前坂俊之オフィシャルウェブサイト

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★『2018年「日本の死」を避ける道はあるのか/日本興亡150年史』⑥『安倍政権はヨーロッパの中道政権とかわりない』

   

『2018年「日本の死」を避ける道はあるのか
ー―日本興亡150年史』⑥―
『安倍政権はヨーロッパの中道政権とかわりない』
仲良くせよ、けんかをするな、悪口をいうな、安全、
安心」一点張りの一国平和<内向き思考>が壁に
ぶつかっているのです>
 
       <月刊『公評』4月号掲載、執筆は2月5日までの認識>
 
                   前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
 
C)「米国は『尖閣諸島は日米安保の範囲内である』と何度もアピールしているので、中国への抑止力が効いているとのメッセージを発しているが、ここは注意しないといけない。
もし日中衝突が起きても、米英の結びつきがありながらフォークランド紛争のときは,米国は介入しなかった。2国間紛争には介入しないという姿勢を米国は持っており、口頭では中国側に強く自制を求めているが、実際に軍事衝突が発生の場合日本側は味方として戦争してくれるかどうか、そこはしっかり押さえ手奥必要があるのではと思うよ。
 
それと、もう1つの注目点。中国側、日本側とも、政府トップ、軍関係が戦争の経験がないので、突発事故に対しての初期消火の対応を間違うケースがよくある、北朝鮮の核実験もふくめて北朝鮮のトップもそうだけど。
昔から、朝鮮半島はアジアのバルカン半島に例えられる、まさに現在そのような情勢になっている」
 
A)「結局、根底には日中対立と同時に、中国の存在感がますます大きくなり、世界規模でトラブル、問題を引き起こしている事にはかわりない。その点で、チャイナリスクは一段とアップしている」
 
 
 
C)「日本からみるよ、尖閣問題での中国の強硬姿勢がクローズアップされるのは仕方がないが、中国はすべての隣国と領有権問題で衝突しているのです。南シナ海では南沙諸島をめぐってベトナム、フイリピン、台湾、マレーシア、ブルネイ、インドとはカシミール地方をめぐって対立。
 
ブータンとも国境線をめぐる対立が長期化している。韓国、北朝鮮とも「蘇岩礁」をめぐって争い、北朝鮮とは伝説の聖地『白頭山(中国名・長白山)の管轄権をめぐって潜在的に対立している。日本に対する強硬態度だけではなく、大清国帝国以来の大中華圏の復活をかけた願望を実現しようとするものだ』
 
B)「中国の過去1世紀に渡って西欧、日本から植民地にされて苦しんできて、やっと2020年には米国を抜いて世界一の経済大国になるという強い自信と愛国心、中国ナショナリズムの昂揚の現れですよ。『中華民族復興こそが中国の最も偉大な夢だ。歴史上のいかなる時よりも中華民族の偉大な復興という目的に近づいた』と習近平・中国共産党総書記は言っていますね。中国覇権の強い願望ですね」
 
 
(C)「その点では格好の本が出ているね。世界的なベストセラーの中国の近未来SF小説『盛世中国・2013年』(陳冠中著、日本では新潮社から翻訳が出版)です。この中で、陳氏は2008年の米国発金融危機で西洋の動揺で、中国は自信を取り戻した。アヘン戦争前の清朝時代以来初めて『盛世(国力が盛んな時代)』という言葉が広告にまで使われだした」と述べている。これは北朝鮮のスローガンの「強盛国家」と同じもの。
 
日本人からみると中国には政治的な自由も人権もない、抑圧された非民主主義のおくれた国というイメージですが、中国国民の多くは『西欧的な民主主義国家も完全にも行き詰まった。中国には中国のやり方がある。独裁のもとでも中国は豊かになり、旅行や消費の自由はあり、もっと豊かに発展していく』と楽観的で明日に希望を持ち、悲観的な日本とは一まるで違い、すれ違っている」
 
 
習総書記は「落後すれば殴られ、発展してこそ強く一目置かれる」
 
A)「ニューリーダーの習総書記は「落後すれば殴られ、発展してこそ強く一目置かれる」といっていますね、日本だって日清戦争では世界から強国と見られて軍事力、国力すべて数段上の清国を破ったことで、それまで全く弱小国として無視されていた日本は初めて西欧から一目置かれて、日英同盟のパートナーになった。経済力・軍事力が国力の2大要素であることにはかわりなく、日本側もよく知った上で、対中国政策を硬軟両方で使い分けることが外交の基本ですよ」
 
C)「仲良くする、けんかをするな、悪口をいうな、安全、安心」一点張りの一国平和主義的な<内向き思考>が結局、壁にぶつかっているのです。是々非々、相手の不法には断固抗議、対立、衝突も避けるべきではない。
 
