池田龍夫のマスコミ時評(85)◎『国会事故調の「提言」を審議せず』-<日本は果たして民主主義的な国家なのか>
池田龍夫のマスコミ時評(85)
◎『国会事故調の「提言」を審議せず』–
<日本は果たして民主主義的な国家なのか、また日本人は民主主義的な理念
と合理的、科学的な理性を持った人間の集団なのか。
国会事故調の無視を含めて3/11原発事故の処理をめぐる恐るべき
怠慢をみていると、
を痛感する>
ジャーナリスト 池田龍夫
福島原発事故から2年余、未だに放射線汚染に悩まされ続け、原子炉の破壊状況など
の解明を阻んでいる。政府事故調とは別に、国会事故調査委員会が設立されたのは2011年12月8日。事故原因や背景などを政府から独立して究明するため、「3条委員会」の権限を付与された組織である。
黒川清委員長(元日本学術会議議長・東大名誉教授)ら10人の専門委員が精力的に調査・検証を行い、昨年7月5日衆参両院議長に膨大な「報告書」(A4版641㌻)を提出した。
国会議員の劣化がひどい
黒川委員長らが総力を挙げた成果「7つの提言」にまとめて提出したが、「報告書」から約1年も経つのに、国会はさっぱり機能していない。政争に明け暮れるばかりで、国民のための重要案件は店ざらし状態である。
東京新聞6月2日付朝刊は、「報告書で原子力問題に監視する目的で、『常設の委員会』設置を提言したのは、政府や規制委が事故検証の中で明らかになった問題点を改善しているかを国会で継続的にチェックする体制整備を重視したからだ。
提言に基づき、衆院では今年1月に特別委が設置された。しかし、閣僚の出席をめぐって与野党が対立。自民党は政府側が追及される場となるのを恐れ、全会一致のとき以外は閣僚を呼ばないことを強く求めた。
結局、野党側が譲歩、先の特別委には、田中俊一規制委員長らだけが出席するという不完全な形でスタートした。ねじれ国会の参院では、野党が結束すれば閣僚も出席する特別委が作れるはずなのに、未だに調整がつかず動きが止まったままだ。今国会で委員会が設立できなければ、秋の臨時国会以降になる」と報じていたが、とんでもない話である。
蜂須賀礼子、元国会事故調委員は「国会から『半年で調査してくれ』と依頼され、寝ずに頑張ったのに、国会は提言を吸い上げてくれない。歯がゆい気持ちだ」と国会の怠慢に憤懣をぶつけているが、その通りだ。
黒川委員会の建設的提言を1年間も放置
国会事故調については、本欄で何回か取り上げてきたが、このほど「日本原子力学界誌」(2013№3)を入手、黒川元委員長の<国会『東京電力原始力発電所事故調査委員』とその意義>と題する長文の報告文を精読した。
先の「報告書」に基づいて寄稿した内容で、コンパクトに事故調の意義を再確認できた。「今回のような事故は国内だけで済むような問題ではない。世界は知っているのである。行政府に関する案件は国会が独立委員会を委託し、行政府のチェックとして機能させている。民主主義での三権分立の原理を体言している手法といえる」との意義に続いて、事故調が懸命に挑んだ模様をリアルに描いている。非常に大事な指摘があるので、紙幅の許す限り要点を紹介しておきたい。
世界にも恥ずかしい日本の取り組み
▼ 私は委員長として最初の挨拶でエネルギーを『国民、未来、世界』とし、最後の挨拶で辞令交付の日が『真珠湾攻撃70年目の日』であること、『太平洋戦争生き残りの証言』と『福島原発事故の関係証言』にある相似性と、背景にある日本人の性格はなにか、について、触れた。国会事故調の報告書はウェブに日英語で公開されているし、委員会の様子は記者会見とともにウェブ上に公開されている。
▼ 基本として委員会はすべて国民とメディアに公開、ウェブ上でも公開、記者会見を公開。英語の同時通訳も入れた。会場で20回の委員会を開催。38人の参考人を招いた。結果として20回の委員会、1000人以上の関係者の聞き取り調査、2000点以上の資料調査。3回のタウンミーティング、1万人以上の被災者たちのアンケート調査、2400人余の福島第一原発作業員からのアンケート調査をした。被災市町村と被災者の調査視察、福島第一、第二、女川、東海原発の調査視察。海外への視察は3チームを派遣。訪問相手方のアポ入れは外務省、相手方の在日大使館を通じて行うが、現地では日本の大使館員と接触は原則禁止。立法府と行政府の利益相反である。
▼ 私たちはこのようなプロセスを取りながら『7つの提言』をまとめた。国会事故調は日本国家の三権分立の民主制度に基本をおいた統治機構について、国会議員には全員とは言わないが、その意識はある。
その実効性は国会議員ばかりでなく、議員を選挙という手段で選ぶ国民にかかっている。学者はどうか、官僚はどうか、ジャーナリスはどうか、その辺を理解しないようでは、極めて困るのである。
▼ 原子力の専門家とはなんなのか、日本の原子力安全・保安院のトップの専門性、資格に懸念のあることは、後で知ったことだが、世界中の研究者がしていたことなのだ。では、科学者の世界での役割はなんなのか。その点については日本学術会議による『日本の計画』(2002年)の『学者に駆動される情報循環モデル』にあるような、政府とはできるだけ独立した、科学者のコミュニティを構築していくことであろう。これは日本では大きなチャレンジだ。グローバルな世界にあっては』、大学や研究機関の評価は世界での評価であり、世界の学者たちが大学の教育、研究、自分のキャリアへむけて選択する時代が来ているということを、強く意識しておく必要があろう。
