「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など 外国紙は「日韓併合への道』をどう報道したか⑤ 「ノース・チャイナ・ヘラルド」<1906(明治39)年 6月29日付>の論評「朝鮮の情勢』など
2015/09/02
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など
外国紙が報道した「日韓併合への道』の真実⑤
「ノース・チャイナ・ヘラルド」<1906(明治39)年
6月29日付>の論評「朝鮮の情勢』
伊藤博文侯爵がソウルに帰任し.しかもこのところささやかれている統監辞職のうわさをきっぱりと否定したことは,朝鮮の混乱を望む者はいざ知らず.一般的には好意的に受け止められている。
最近の暴動や民衆の不満の噴出ではさまざまな事態が発生したが,日本の統治に反対する本格的な騒ぎをあおり立てるのに完全に失敗したことは,韓国皇帝や宮廷の取巻連の愚行を助長してきたよそ者たちの失意による恨みに表れている。
この図の不安定は,今に始まったことではない。それが必要な場合は、歯に衣着せぬ発言で知られるウィンストン・チャーチル氏の先ごろの発言をもじって言えば.「ばか者か敵ででもない限り,日本が
朝鮮での職務に就いて数か月で,朝鮮を矯正することを期待する者はいない」ということになる。
日本の使命は,まさに長く困難なものになるだろう。朝鮮人は日本人に対して古くからの動かしがたい人種的嫌悪感を持っており,また彼らの国を開発しようという試みに対しては,さらに古くから
の動かしがたい嫌悪感を持っているからだ。もはや隠者の国でないのは彼らのせいではない。
しかし,運命によって朝鮮は孤立状態を抜け出さざるを得なくなったのであり,腐敗とは無縁の安定した政府が必要になったのだ。
朝鮮人が自らそうした政府をつくることができるとはだれも言い張ったりはしない。戦争前の一時期,もっと正確に言うなら2つの戦争の間(日清戦争、日露戦争の10年間)の時期に,皇帝とその顧問たちの関心では,列強の競争心を自分たちの利益に結びつけようということだけにあり,一方不幸なこの国民はどの党派が宮廷内で優位に立とうと関係なく,苦しんでいた。
したがって,朝鮮自身は戦争の直接的恩恵を被った。戦争によって,隣国の日本が朝鮮における政治的.軍事的.経済的な卓越した利権を有することが決定的に決まったし,またその指導,保護,支配の手段が提供されている。
列強は公使館を一斉に引き払うことで.ソウルの宮廷における日本の最大のライバルによるこの承認に同意し,今や伊藤侯爵による統治が混乱した朝鮮の国情になんらかの秩序をもたらすことに速やかに成功することに専ら関心を抱いている。
これまでは,日本の統治者は執拗に繰り返される、できの悪い中傷にそれほど注意する必要があるとは考えていなかったし,一方、真の批判はほとんど存在しなかった。
伊藤侯爵の東京における日々の行動が周知の事実だったときに,侯爵が満州で何かよからぬことをたくらんでいるという見え透いたデマが広まったが,それよりも重大なのは,皇帝や閣僚が彼らの昔からの暇つぶしだった陰謀をやめようとしないことだった。
本紙東京通信員が昨日付の本紙上で詳述している通り,こうした皇帝の性癖につけ込み,今回の騒動への皇帝の公然ではないにしろ,暗黙の支持を取りつけるために,伊藤侯爵の留守が利用されたことは,はっきりしているようだ。
その陰謀とは,帰任する統監の乗った列車に投石するといったもので,最初から失敗するに決まっていたので,危険というよりむしろ不快なものだった。
すでに本紙の電報が今日伝えるところでは.伊藤侯爵の任務復帰によって皇帝ならびに閣僚が正気を取り戻すという有益な効果が表れているとのことで,最近ジャパン・メール紙が懸念を表明したように,統監がこれまでの措置より激しい措置をとる必要が生じないことを祈りたい。
ある東京の新聞は次のように言う。「どうみても・皇帝の善意および新体制への同意の表明を真に受けたふりをする茶番がいつまでも続けられるはずはない。仮にそうした元首を信頼しているふりを続け,平和を乱し得る権限をゆだね続けるなら,日本は朝鮮において自らに課した使命を果たせなくなるばかりか,世界の笑い者になるだろう」。
要するに,朝鮮皇帝になおも無駄な抵抗をけしかける者たちは,皇帝にとって価値ある味方にはならないということだ。統監と協調することで,皇帝は自国の統治で威厳に満ちた重要な役割を果たすことがまだできるはずであり,新体制を阻止しようと試みることは,完全な失敗に終わるしかないだろう。
「ノース・チャイナ・ヘラルド」<1906(明治39)年
