前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

知的巨人の百歳学(118)ー『米雑誌「ライフ」は1999年の特集企画で「過去1000年で最も偉大な功績をあげた世界の100人」の1人に葛飾北斎(90歳)』(下)★『北斎の生き方を尊敬し、「Silver Yutuber」となってビデオ片手に鎌倉、全国をぶらり散歩しながら1日1万歩目標に「現代版富嶽百景」を撮影、創造力アップ、長寿力アップに努力』

      2018/12/08

知的巨人の百歳学(118)

 

知的巨人の百歳学(117)ー『米雑誌「ライフ」は1999年の特集企画で「過去1000年で最も偉大な功績をあげた世界の100人」の1人に、日本人では唯一、浮世絵師の葛飾北斎(90歳)を選んだ』(上)
http://www.maesaka-toshiyuki.com/longlife/32073.html

天才・北斎にしてこの言である。

天下第一となり、齢七十のを超えてもなを日々研鑚、不断の努力を継続してきた。
その毎日毎日の積み重ねこそが、北斎を画聖の域に到達させたのである。画業によって創造的長寿を達成した北斎の森羅万象への幅広い観察眼と徹底した描写力はレオナルドダビンチに匹敵するものといっても過言ではない。

 北斎の創造力の秘密は、その破天荒な奇行ぶりとその結果としての長寿であろう。生涯93回も引っ越し、1日に2度越したこともあった。画業に適さない場所はさっさと引っ越した。ただし、引っ越し先は、彼が生まれた江戸の本所をそんなに離れていない、江戸の中である。

 浮世絵師の作品の主体は木版画である。版元の助けなくしては作品にならないので江戸を離れては移り住むことはできない。
天保六年頃の長野県・小布施をのぞいては、彼は九十回余も、江戸の中を転々と引っ越した。文献、書物が山ほどあって簡単に引っ越しできない学者や研究者や、植物学者の牧野富太郎のように植物の採集標本がおおくて、簡単に引っ越しできないのとちがって、鋭い観察眼と卓越したスケッチ力をもった北斎は身体一つでいつでもすぐ引っ越しできたのであろう。

何よりも画業三昧できる環境を最優先した芸術家魂の放浪といえよう。

 また宗理、「戴斗(たいと)」「画狂人」「卍」などのペンネームを30回以上もかえたが、その真意は名前などには無頓着で、いかに良い作品作ることに集中したためであった。名誉、家紋、家柄、形式、伝統、家元、名門、ブランドなどに縛られていた封建時代の旧弊など近代人・北斎にはどうでもいいことであった。それ以上に画家の革命家・北斎にとっては打ち倒すべき敵であった。彼のペンネームの変更、引越し、その生活態度などの奇行はその表れである。

北斎のペンネームの推移と、絵の作画年代を考察すると北斎の描写力と観察眼の深まりを研究することができる。

 

春朗(安永八-寛政六)、群馬亭(天明五-寛政六)、宗理(寛政八-寛政十)、百琳宗理(寛政八-寛政九)、北斎宗理(寛政十)、可候(寛政十-享和三)、北斎(寛政十一-文政二)、不染居北斎(寛政十一)、辰政(寛政十一-文化七)、婁狂人(享和ニー文化十四)、簑狂老人(文化ニー嘉永三、九々蜃妄化二)、載斗(文化八-文政二)、青票(文化九-文化十二)、錦袋合(文什)、月痕老人(文政十一)、鳥一(文政三-天保五)、不染居鳥一(文政五)、藤原負一(弘化四-嘉永二)、坊(天保五-嘉永二)、また戯作名には、長和膏、魚傷、群馬事、時太郎可侯、穿山甲等がある。

北斎は常に安住せず、努力、研鑽を続けて一歩一歩高みを目ざして、前人未到の境地にたどりつき世界の絵画史上に残る『冨嶽百景』を完成した。

 北斎芸術の頂点がこの『富嶽三十六景』である。これを当時の西欧芸術と比較すると、セザンヌは風景をこのような円や角と捉えるようとした。セザンヌはデカルト的に自然を観察して構成しょうとしたが、その形が、特に角が勝ちすぎて、絵に面白みがない。
ピカソはそのセザンヌ的なものを形と色のみで絵画を構成し、それが抽象芸術の誕生につながった。

