百歳学入門(76)日本長寿学の先駆者・本邦医学中興の祖・曲直瀬道三(86歳)の長寿養生俳句5訓を実践せよ
2019/06/16
日本長寿学の先駆者・曲直瀬道三(86歳)の長寿養生俳句5訓
① 食はただ よくやわらぎて あたたかに たらわぬ程はくすりにもます
② 酒とても 酔わぬ程にて 愁いさり 心をのべたし 気にかようなり
③ 気をおしみ 口と淫事とつつしまば 老彭(ろうほう)ひとしその年のかず
④ のむ薬たのみをかけて何事も つつしまざるはそのかいもなし
⑤ 謹みを 耳に聞きいれ心に得て おこなわぬ人はかいなし

前坂 俊之
(ジャーナリスト)
●「養生の基本を実践して長命を得た
本邦医学中興の祖・曲直瀬道三(86歳)
日本近代医学の祖、漢方や古来の内外医書を研究して医学書『啓廸集(けいてきしゅう)』8巻を集成した曲直瀬 道三(まなせ どうさん、永正4年9月18日(1507年10月23日) – 文禄3年1月4日(1594年2月23日,86歳))は、戦国時代の医者で驚異の長生きである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9B%B2%E7%9B%B4%E7%80%AC%E9%81%93%E4%B8%89
今から500年前の86歳というと、現在のセンテナリアン(100歳人)以上の長寿だが、それは自ら実践した「養生法」の結果であろう。その意味では貝原益軒の「養生訓」の先駆者ともいえよう。
今の日本の浮付いた健康食ブーム、飽食、美食、サプリメント、アンチエジイング、老後の安全、安心の人頼み、医者頼み、介護頼み、西洋医学の翻訳頼み、ヒーリングとか、カイロプラクティックいう横文字をなんでも使う前に、日本にはもつと歴史的な古来からの健康法、養生法、精神修行、禅、茶道、香道とかを研究する必要がある。
道三はそれまでの観念的な医療方法を改め、中国金・元代の李・朱医学に根差した医道を大成し、現代風の自由で実証的な臨床医学の端緒を開いた。今では、医師が患者を診察する際、望診(患者の顔色を分析する)、聞診(患者から具合を聞く)、問診(患者に症状をただす)、切診(脈を測ったり聴診器を当てて症候を診る)を行うのは当たり前だが、500年前にとこれと同じ方法の四知(神・幸・功・巧)を行った。
また、療法のかたわら医術の教導に努め、養生書を普及させると同時に、病にかからないための注意、かかっても大事に至らせないための心得などを教えた点が特筆される。いまでいう予防医学であり、生活習慣病の克服である。こうした養生訓の著述を晩年にたくさん書いており、いずれも自己の体験、養生法、長寿法の実践から裏打ちされている、日本人の健康長寿の古典的な実践といえるし、貝原益軒よりも先駆的な業績であろう。
曲直瀬の「長寿・健康法」は次のような三ヵ条の戒めを説いている。
① 気を尽くし、心を苦しめること。
② 珍しい物の美食や、連続の飽満と夜食。
③ 性交を欲しいままにして腎の精を尽くし、体力を消耗すること。
ストレスが健康には大敵、無分別に食事や偏食による栄養のアンバランスや消化不良をおこす。過剰なセックスのいましめである。
自作の「養生俳句」を実践していたという。
⑥ 食はただ よくやわらぎて あたたかに たらわぬ程はくすりにもます
⑦ 酒とても 酔わぬ程にて 愁いさり 心をのべたし 気にかようなり
⑧ 気をおしみ 口と淫事とつつしまば 老彭(ろうほう)ひとしその年のかず
⑨ のむ薬たのみをかけて何事もっっしまざるはそのかいもなし
⑩ 謹みを 耳に聞きいれ心に得て おこなわぬ人はかいなし
① は消化しやすい食べ物をほどほどにとること、
② 酒の適量を守ること、
③ 臼気力を保って飲食と性交を控える。そうすれ伝説上の長寿者・老彭(ろうほう)のように長生きできる。
④ と薬効を信じて諸事を慎むこと