▼ 民主制度は与えられるものではない。立法府、行政府、司法の三権が分立して相互に緊張感として機能しているのか。世界の環境変化に対応して適切に、変化しているのか。肝要なのである。「報告書」は、この民主国家の基本問題を提起している。これこそがこの『国会事故調』が関係者に、国民に問いかけている基本メッセージなのだ。すべての関係者が、この大事故からしっかりと学び、適切な対応を進めなければ、日本の将来は危うい。その時間は限られている。
七つの提言 ①規制当局に対する国会の監視 ②政府の危機管理体制の見直し ③被災住民に対する政府の対応 ④電気事業者の監視 ⑤新しい規制組織の要件 ⑥原子力規
正法の見直し ⑦独立調査委員会の活用
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。
関連記事
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(110)/記事再録☆『伊藤博文がロンドンに密航して、下関戦争(英国対長州藩との戦争)が始まることを聞いて、急きょ帰国して藩主に切腹覚悟で止めに入った決断と勇気が明治維新を起した』(上)
人気リクエスト記事再録 2010/12/22執筆・日本リーダーパワ …
-
-
世界/日本同時メルトダウンへ(908)『コラム:英国離脱で何が起こるか、5つの疑問=吉田健一郎氏』●『「英国EU離脱」はどちらの結果でも株価上昇離脱は最悪シナリオだが不透明感は払拭へ』●『コラム:アベノミクスに国内「収縮論」の壁、打破困難なら長期停滞も』
世界/日本同時メルトダウンへ(908) コラム:英国離脱で何が起こるか、5つの …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(251)/東武鉄道創業者/根津嘉一郎(79)ー「借金が恐ろしいのではない。利子が恐ろしい」「克己心」(己に克つこと)こそが健康長生法」★『長生する大欲のためには、日常生活での小欲を制しなけれならぬ』
2015/08/20 知的巨人 …
-
-
【CEATEC JAPAN 2013】4K、8K高精細テレビからスマートデバイス、次世代 のモビリティが体感できるイベント満載①
【CEATEC JAPAN 2013】① 4K、8K高精 …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(897)『米朝会談は5月に迫る、トランプの仕掛ける貿易戦争では日本もターゲットにされた。 トランプ大統領と蜜月の安倍首相は、寝耳に水の窮地に立たされている。
世界/日本リーダーパワー史(897)- 安倍首相が森友学園をめぐる財務省の公文 …
-
-
世界、日本メルトダウン(1027)ー 「トランプ大統領の暴走/暴言/ひとり芝居で 『エアーホースワンはダッチロールをくり返し、墜落寸前! 世界の大波乱より前に,覇権国米国の没落が 毎日のように報じられている、オーノー」④『トランプは張り子の虎、オバマケア廃止撤回までの最悪の一週間』★『「アメリカは70年間、衰退し続けている」——チョムスキーの視点』
世界、日本メルトダウン(1027)ー 「トランプ大統領の暴走/暴言/ひとり芝居で …
-
-
『オンライン/伊藤博文による明治維新講義』★『なぜ、ワシは攘夷論から開国論へ転換したのかその理由は?ーわしがイギリスに鎖国の禁を破って密航し、ロンドン大学留学中に 「英タイムズ」で下関戦争(長州(山口)対英国戦争))の勃発を知り、超大国イギリスと戦争すれば日本は必ず敗れると思い、切腹覚悟で帰国したのである』★『1897年(明治30)3月20日に経済学協会での『書生の境遇』講演録から採録する』
再録/ 2011/07/03/世界一の授業をみにいこう(3)初代総 …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(143)』「山手線新型車両トラブル続発、JR東は、顧客に犠牲を払わせて、自社と自工場の育成を図ったのか、との批判の声!⁇
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(143)』 JR東日 …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(967)-『トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショナリズムの対立(下)』★『米中通商協議の期限は3月1日』★『中国経済失速へ!「中所得国の罠」にはまったのか』★『中国の「テクノナショナリズム」「<中国製造2025>のスパイ大作戦』
世界/日本リーダーパワー史(967) 『トランプ大統領弾劾問題と米中テクノナショ …
-
-
『第二次世界大戦・国際連合・戦後80年」を考える』★『澤田猛氏の「最後の証言者たちー戦場体験者・戦争体験者からのメッセージ」(高文研 25年8月刊)は戦争ドキュメンタリーの傑作!』★『澤田本は各国の歴史認識ギャップ、コミュニケーションギャップ」を埋めるインパクトのある平和教材、戦争教育歴史遺産になっている』
逗子なぎさ橋珈琲テラス通信(2025/10/25 /am700) 前坂 俊之(ジ …
