前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

新刊紹介ー福島の未来に多くの示唆を与える『ふるさとはポイズンの島―ビキニ被曝とロンゲラップの人びと』(旬報社)

      2015/01/01

新刊紹介
<福島原発事故から2年―福島の未来に多くの示唆を与える>
写真エッセイ『ふるさとはポイズンの島―ビキニ被曝と
ロンゲラップの人びと』(72P)島田興生(写真)、渡辺幸重(文)
 旬報社、定価1500円+税』
 
本書は米国のビキニ水爆実験でモルモットにされた、日本から南東に太平洋を約4500km離れたマーシャル諸島「ロンゲラップ環礁」の被曝島民の生活ぶりについて長年にわたり救援、支援活動をしているカメラマン、ジャーナリストによる写真エッセイー集である。
 
 
 マーシャル諸島は29のさんご礁の島と5つの単独の島からなる島国で、約7万人が住んでいる(2010年)。第一次世界大戦ま
ではドイツ、第二次世界大戦(太平洋戦争)までは日本が支配し、戦後はアメリカ
の施政下に置かれた。1986年10月にマーシャル諸島共和国として独立した。

 アメリカはこのマーシャル諸島のビキニ環礁とエニウェトク環礁で核実験を繰り返し1946年から1958年にかけて67回に及んだ。

特に、1954年3月1日の水爆「ブラボー」は、広島に落とされた原爆の約1000倍の威力を持つという強大なもので、太平洋に大量の放射能をまき散らし、さんご礁の島々で平和に暮らす人びとを被ばくさせた。

 
 ロンゲラップ村には当時86人(うち4人は胎児)が住んでいたが、放射性降下物を浴び人びとは炎症やかゆみ、苦痛、吐き気や下痢に襲われた。水爆実験は3日間何も知らされないまま放置された。

3日目に米軍が来て、島にいた全員が、着のみ着のままの状態で強制的に水上飛行機と軍艦に乗せられ、クワジェリン米軍基地に運ばれました。

日に3回海で体を洗うことが命じられ、体についた放射性物質を洗い流すため。

 そこで撮られた写真にはやけどを負った皮膚や毛が抜けた頭のようすが写っていた。アメリカ原子力委員会(AEC)が発表し
たロンゲラップの人たちの被ばく放射線量は、島から出なければ全員が死亡するほどの高いレベルであった。
島外に避難して3年後、1957年6月にアメリカ原子力委員会がロンゲラップ環礁南部の「安全宣言」を発表したため、
85人の被ばく者を含むロンゲラップ村の250人が帰った。
島に帰ったものの、島にはまだ強い放射能が残っていた。それから28年間、数百人が放射線を浴び、がんや白血病、甲状腺障害、流産・死産、先天性の身体的・精神的障害にいまだに苦しんでいる。
 
 
1985年、人びとは自分たちの判断でふるさとの島を脱出しました。‘‘ポイズン(毒=放射能)’’に汚染されたふるさとを捨てなく
てはならなかったのです。
 

フォトジャーナリストの島田氏は1974年から現在に至るまでビキニ厚水爆実験の被ばく者の取材を続けて、ロンゲラップ島民
の支援活動も「ブンブンプロジェクト」を立ち上げて行っている。ジャーナリストの渡辺氏もそれに協力して、現地取材した結果、この写真文集が出来上がった。

あとがきで、渡辺氏は

「ビキニ水爆事件から58年、いまもマーシャル諸島で続く被ばくの後遺症や帰島問題は、第五福竜丸事件の解決の仕方を含めて現在の私たちに数々の示唆を与えてくれます。福島原発事件からまもなく2年。

私たちは事件の風化に対して「福島をわすれるな」との思いで、各地でスライドトークを行ってきました。この経験をベースにさらに多くの方々にマーシャルやロンゲラップの実情をお伝えしようと単行本化を考えました」と書いている。

 
福島の未来について、多くの示唆を与えてくれる、美しく考えさせられる写真集である。
 
 
 
 

 - 現代史研究 , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
速報(382)『日本のメルトダウン』『動画座談会―中国ディ―プニュース中国軍の『対日戦争準備命令』の本気度(1/3)(2/3)(50分)

速報(382)『日本のメルトダウン』   ◎『動画座談会―中国ディ―プ …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(249)/百歳学入門(46)原安三郎(98歳)「いつでも平常心を持って急迫の事態にも冷静に対応し、判断せよ」長寿10ヵ条とは

    2012/08/11 &nbsp …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(58)』『巨大地震の前兆か、全国各地で深海魚が多数、定置網にかかる異変』

       『F国 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(128)』『東芝問題に見る、会社の危機は個人の危機?』●「 東芝「出直し新体制」を操る「最高実力者」の危険な影響力」

 『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(128)』 『東芝問題に見 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(128)』『昭和史研究の藤原彰氏』の著作を読み、久し振りに本物に出会い、脳天をカチ割られた気持ちです。

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(128)』 『昭和史研究の藤 …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(78)◎『「第2の国会事故調」を作れ(2・22)●『ボーイング787機生産ストップの波紋(2・20)

  池田龍夫のマスコミ時評(78)   ◎『「第2の国会事故 …

no image
速報(309)★『日本の産業空洞化:どれほど深刻か?』★『沈みく世界経済:メルケル首相よ、今こそ行動を』(英エコノミスト誌)ほか

速報(309)『日本のメルトダウン』    ★『日本の産業空 …

no image
速報(59)『日本のメルトダウン』 ー『携帯電話は原発より危険だ』『『放射能汚染水、20日にも満杯 冷却水減らす判断も』 

速報(59)『日本のメルトダウン』   『携帯電話は原発より危険だ』『 …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座㉚」★『明治開国以来、わずか40年で日清、日露戦争で勝利したのは西郷従道の抜擢した山本権兵衛だった②』★『日清戦争前は世界の海軍力ランキング12位だった日本海軍は、勝利後は第4位に躍進した』

   日本海軍の最強コンビー西郷従道大臣、山本権兵衛軍務局長 西郷が再 …

no image
終戦70年・日本敗戦史(83)「空襲はない、疎開は卑怯者のすること」と頑迷な東條首相ー田中隆吉の証言➂

終戦70年・日本敗戦史(83) 敗戦直後の1946年に「敗因を衝くー軍閥専横の実 …