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百歳学入門⑯ <日本超高齢社会>の過去とは⑥…<若者よ日本をチェンジせよー明治維新の志士は20歳の若者たち>

   

百歳学入門⑯
 <日本超高齢社会>の過去とは⑥…
<若者よ日本をチェンジせよー明治維新の志士は20歳の若者たち>
 前坂 俊之
                (静岡県立大学名誉教授)
 
 
Q>・・・その堅固だった徳川幕藩体制を打ち破ったエネルギーは明治維新の若い志士たちですね。
 
たしかに、明治維新への起爆剤となったのは日本の辺境からのエネルギー、薩摩藩や長州、土佐からの危機意識のあらわれですし、最も大きいのは吉田松陰とその20歳代以下の若き俊英たちの爆発です。
 
松陰自身が黒船で脱国しようと国禁を犯して、斬首刑になったのは29歳です。松蔭は25歳の時に、松下村塾を主宰し、この時の教え子たち、20歳以下の俊英たちが倒幕の志士として活躍し、明治維新を起こし、半数は倒れ、残りが明治政府のリーダーとなっていますね。松蔭が松下村塾で教えたのはわずか3年ほどなのに、その感化力、革命のエネルギー注入力は驚くべきですね。いずれも20歳前後の若い志士たちで、明治の驚異ですよ。
 
門下生の筆頭は明治維新政府で実質、初代宰相となった木戸孝允(44歳没)、奇兵隊を作り長州藩を倒幕に押しやった高杉晋作(27歳で没)を初め、松蔭の精神をもっと色濃く引継いでいた久坂玄瑞(蛤御門の変で24歳で討死)、伊藤博文(14歳で松下村塾に入る)、山県有朋(17歳で松下村塾入門)、吉田稔麿(23歳没)、品川弥二郎、山田顕義、前原一誠らの俊英たちが松蔭の精神で火の玉となって倒幕、維新の革命にまい進したのです。
 
松蔭が火をつけた尊皇攘夷、倒幕の嵐は燎原の火となって全国に飛び、松蔭の非業の最期によって一層燃え上がり、その遺志をついで高杉、久坂、吉田なども革命の途中で斃れたが、次々にバトンタッチされていったのです。
 
その点では、明治維新は松蔭率いる少年隊の革命なんですね。世界の革命の歴史を見ても、革命家の年齢は相当若いと思いますよ。まあ、老人による革命なんてありませんしね。ところが、昨今の風潮をみると、時代的には100年逆戻りしてお犬将軍・綱吉のペットブーム、徳川元禄時代の浮世風呂ならぬスーパー銭湯ブームとにており、老いも若きもどっぷり保守化して、一億総保守化ですから、変われば変わるもの、時代の流れでしょうがね。
 
 
Q>・・・明治維新のダイナミズムは志士たちの年齢の若さと、黒船来航以来のアジア各国と同じように侵略されて、植民地にされるという対外危機意識、それを免れるために積極的に技術、制度を導入して近代化して対抗しようという知的好奇心、猛烈な学習態度ですね。
 
 明治維新時〔1868年〕の関係者の年齢をみると、高齢なのは「維新の三傑」といわれた西郷隆盛は40歳、大久保利通38歳、木戸孝允35歳で、明治天皇は若干16歳です。
この三傑に並ぶのが板垣退助、大隈重信、江藤新平、陸奥宗光、榎本武揚、幕府は勝海舟、福沢諭吉ら、
このあとを継いで、明治政府のリーダーとなった伊藤博文(初代総理大臣)27歳、山縣 有朋(首相・(陸軍建設者)30歳、黒田 清隆(2代目首相)28歳、松方 正義(首相、財政の父)33歳、西郷従道 歳、西園寺 公望(首相)18歳 山本 権兵衛(首相、海軍の父)16歳 桂 太郎(首相、日露戦争当時の指導者)20歳、児玉源太郎(日露戦争参謀総長)16歳、東郷平八郎(日本海海戦当時の連合艦隊司令長官)20歳、高橋 是清(首相、財政の神様)14歳、陸 奥 宗 光24歳です。
その後の日本の企業、産業を興した渋沢栄一(日本資本主義の父)28歳、岩崎 弥太郎(三菱財閥創設者)31歳、中上川 彦次郎(三井財閥中興の祖14歳)、近代では最大のジャーナリスト・徳富蘇峰は5歳といった具合にいずれも若い。

