く。 昭和五十六年三月七日、九十五歳で大往生した。

 

日本リーダーパワー史(728)ー1945(昭和20)年8月『終戦』での最も感動的なスピーチー『出光佐三の『玉音を拝して』(8/17)『順境にいて悲観し、逆境にいて楽観せよ』●『活眼を開いてしばらく眠っていよ』

https://www.maesaka-toshiyuki.com/longlife/19364.html

 

 - 人物研究, 健康長寿, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

[Z世代のため日中交流史講座」★『日中国交正常化50周年前に池田知隆著「謀略の影法師・日中国交正常化の黒幕・小日向白朗の生涯」(宝島社)が出版された』★『伝説の馬賊王(部下約7万人)は英国からは「アラビアのロレンス」に対比されて、「アジアのロレンス」とも呼ばれ、中国全土にとどろき、「蒋介石、毛沢東とは蒋さん、毛さんと呼び合う」仲までになっていた。』

   前坂俊之(フリーライター) 9月に日中国交正常化50周年を迎える …

『オンライン中継/わが青春に悔いなし/』★『平成29年度慶應義塾大学入学式(4/3午後3時)』★『塾歌斉唱『見よ,風になるわが旗を・・ああ、わが義塾、慶應、慶應、慶應』★『 清家篤塾長の式辞『変革の時代、福沢諭吉先生に学ぶ』(20分) ★『新入生入学歓迎ステージⅡ』

  平成29年度慶應義塾大学入学式(4/3午後3時)ー塾歌斉唱『見よ, …

no image
『2014世界各国/最新ミステリー、面白ニュース②』「インドの奇跡―カースト制度」★「カレーはインドには存在しない」

 『2014世界各国/最新ミステリー、サプライズ、面白ニュース②』&n …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(98)』[安倍政権の検閲とメディアの自粛の負の連鎖]

  『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(98)』   …

no image
『震度6、大阪北部地震発生、参考記事を掲げる②』―★記事再録『2016年4月の熊本地震から2ゕ月』(下)『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を つぎ込みながら熊本地震まで38年間の『 巨大地震』の予知にことごとく失敗した。<ロバート・ゲラー東京大学理学系教授の正論>』

『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を つぎ込みながら熊本地震まで38年間の …

「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース②」『日露戦争の原因となった満州・韓国をめぐる外交交渉決裂』●『米ニューヨークタイムズ(1903年4月26日 付)「ロシアの違約、日本は進歩の闘士』★『ロシアの背信性、破廉恥さは文明国中でも類を見ない。誠意、信義に関してロシアの評判は最悪だから,これが大国でなく一個人であれば,誰も付き合わないだろう』

    2016/12/24 &nbsp …

no image
片野勧の衝撃レポート『太平洋戦争<戦災>と<3・11>震災⑤ーなぜ、日本人は同じ過ちを繰り返すのか』郡山空襲と原発<上>

片野勧の衝撃レポート 太平洋戦争<戦災>と<3・11>震災⑤ 『なぜ、日本人は同 …

no image
日本リーダーパワー史(807)『明治裏面史』 ★『「日清、日露戦争に勝利』した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス㉒『日露戦争4ゕ月前、『今、信玄』といわれた陸軍参謀本部次長・田村怡与造が急死』★『国家存亡を賭けた日露戦争直前に2代続けて参謀総長(次長)が殉職する大国難に襲われた。ロシアは手をたたいて喜んだが、日本は祈るような気持ちで後任を見守った。』

 日本リーダーパワー史(807)『明治裏面史』 ★『「日清、日露戦争に勝利』した …

『欲望・利益最優先資本主義から公益資本主義へチェンジする講座』★『百年以上前に<企業利益>よりも<社会貢献>する企業をめざせ、と唱えた公益資本主義の先駆者』ー渋沢栄一(日本資本主義の父)、大原孫三郎(クラレ創業者)、伊庭貞剛(住友財閥中興の祖)の公益資本主義の先駆者に学ぶ』

     2019/01/09日本興亡学入門⑩記事 …

no image
◎「司法殺人(権力悪)との戦いに生涯をかけた正木ひろし弁護士の超闘伝④」全告白『八海事件の真相』(上)

  ◎「世界が尊敬した日本人―「司法殺人(権力悪)との戦い に生涯をか …