百歳学入門(41) 『禅の達人の鈴木大拙(95歳)の語録ー『平常心是道』『無事於心、無心於事』(心に無事で、事に無心なり)
これが何時でも人間の心構え、集団的生活の心構えの基本である。
宗教家・鈴木大拙(1870~1966)は九十五歳という長寿で、まさしく大器晩成そのものである。
国際的に大拙の名声はますます高まり、八十歳再びアメリカに渡り、これより八年間にわたってアメリカ各地の大学で禅を講義して回わり、仏教の世界的な権威となり、世界的な禅ブームが起こした。
大拙70歳すぎの、大東亜戦争中(1941―1945)のこと。
憲兵隊の下士官が松ケ岡文庫を訪れて「この建物は山の中にあり空襲の危険は少ないし、非常に広い。憲兵隊将校の宿舎にするから明け渡してもらいたい」と命令した。それで始めてほんとうの安心が出るわけだ。これが『莫妄想』(まくもうそう)である」
「仕事こそ人生なり」「文筆三昧、研究三昧」の生活で、九十四歳まで現役で精力的に研究に没頭した。
「死を恐れるのは、やりたい仕事を持たないからだ。やりがいのある、興味ある仕事に没頭し続ければ死など考えているヒマがない。死が追ってくるより先へ先へと仕事を続ければよいのである……」
大拙の晩年の秘書は在米日本人二世の岡村美穂子。彼女は助手として大拙が鎌倉に建てた松ケ岡文庫に住み、最晩年の大拙の身の回りの世話をおこなった。
大拙が最晩年の日々を過ごした松ケ岡文庫は、北鎌倉の丘の上にあり、百五十段以上の石段を登らねばならない。その石段を日に何度となく昇降し、その飄然とした姿は、まるで雲の上を歩く仙人のようだったという。(『知的巨人たちの晩年』稲永和豊著 講談社 1997年刊)
この岡村美穂子が語る晩年の生活ぶりによると、毎朝六時半頃に起きて、夜は十二時か十二時半頃に就寝。その間、ほとんど執筆活動に専念。健康法は毎朝の冷水摩擦。それ以外は決まった日課はなかったが、家の中で二階に上がったり降りたり、庭を歩きまわり、それがよい運動になっていた。
食事は、朝はパンとオートミールに紅茶。昼はおかゆと軽いおかず。夜食はなんでも食べ、肉料理や、中華料理も。量は腹八分目が基本。
鈴木の人生観は常に前向きであった。
「生きがいに没頭し続ければ死など考えているヒマがない。死が追ってくるより先へ先へと仕事を続ければよい……」
大拙の長寿と大器晩成の秘訣は、まさに、これであった。
関連記事
-
百歳学入門(15) <日本超高齢社会>の歴史とは⑤…<徳川歴代将軍の年齢、実力調べ・・・・・>
百歳学入門(15) <日本超高齢社会>の過去とは⑤… …
-
『百歳学入門』(169)ー『2017年度、医療関係費は11兆7685億円、介護関係費は3兆130億円―厚労省予算』●『出口の入口『日本の未来を考えよう』第3回「一億総活躍社会」を実現する方法』★『高齢化社会の健康寿命は「幸福感の強さ」に比例する:研究結果』●『ロボット事業のテーマは「健康寿命の延伸」と「労働生産性向上」、ランドロイド共同事業にも着手した大和ハウスのロボット戦略』★【デキる人の健康学】寝たきりにならないための生活習慣、中高齢期の食習慣と運動が重要』
『百歳学入門』(169) 2017年度、医療関係費は11兆7685 …
-
知的巨人たちの百歳学(128)国文学者・物集高量(106歳)の健康長寿・生涯現役/勉強法>「クヨクヨせずいつも恋をして、何かに好奇心を向けて自然の変化にさからわず。そうすれば誰でも百年ぐらいは生きられる」
知的巨人たちの百歳学(128) <106歳 国文学者・物集高量の健康長寿・生涯 …
-
『NHK(2023年5年26日午後10時-10時45分)放送の『アナザーストーリー”妖婦”といわれた女「阿部定事件」と昭和』が再放送された★『日本恋愛史における阿部定事件ー「私は猟奇的な女」ですか「純愛の女」ですか』
「以下は 2020年12月23日書いた」。 NHKBSプレミアム(2020年12 …
-
kamakura Windsurfing(鎌倉材木座海岸ウインドサーフィン)(2021年5月5日午後1時)ー連休最後のこどもの日材木座、由比ヶ浜海岸には絶好の風力コンディションにサーファーがいっぱい
kamakura Windsurfing(鎌倉材木座海岸ウインドサーフィン)(2 …
-
F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(202)2017/4/5-東京ーサクラ名所めぐり➀ 上野公園のサクラは満開ー絢爛豪華なお花見風景
F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(202) 2017/4/5-東京 …
-
「センテナリアン」の研究
超高齢社会を元気に長生きする『長寿脳』を鍛えるために 「センティナリアン・パワー …
-
『オンライン講座/独学/独創力/創造力の研究①』★『『日本の知の極限値』と柳田国男が評したー地球環境問題、エコロジー研究の先駆者・「知の巨人」南方熊楠のノーベル賞をこえた天才脳はこうして生まれた(上)』
日本の歴史上、最大の世界的な天才とは一体誰でしょうか>→南方熊楠ですよ &nbs …
-
知的巨人の百歳学(120)-『元祖スローライフの達人・超俗の画家/熊谷守一(97歳)-『文化勲章は大嫌いと断った熊谷と〝お金がもらえますからね″といって笑って答えた永井荷風〈当時72歳〉』
知的巨人の百歳学(120)- 文か勲章といえば、もう1人の奇人、超俗の人、永井荷 …