12月7日付>の論評「朝鮮の現状』
日本に帰国中の朝鮮統監の伊藤侯爵が,舞子でジャパン・クロニクル紙の記者とのインタビューで興味深い発言をしている。以下にそれを引用する。
朝鮮の概況についての質問に答えて,伊藤侯爵は次のように語った。
「状況は着実に安定してきている。まず朝鮮国民にいかなる改革がその国において真に必要か理解させなければならないので、われわれはゆっくりと事を進めているところだ。私は改革を強制しない。私は朝鮮人がわれわれの遂行している改革を理解することを欲している。この仕事に着手してまだ日も浅く,ほぼ1年というところ
だが、こうした改革は一朝一夕に達成できるものではない0朝鮮人はわれわれが遂行している仕事を理解するようになり始めており,あの国の一般的な状態は良好だ。
その上.朝鮮皇帝の親族でもある軍部大臣・李址鎔 か日本の皇帝にあてた朝鮮皇帝の親書を携えて本日(水曜日)東京へ向けて出発する。その親書は,朝鮮皇帝が日本皇帝に対し,日本が朝鮮で遂行してきた改革に感謝の意を表したものだ」
クロニクル紙通信員は言った。「先週,ソウルで朝鮮人に日本人に対する蜂起を促す秘密の勅令が発見されたという報告がありました」
侯爵は答えた。「そうした報告にはなんら信憑性はない」
「しかし.あの国にはまだ多くの反徒がいるのではありませんか?」
「いや,いわゆる反徒のほとんどは盗賊団で,伝えられた蜂起の性格も政治的なものではない。南部諸地方の先の蜂起は政治的なものだったが,それも今や完全に収拾がっいている」
「朝鮮の土地が日本軍当局に無償で乗っ取られているとの非難もかなり出ているようですが」
伊藤侯爵は答えた。「平壌でそういう非難があったのは確かだ。その苦情を耳にして,私は早速特別の使者を現地に派遣し.その一件を調査させた。私は,イギリス,アメリカ,フランスの宣教師にも問い合わせてみた。英米の宣教師たちからはなんの苦情もなかったが,フランスの宣教師からいくつかの申立てがあった。
しかし,それも今では皆現地で円満解決している。朝鮮人の中には,その地域に土地を所有していないにもかかわらず保証を要求する者もあった」
「朝鮮に渡る日本人移民の大半は好ましからざる階層に属していると言われてきましたが,この点に関してなんらかの改善措置がとられているのでしょうか?」
伊藤侯爵は答えた。「朝鮮の日本人居留民の大半はそうした階層に属するものではない。多くの日本人商人や貿易学者が開港場で商売を営んでおり,兵舎の建設や鉄道工事に従事する多数の大工,技師,苦力たちもいる。
日本人移民の中には,なんとかして暮しを立てるために出かけた者や,中にはよからぬ性格の者もいるが,その数は多くない。私は朝鮮に赴任して以来,そうしたよからぬ性格の者があの国に入るのを阻止しようと熱蘭こ試みてきたし,朝鮮人もこの私の試みに満足するようになってきている」
インタビュアーは次に,ダグラス・ストーリー氏がロンドンのトリビューン紙の通信員として,朝鮮皇帝と直接通信を交わし,去年11月締結の条約を非難するある文書を皇帝から受け取ったという発言を伊藤侯爵が見たかどうかを質問した。統監は次のように答えた。「あれは事実ではない。私は皇帝にその件について質問したが,皇帝は即座に,そのような手紙を出したことはないと否定した。もし私がそれを必要と考えれば,皇帝は喜んで公式否定する手紙を私に書いてくださったが.もちろんその必要はなかった」
「トリビューン紙の通信員は,玉璽が押された親書の現物を保持していると言っていますが」
「ストーリー氏は彼の手元にある書簡が皇帝からのものだと思い込んでいるようだが,私はそれが皇帝自身からのものでないことを確信している。皇帝はストーリーに会ったことすらもない。私は好奇心かこの手紙について皇帝に尋ねてみたが,皇帝はじきじきに,この件については一切知らないと否定した。その書簡が宮廷関係者から出された可能性はあっても,皇帝から出されたものでないことは間違いない」
統監が朝鮮の首都に戻るつもりはない,というソウルのうわさを報じた一節を示され,伊藤侯爵は本紙の代表にそのうわさが偽りであることを断言する権限を与えた。
「私が数か月朝鮮を離れているのは,寒い気候に耐えられないからだ。私は冬が過ぎるまで日本にとどまり,来春に朝鮮に戻るつもりでいる。私は朝鮮をたつ際,朝鮮の大臣たちや皇帝自身から,私が再び朝鮮の任務に復帰できるようになり次第そうすることを望むとの言葉をもらった。私の辞任のうわさは全く根拠がなく,君は直ちにそれを否定してよろしい」と伊藤侯爵は最後に言った。
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