明治4年、岩倉具視43歳、木戸孝充、大久保利通、伊藤博文らを中心としたヨーロッパ、アメリカを1年以上回って「 岩倉欧米使節団 」 の平均年齢は 30歳 ほどです。海外に大きく目を開いたこの使節団の意味は大変大きいものがある。一国のリーダーがこんなにたくさん長期間にわたって西欧先進国に派遣して、謙虚に学ぼうとして対外異文化コミュニケーションをやった国はない。これが明治の成功の要因になりましたね。今で言うと、大胆に外資を導入、外国人の優秀な頭脳を招聘して、お雇い外国人として、国際感覚を磨き、世界の中での日本の位置を客観的に学んだのです。

 
Q>・・・一国の革命、旧体制の破壊、建設、プロジェクト、新体制の完成までの過程には超えなければならぬ階段がいくつもあります。役割分担と、活躍する人物はバトンタッチしながらリレーされていくものですよね。
 
そうですね。明治の革命が成功した理由は破壊と建設との成就者のバトンタッチが上手くいったことです。徳川幕藩体制を破壊した強力なの革命家の西郷隆盛は、西南戦争(1877年)で敗北し、49歳で自決してしまいます。

廃藩置県など西郷の絶対的な権力なくしてできない旧体制の破壊をやり遂げています。今の道州制の導入は豪腕でないとできませんよ。明治政府の実権を握った両雄の1人り大久保利通も翌10年、48歳で暗殺されます。木戸孝允も同年に43歳で病死している。つまり、維新からわずか10年で、維新を達成した大立者3人がそろっていなくなるんですね。破壊者の退場です。これで重石が取れて後輩たちは自由にやれるようになり、明治政府、新体制の建設に取り組んだわけです。

建設の第2段階に入り、伊藤、山県らはしゃにむに国家建設に西欧の近代国家作りを学んで、内閣制度の発足(1885年)に取り組んだんですね。
この世代交代、バトンタッチが大変うまくいったのが、明治維新モデルの成功の秘訣です。戦争を指導し、いずれも海外体験をつんでの自らの非力をさとったリーダーたちが、日本の近代化、改革を血のにじむ思いで考え、実行したのです。
 
こうして、30年、ひたすら「富国強兵」「殖産振興」でやってきて、国運を賭けた、乾坤一滴の大勝負の日露戦争1904年(明治37年)2月 – 1905年9月)では、明治天皇52歳,伊藤65歳、山縣68歳、 山本 権兵衛54歳、桂太郎58歳、(日露戦争当時の首相)児玉52歳、東郷平八郎56歳、戦費を集めるのに国際金融市場で活躍した高橋 是清50歳です。
革命と戦争の体験の中で、極東の小国の悲哀をなめながら、追いつけ、追い越せ出で鍛え、磨き上げられてきたインテリジェンスと判断力を備えたベテランの指導者、リーダーが適材適所で力を発揮したチームプレーによって奇跡的な勝利をえたのです。当時の覇権国・イギリスからの日英同盟というバックアップが、何よりもつよい味方となったのですよ。
 
これが太平洋戦争の敗戦時にはどうなったのか、開戦に引きずり込まれ、ストップできなかったリーダーの東条英機をはじめ戦争を指導した人間は大体50歳歳代ですよ。明治のリーダーとくらべても、ごりごりの視野の狭い軍人たちで対中認識、対米知識の不足、国際的な視野や知識が決定的に欠如しています。中国に対する根拠なきおごり、米国に対してもその力の差を認識することなく、大和魂の精神主義1本槍となっていた。経験不足ですね。
 
現場で暴走したのは下剋上によって若手の陸軍軍人、将校たちです。これを甘やかして暴れ馬にしたのは無能は老害とかした大将たちで、明治の指導者の見識、判断力、若手の暴走を一括するリーダーシップは持ち合わせていなかったのが、自滅につながったのです。軍神となった東郷平八郎、海軍の最長老の東郷の艦隊決戦主義のご判断は、正しく老害となって、日露戦争の日本海海戦の大勝利を帳消しにしたんですね。歴史の因果と、年齢の関係、歴史の不思議をかんじます。
 
日本人の革新力、イノベ-ションを考える場合に、西欧の市民革命ではなく、日本型の革命である明治維新を達成した志士たちの年齢を見る必要があるよね。
 
 
 
 
 

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