戦争と平和は2極対立概念ではない。平和も戦争もコインの両面、平和の中で戦争の芽は生まれ、対立、紛争からも平和友好の芽が育つ。対北朝鮮政策もこれまで「気を使って言いたい事も我慢して何もいわない」平和友好の日本外交が、相互の誤解を増幅していった面は否めない。中国、韓国はよくしゃべる民族ですが、口下手の日本は『沈黙は金』の民族、自分の意見表明をしたがらない、意見を持っていないのです、国際的、国際外交では『沈黙は禁』なのですよ。
 
その面で、安倍外交は民主党外交(そんなものは全くなかったが)何枚も上手です。何かというと、メディア安倍政権を極右とか、タカ派とかレッテルを張って思考停止しているが、それこそ本質を見ない日本メディアの小児病こそ問題だよ」
 
 
B)「中国は米国を上回るタフネゴシエーターですよ。強硬と協調をうまく使い分ける。日本に対して日中韓自由貿易協定(FTA)など経済で協調し、経済的な実利をとり、尖閣問題で強く出ることは当然で、なんら矛盾しない。単純思考しかできない日本人には理解しにくいかもしれないね」
 
 
C)「フォーリンアフェアーズ」の論文「日本衰退論の虚構-みえない日本の等身大の姿」はなかなか良かった。これまで、外国人以上に日本国内で総悲観論になり、それが伝播して『沈没する衰退国』として外国から見向きもされなかった。安倍の再登場とともに日本、韓国、中国、一部ヨーロッパのメディアからカビのはえた『旧左翼、右翼』から、相変わらずの極右登場の大合唱となっている。
 
しかし、「フォーリンアフェアーズ」は『安倍政権はヨーロッパの中道政権とかわりない』と指摘し、『こうした見方は完全にステレオタイプで間違っている』と述べている。
私も、安倍政権は一度失敗したので、今度は慎重になるのは当たり前だし、前の失敗の轍を踏まない。民主党の失敗をしっかり勉強して、戦略を練り直して再登場しており、失敗は成功の基になる可能性も高いと思うよ」
 
 
A)「異文化理解は難しい。人口も国土も日本の10倍以上の中国を日本人が理解する事は10倍困難と思えばいい。アメリカは人口は3倍、国土は10倍以上ですが、まだ理解しやすい面がある。なまじ中国とは隣国でアジア黄色人種、顔も肌も黒髪もそっくりで、漢字、儒教、仏教、生活、歴史文化圏が共通している。いわゆる「同文同種」なので安心、理解できるとおもっているととんでもない深い、超えがたいミゾがあるのです。カルチャーショックとコミュニケーション、パーセプションギャップなど誤解と思い違いの日中関係史だったことを知る必要があると思う」
 
 
B)「金銭感覚も桁外れに違う。中国の官僚、役人のワイロ腐敗の実態はすさまじい。米『ニューヨーク・タイムズ』が昨年末、「政治腐敗は共産党と国家を滅ぼす」と警告する声明を出すなど中国で最も清廉潔白と言われてきた温家宝首相一家の腐敗の追及キャンペーンをやって特派員が国外追放になった。
共産党から公表禁止となったデ―タ―でも、中国の汚職官僚は約1万8000人にのぼり、総額1億2000万ドルものワイロ資金を国外へと持ち出した。この金額は、1978年から20年間の中国の教育予算総額に匹敵するという役人腐敗天国だよ。また、食品業者が安全基準の規制逃れで役人にワイロを送り、その結果、毎年3億人が汚染食品によって病気になっているという。その他、手抜き工事で橋やビルが崩壊したり、化学工場からの汚染物質の流出事故などでの悪徳役人が摘発されている例など枚挙にいとわない」
 
 
(C)「結局、これまでの20年間の他の犠牲にした急速な経済成長一点張りの「社会主義市場経済」が格差を増大させて、社会矛盾が一挙にふきだしたわけよ。昨年末に中国各紙が伝えた<所得格差指数>のジニ係数0,61がそれを示している。社会暴動が多発する危険ラインの〇・四を大きく上回っている。
今年刊の暴動、デモ、騒乱は数万件に達しており、この冬の北京の大気汚染のひどさをみてもそれが表れているな。中国政府は同係数が〇・四一二に達した二〇〇〇年以降は数字の公表をしなくなっていた」
 
「では、最後に今後の世界はどうなるのか、中国が覇権を握るのか、米国との競争はどうなるのか、また米中のはざまで苦しむ日本は2050年までにこのまま衰退していって「没落国」になってしまうか、結論、見通しをそれぞれお願いしたいね
 