これらと比較すると、北斎はすでに西欧近代絵画の先をいっており、セザンヌやピカソ以上のところがあるーと評価する専門家もいる。「ライフ」の「世界の100人」の画家に選ばれた理由もこのあたりにあるの。

『画家は長命、作家は短命』といわれるが、確かに、長寿の画家は多い。

ピカソ92歳、シャガールは90歳、ミロも90歳。ミケランジエロ89歳、モネ86歳、マティス85歳、ダリ、マティスは85歳、ドガ83歳、ゴヤ82歳となるが、これよりさらに上を行く画家がいる。ティツィアーノは99歳である。

ティツィアーノは十六世紀に活躍したイタリア・ルネサンス期の画家で、没年はわかっているものの、生年については諸説あり、一説では八十六歳頃に世を去ったとも言われている。

日本を例にとると、長寿画家、彫刻家らは山のようにいる。

「107歳・木彫家、書家・平櫛田中(107)風景画家・豊田三郎 (107)歳』、日本画家・小倉遊亀(105)、日本画家・片岡球子(103)彫刻家・北村西望(102歳)「画家・森田 茂( 102)、日本画家・奥村土牛(101)、『画家・中川一政(97)堀文子(100)、「岩橋英遠(97)洋画家・福沢一郎(94歳)日本画家・秋野不矩(93)横山大観〈89〉ら数え切れない。

画家はボケずに長生きするのは、絵を描くという行為は左右大脳半球にまたがって多くの部位を使う。脳の司令塔といわれる前頭葉の血流量が増えて活性化するので、アマプロを問わず絵を描く人はボケにくいともいわれる。

さて、北斎に話を戻そう。

北斎は『富嶽首景』をかいた際、八十、九十と進み、百十歳まで生きて、ますますよい絵をかくと豪語した。そしてその後も続々『千絵の海』『百人一首乳母が絵説』など、死ぬまで彼は休まず、次々と新しい仕事をした。

 生涯現役を貫き90歳もの長寿を達成できたのは、生活も貧乏も世俗もすべてなげうって創造の神となった「画狂人・北斎」の執念そのものであった。超高齢社会に生きるのわれわれの素晴らしい手本である。 

画に限らず、時間を忘れて何かに集中する、研究、創造することによって、いつのまにか長寿を達成する。創造的な長寿者が、日本の歴史の中には数多く存在する。創造力こそが長寿をつくる好例(高齢)でもあろう。

私は北斎の生き方、創造力を尊敬し、「Silver Yutuber」となってビデオ片手に鎌倉、逗子、葉山、湘南、神奈川各地をぶらり散歩しながら1日1万歩くことを目標に「現代版富嶽三十六景」を撮影し、筋力アップ、創造力アップ、長寿力アップに努めている。

すでに、YOUtubeにアップした動画コンテンツは1万本を超えた。

今、書店に並ぶベストセラーに「健康本、長寿本、医者本」が多くあり、新聞もテレビも長寿健康番組、記事があふれかえっている。その多くは長生きする食べ物はなにか、健康によいクスリ、病気が治った健康法、長寿遺伝子とは何か、カロリー制限、老けない最強食、ダイエット食などのオンパレードである。いわば「健康のためなら死んでも良い」というたぐいの内容。

医者の不養生という言葉があるが、若い医者のアドバイスもよいが、実際に長生きした「センテナリアン」(百歳人)からこそ実践したアドバイスを得ることができる。創造力こそ長寿力なのである。

 - 人物研究, 健康長寿, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本の最先端技術『見える化』動画チャンネルー 『CEATEC JAPAN 2016』(10/4-7)-「Creative Approach for IMPACT」-ロフトワークの実践」同社取締役CMO 矢橋友宏』●『2016年の「デザイン思考」ーロフトワークは「デザイン思考」をやっていない』●『』