⑤ いかなる養生知識も実践しなければ意味がない
の意味である。自らの養生法を実践して、長寿を達成したこれが、弾けるというか、生活の日々の暮らし方であったのである。
<宮本義己著『戦国武将の健康法』(新人物往来社、1982)や『史伝健康長寿の知恵』を参考にしました>
関連記事
-
-
『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『 トランプ大統領、習近平主席の内憂外患』★『世論調査でバイデンに水をあけられてトランプ再選に赤ランプ点滅』★『一方、中国でも習近平体制も派閥抗争で揺らいできた』(6月20日)
トランプ大統領、習近平主席の内憂外患 …
-
-
日中韓異文化理解の歴史学(1)(まとめ記事再録)『日中韓150年戦争史の原因を読み解く(連載70回中1ー20回まで)★『申報、英タイムズ、ルー・タン、ノース・チャイナ・ヘラルドなどの外国新聞の報道から読み解く』●『朝鮮半島をめぐる150年間続く紛争のルーツがここにある』
『中国/朝鮮行動学のルーツ⑦』中国紙「申報」の論説から 日中韓150年戦争史 …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ ニュース・ウオッチ(189)』『FTの魅力で日経の価値が倍加しているという声が増えています』●『ジョージ・ソロス「英国の離脱はEUを救う」 改革の好機ととらえれば崩壊はない』●『リニア新幹線「国家プロジェクト」化、採算や経済効果危ぶむ声も』●『ローソンが中国で取り組む「先進店舗」の正体 中国のコンビニは日本より洗練されている?』
『F国際ビジネスマンのワールド・ ニュース・ウオッチ(189)』 FTを買った日 …
-
-
日本リーダーパワー史(127)空前絶後の名将・ 川上操六⑱ 国難・日露戦争の勝利の方程式を解いた男
日本リーダーパワー史(127) 川上操六⑱国難・日露戦争の勝利の方程式を解いた男 …
-
-
日本リーダーパワー史⑬ 100年前、地球環境破壊と戦った公害反対の先駆者・田中正造
日本リーダーパワー史⑬ 100年前、地球環境破壊と戦った公害反対の先駆者・田中正 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(46)記事再録/『江戸を戦火から守った西郷隆盛と勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟の(三舟)の国難突破力①』★『『人、戒むべきは、驕傲(きょうごう)である。一驕心に入れば、百芸皆廃す』
2011/06/04 日本リーダーパワー史(157) &n …
-
-
日本の「戦略思想不在の歴史⑼」『高杉晋作のインテリジェンスと突破力②』●『上海租界地には「犬と中国人は入るべからず」の看板。ここは植民地である』★『内乱を抑えるために、外国の経済的、軍事的援助を受けることは国を滅ぼす』★『大砲を搭載した蒸気軍艦を藩に無断で7万両で購入幕府軍を倒すことに成功した、倒幕の第一歩!』
1862年(文久2)5月6日に上海についた高杉一行はほぼ2ヵ月間、上海の植民 …
-
-
百歳学入門(242)―『健康長寿歴史学入門」-目ざせセントナリアン(百歳人)へ、データー満載編(2008/2/27)
百歳学入門(242)― 『健康長寿歴史学入門」-目ざせセントナリアン(百歳人)へ …
-
-
日本リーダーパワー史(163)『戦わずして勝つ』ー塚原卜伝の奥義インテリジェンスこそ『無手勝流』
日本リーダーパワー史(163) 『戦わずして勝つ』剣道の秘義・塚原 …
-
-
昭和天皇の長寿の秘訣は? その食事と健康法は・・・
『別刷歴史読本』「晩年長寿の達人たち」07年11月号 昭和天皇の長寿の秘訣は? …