B)「あと10−20年後には石油、原子力、天然ガスなどに依存している現在の世界エネルギー地図はがらりと変わつているでしょう。日本では、脱原発、クリーンエネルギーばかりに焦点が当たっているが、
 
米国ではシエールガスの発見と商用化にメドがつき、5年後にはサウジアラビアを抜いて、世界最大の産油国になる見通しです。世界のエネルギー供給は急拡大しおり、エネルギー価格は大幅にダウンする。2008年当時と比べて米国の天然ガス価格は、4分の1になった。このため、ヨーロッパの天然ガス価格は米国の5倍、日本を含めてアジアの価格は8倍にも達する。
 
この結果、シェールガス革命が世界の地政学地図と経済貿易分野のパワーバランスを大きく変えるでしょう。現在の石油産出国のエネルギー独裁体制を根底からひっくり返す」
 
C)「確かに、このインパクトは石油と原発の終焉を意味するほど、21世紀のパワーシフトになるでしょうね。その中で、一躍、石油輸入国から世界一の輸出国に変わる米国の1人勝ちになるかもしれませんね。
 
その反対に負け組はロシア、イラン、中近東の産油国などで、ヨーロッパに天然ガスを東欧諸国を通過してパイプラインで送って莫大な利益を上げていたガスブロムのロシア・ブーチン独裁政権はシェールガス革命に真っ青になっている。イラクをはじめ中近東の石油産出国、ベネズエラなどの独裁政権だって、石油価格の暴落、政権基盤が崩れてしまう。
 
エネルギー大輸入国の中国もやばい。当然、エネルギー資源ゼロ国の日本は原発事故で、稼働ゼロにくわえて脱原発、クリーンエネルギーだのみなので、このシェールガスは救世主にもなる、アメリカに最敬礼してお願いするしかないわけですね」
 
B)「中国についてはシェールガスの埋蔵量は米国よりも1・2倍ほど多いのです。ただし、今回の北京の有毒濃霧の発生に見るように安い石炭をがんがんたいて暖房につかって二酸化炭素を大量に出している。環境技術も、シエールガス資源の発掘、汚染防止技術の点でも米国、日本とは大幅に遅れている。シェールガス革命にうまく転換できうるかどうか、不明ですね」
 
 
(A)『私は日本の国力の衰退、国の競争力の低下の根本には教育があると思います。
 
明治の発展は海外から西欧思想と技術をお雇い外国人を招いて、それまでの『知の鎖国日本』を解放して、必死に学んだ。岩倉遣外使節団で西欧をまわった大久保利通は「日本は40年おくれている、しかし40年しかおくれていない」といったそうです。
 
これは鉄道をさしてのこと、これから近代技術とインフラ整備、西欧精神を学んだ。この結果が日露戦争に勝って40年後に先進国の仲間入りをした。
 
明治維新からまもなく150年なのに、昨今の日本の『閉鎖性』「引きこもり体質」「移民導入反対」「TPP反対」などなど、まるで徳川時代の鎖国政策に逆もどりではないか、情けなくなる。とくに、「国籍に関係なく優秀な人材、頭脳の集団であるべき大学」『知の国際化のセンター』としての大学の閉鎖性は一番ひどい。これが日本のグローバル化、競争力低下の根本にある。
 
大学での外国人教員比率は5%以下で、外国人の学長は国公立大ではゼロです。これが日本のグローバル化、競争力低下、日本の政治、経済リーダーの人材不足の根源にあると思う。
ところで、ちょうど今から140年前の『ニューヨークタイムズ』(1873年5月10日)「日本におけるアメリカ人の文部省最高顧問」という面白い記事を最近見つけ驚いた。「日本の文部大臣(文部大丞)として招かれたデーヴィッド・マレー教授(ラトガーズ大学の数学,自然哲学、天文学の教授)が、文部省最高顧問(文部大丞)として日本に招かれた記事で、その出発のパーティーでマレー教授はこう述べている。
 
「日本は外国からは無教育国家とみなされていたが、日本は教育が最高に尊重されている国で,教育が最も普及している。しかし、何世紀にもわたっての排他的政策のために他の国々が日本をしのぐようになった。科学.工業技術、商業貿易、経済の学問では西洋が東洋よりはるかに進んでおり、これを知った日本人はわれわれから新しいアイデアを求めているのである」
 
つまり、お雇い外国人から学んだ事をすっかり忘れてしまっている文部省、大学人の失敗です。日本人だけの仲間内で談合して、福島原発事故の『原子ムラ』と同じく、『ゆでカエル』となっているのが今の日本の姿と思いますよ。明治の改革の初心に帰れといいたいですね」
 
 

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