  日本の最先端技術『見える化』動画チャンネル 『CEATEC JAP …

no image
終戦70年・日本敗戦史(104)再録<ネット時代の社説論説『本質に迫るための検証報道ーメディアは速報性のワナにはまるな①」

  終戦70年・日本敗戦史(104) 再録 <ネット時代の社説論説『本 …

no image
日本リーダーパワー史((313)「坂の上の雲」の真の主人公「日本を救った男」空前絶後の参謀総長・川上操六(40)

  日本リーダーパワー史((313)            名将・川上操六伝(4 …

『新型コロナウイルスのパンデミックの影響で2020年慶応大学入学式(当初は4月1日,3日に予定)は9月入学式(学部・大学院)に、4月入学者も参加する形で開催することを検討している』★『2017年度慶應大入学式ー清家篤塾長の式辞(動画)』★『2019年度慶応大入学式-長谷山彰塾長の式辞(動画)』★『福沢諭吉先生』の旧居、福沢記念館(大分県中津市留守居町)(動画)』★『日本近代化の父・福沢諭吉に関する論考、雑文一覧 』

 前坂俊之(ジャーナリスト) 新型コロナウイルスのパンデミックの影響で2020年 …

no image
日本リーダーパワー史 ⑮ 日本のケネディー王朝・鳩山家4代のルーツ・鳩山和夫の研究②

日本リーダーパワー史 ⑮  日本のケネディー王朝・鳩山家のルーツ・鳩山和夫の研究 …

no image
世界リーダーパワー史(938)-『「トランプ氏解任提案か=司法副長官が昨年春」』★『『もう外食は無理? トランプ政権幹部、相次ぎ退店や罵倒の憂き目に』(AFP)』

世界リーダーパワー史(938) 「トランプ氏解任提案か=司法副長官が昨年春」<時 …

no image
最高に面白い人物史⑦人気記事再録★『日本が世界に先駆けて『奴隷解放』に取り組んで勝利したマリア・ルス号事件(明治5年7月)を指揮した」『150年前の日本と中国―副島種臣外務卿のインテリジェンス』

  2019/04/08日本リーダーパワー史(976)ー   …

no image
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』-『2018年、米朝戦争はあるのか』⑥『「米朝戦争」の可能性は、なくなっていないこれから考えられる2つのシナリオ』★『 焦点:消えぬ米朝戦争懸念、トランプ政権にくすぶる先制攻撃論』★『元自衛艦隊司令官が警告「米朝戦争、空爆はこの時期に実行される」そのとき、在韓邦人は…』★『「米朝開戦の可能性は100%」元外交官がこう断言する理由金正恩政権「滅亡の日」は近いのかも…』

『2018年、米朝戦争はあるのか』⑥ 「米朝戦争」の可能性は、なくなっていないこ …

no image
『 地球の未来/世界の明日はどうなるー 『2018年、米朝戦争はあるのか』②『米朝戦争勃発の確率は20―25%!』★『予防戦争と偶発戦争の可能性は・!』★『トランプの「なんで今回も迎撃しないんだ。サムライの国だろ?」、安倍首相は「集団的自衛権の範囲内でやれることをやる」』

米朝戦争勃発の可能性はあるのか、その確率は?! 最新の情報(1月18日)では、ト …

no image
 日本リーダーパワー史(769)『金正男暗殺事件を追う』●『金正男暗殺は10名が関与、4人は国外へ 現地警察が初会見』◎『金正男殺害を中国はどう受け止めたか―中国政府関係者を直撃取材』★『  邪魔なら兄をも殺す国を隣に、韓国の絶望的な危機感欠如』★『北朝鮮軍「処刑幹部」連行の生々しい場面』◎『「粛清」で自壊する北朝鮮、金正男暗殺で得た唯一の政治的利益とは』◎『日本リーダーパワー史(768)『金正男暗殺事件にみる北朝鮮暗殺/粛清史のルーツ』福沢諭吉の『朝鮮独立党の処刑』(『時事新報』明治18年2月23/26日掲載)を読む②』

  日本リーダーパワー史(769) 金正男暗殺事件を追う   金正男暗 …