『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(124)』「日本の過去最大の会計スキャンダルの東芝問題」を外紙はどう論評したか
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(124)』
「日本の過去最大の会計スキャンダルの東芝問題」を海外各紙はどう論評したか
今回の様な問題は、東芝に限定される特殊なものではなく、日本株式会社
の企業統治の現状では今後も起こり得る、
Economist 7/25 )
http://www.economist.com/news/business/21659758-corporate-japan-reeling-after-big-accounting-scandal-toshiba-load-
( FINANCIAL TIMES 7/2 )
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/b8301b7c-2f7d-11e5-91ac-a5e17d9b4cff.html#axzz3gXARwQjp
( New York Times 7/21 )
http://www.nytimes.com/2015/07/21/business/international/internal-panel-says-toshiba-inflated-earnings-by-1-2-billion.html?_r=0
( FINANCIAL TIMES 7/16 )
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/b209abac-2bc0-11e5-acfb-cbd2e1c81cca.html#axzz3gR0ZqJBG
( BBC 7/20 )
http://www.bbc.co.uk/news/business-33595370
(F氏のコメント )
1. 7/25付けのEconomist誌は NYT, FT, BBCを集約した形で、東芝を
手厳しく批判している。その見出し、「なんと馬鹿げたことか」、「日本
株式会社は、東芝の大規模な会計スキャンダルで浮き足立っている」、そ
して「日本の過去最大の会計スキャンダルの一つである」と嘲笑する。
会計操作の手口は、利益の水増し、利益の繰上げ計上、損失や費用記載の
翌期への繰り延べである、という。
社員を簿記の不正記載に向かわせたものは何か?彼らは不正をする様に明
白な指示を受けたわけではない、その代わりにトップマネジメントが不可
能な目標を設定し、日本株式会社の従順と忠誠という文化に依存した。
この日本の文化がヒエラルキーの低い人達に、目標に合致することは何
でも実行する様に追い込んだのである。
不正な会計操作は、2005 〜2009年までCEOを務めた西田厚聰氏の
時代から始まり、当初は原子力などのインフラ部門に限られると言ってい
たが、調査に当たった第三者委員会は、半導体、パソコン、TV部門など全
体に拡散していることが分かった、と言う。
日本株式会社の会計スキャンダルは、2011年のオリンパスの多額の投
資損失事件が記憶に新しいが、今回の東芝の方が、経営幹部達が長期に亘
り関与し、組織的に利益の穴埋めを実行したと言う点で、罪は重い、と言
う。
企業統治(コーポレート・ガバナンス)の仕組みはあるものの、取締役
会、監査委員会、外部監査法人など、ほとんど機能せず、お飾りに過ぎな
かった。日本株式会社に共通した問題ではあるが、前任の社長が後継社長
を指名する特権が一般的に認められており、取締役会も社長指名には関与
出来なかった。これが長期に亘って不正が継承された要因になっている。
今回の様な問題は、東芝に限定される特殊なものでは無く、日本株式会社
の企業統治の現状では今後も起こり得る、と言う。
2. 今回の事件が明るみ出た発端は、SESC(証券取引等監視委員会)への
通報であったと言われる。
東芝は2003 年、委員会等設置会社に移行しコーポレートガバナンスに
万全を期す体制としている。監査委員会、指名委員会が機能すれば不祥事
は早期に発見されたと思われるが、取締役会、執行役会もチェック機能が
全く働かなかった。特に執行体制の中の経理、財務部門の独立性が希薄で
トップのイエスマンと化していた事が惜しまれる。
2006 年公益通報者(内部通報者)保護法が施行された。筆者はこの内
部通報制度を私企業に導入し、運用した経験を持つが、この法律の効果は
日本株式会社の極めて閉鎖的な、臭いものに蓋をし易い、権力者に都合の
良い環境を粉砕するものであった。
多種多様な通報が内外、毎日のように行われ不祥事の早期発見と迅速な解
決に貢献した。社員にも、可笑しな「社内正義」よりもコンプライアンス
(法令遵守)の重要性を大いに啓発している。
東芝の内部通報制度は2000年、先陣を切って導入され、2006年の法制化以降も拡充されている。
今回、企業統治の仕組みは全く機能しなかったが、唯一この通報制度が歴
代経営者の悪事を暴く端緒となり、東芝を破滅から救っている。辞職した
幹部は自社に立派な通報制度があることを知らなかったのではないか?
完
関連記事
-
片野勧の衝撃レポート(35)太平洋戦争とフクシマ⑧悲劇はなぜ繰り返されるのかー原発難民<中>「白河以北一山三文」⑧
片野勧の衝撃レポート(35) 太平洋戦争と …
-
日本リーダーパワー史(358)『憲法9条(戦争・戦力放棄)の最初の発案者は一体誰なのか⑤』 マッカーサーか幣原喜重郎か?
日本リーダーパワー史(358) <『わずか1週 …
-
日本リーダーパワー史(771)―『トランプ暴風で世界は大混乱、日本も外交力が試される時代を迎えた。そこで、日清戦争の旗をふった福沢諭吉の「外交論」を紹介する」★『日清講和条約(下関条約)から3週間後の福沢諭吉の外交論である。 『外交の虚実』『時事新報』明治28年5月8日付』●『今日の順風も明日の逆潮に変化するその間に立て、虚々実々の手段をめぐらし、よく百難を排して、国の光栄利益を全うするは外交官の技量にして、充分に技量を振わせるものは実に朝野一般の決心如何に在るのみ。』
日本リーダーパワー史(771) トランプ米大統領の誕生で『世界は大混乱の時 …
-
日本リーダーパワー史(709 ) 『日中韓150年史の真実(12)記事再録★『明治のトップリーダー・川上操六参謀次長のインテリジェンス、情報戦略,ロジスティックスに学べ』
日本リーダーパワー史(709) 日中韓150年史の真実(12) < …
-
速報(118)『日本のメルトダウン』『ファイナンシャル・タイムの警告(2011/8/4 )<日本 防御すること、そして復興すること>』
速報(118)『日本のメルトダウン』 『ファイナンシャル・タイムの …
-
『リーダーシップの日本近現代興亡史』(230)/「厚労省の不正統計問題」は「不正天国日本」を象徴する事件』★『大本営発表ではウソの勝利を発表し、戦果は米戦艦、巡洋艦では一〇・三倍、空母六・五倍、飛行機約七倍も水増した』★『昭和の軍人官僚が国をつぶしたように、現在の政治家、官僚、国民全体が「国家衰退、経済敗戦」へ転落中であることを自覚していない』
2019/02/18 日本リーダーパワー非史(969) 「 …
-
速報(203)『原発事故の確率がどれほど低かろうが、決して受け入れられない』冷戦終結以降の米一極支配こそ異例だった』
速報(203)『日本のメルトダウン』 『原発事故の確率がどれほど低かろうが、その …
-
日本リーダーパワー史(698)日中韓150年史の真実(4)「アジア・日本開国の父」ー福沢諭吉の「日中韓提携」はなぜ「脱亜論」に一転したか」③<日中韓のパーセプションギャップが日清戦争 へとトリガーとなる>
日本リーダーパワー史(698) 日中韓150年史の真実(4)「アジア・日本開国 …
-
片野勧レポート『太平洋戦争<戦災>と<3・11>震災②『なぜ、日本人は同じ過ちを繰り返すのか』ー仙台空襲と津波<下>
片野勧レポート 太平洋戦争<戦災>と<3・11>震災② 『なぜ、日本人は同じ過ち …