前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

産業経理協会月例講演会>2018年「日本の死」を避ける道は あるのか-日本興亡150年史を振り返る➃

      2015/01/01

 産業経理協会月例講演会


2013
年6月12日 

2018年「日本の死」を避ける道は
あるか
日本興亡150年史を振り返る➃

                
                ジャーナリスト/静岡県立大学名誉教授/

                              前 坂 俊 之

 

「前坂俊之HP 地球の中の日本、世界の中の日本人を考える」

 http://maesaka-toshiyuki.com/

★『前坂俊之youtubeチャンネル』

http://www.youtube.com/user/TOSHIYUKI1812

 


出口戦略がなかった太平洋戦争

それとは対照的に、太平洋戦争は情報戦で失敗を重ねました。というのも、日本の暗号はアメリカによって完全に解読されていたからです。真珠湾攻撃の成功から半年後のミッドウェー海戦では、日本の連合艦隊の動きはすべて把握され、投入された空母が全滅状態となりました。

 

しかも日本軍はミッドウェーで完敗した情報を隠して、全く嘘の情報を流して行きます。あの悪名高き大本営発表です。

 

 昭和18年には山本五十六連合艦隊司令長官が搭乗した飛行機がフィリピン上空で米軍に撃墜されています。このようなアメリカの先を読んだかのような立ち回りを考えると、すでに暗号が解読されているのではないか、情報が漏れているのではないかという疑念が海軍でも問題となりました。しかし調査の結果、解読されていないという結論が下されます。まさにアメリカ側と日本側のインテリジェンスのレベル違いといいますか、日本は情報戦に完敗していたことが分かります。

 太平洋戦争当時、最もアメリカを知っていたのは山本五十六でした。

 

山本は海軍の在米の武官としてハーバード大学にも4~5年通っています。その山本は「アメリカと戦争するとなると、日本の勝ち目はあるのか」と近衛文麿に意見を求められた時に「半年や1年は暴れてみせましょう。その後は知りません」という無責任な回答をしています。

 

結局、山本は真珠湾攻撃を手掛けることになるわけですが、先の発言にも見られる通り、開始した戦争をいかに短期間で終わられるかという国家戦略がそこには全くありませんでした。

 

いわば戦争の出口論が欠如していたのです。日露戦争の場合には、ルーズベルトの斡旋によりポーツマス講和条約を締結するという出口が始めから描かれており、山本権兵衛なり大山巌は戦争をする前から、バトルに勝った段階で一挙に停戦(ウォーの終結)に持ち込むことを明確に計画していたのです。

 

 日中戦争では、あれだけ広い大陸全体を日本軍が点と線で制圧したに過ぎませんでした。さらに太平洋戦争では、あれだけ広範囲に戦線を広げながら兵站が全く維持できていません。あの戦争の第1の目的はインドネシアの石油を確保することでした。

 

アメリカからの石油の輸入が完全にストップしたため、それに代わるものとして、インドネシアのパレンバン、その他の石油を開発することが目指されたのですが、実際には計画の3分の1、4分の1も実現していません。また、いかに兵を撤退させるかという計画が全く欠如していたため、ミッドウェー以降は、ほぼ全面的に敗北に次ぐ敗北の歴史を辿ったわけです。

 

しかも、軍部は最後の最後まで徹底抗戦を叫びます。こうして昭和20326日からは沖縄が戦場になり、全国の主要都市は空襲によって次々に焼かれて行きます。

 

そこに至ってもまだ本土決戦などと言って戦争を終結させようとはしませんでした。結局、広島と長崎に原爆が投下され、やむなくポツダム宣言を受諾するという最悪の結果に立ち至ったわけです。

 

 こうした見通しの悪さ、インテリジェンスの欠如は、決して過去の話ではありません。現代日本も同じ病弊の下にあるのではないでしょうか。

 

民主的国家のベースは情報公開

 

 もともと赤字国債は財政法第4条で禁じられており、建設国債については同条の但し書きで認められたものであったはずです。

 

しかし、「失われた20年」の間にその禁じ手が常套手段に格上げされ、政権の座にあった自民党は国債を増発して行きました。そしていつの間にかその残高は900兆円を突破するに至っています。

しかも膨大な借金を抱えるなかで、東日本大震災、福島原発事故という大惨事に遭遇することとなりました。

 

 日本の食糧自給率は約40%、石油などの資源はほとんど輸入に頼っています。当然ながら、このままでいいのかという疑問を誰もが抱くことと思います。先に言及した人口問題も同様で、基礎体力の部分で独立・自衛できる国を目指さなければなりません。基本的な問題を先送りしていたのでは将来はないと言わざるを得ません。

 

アベノミクスの場合も、これまでの薬漬けの日本、死に体の日本経済なり日本国の現状をさらに薬漬けにし、景気浮揚という名の下に、国土強靱化法という名の下に200兆円をさらにばら撒こうとしています。

 

 歴史認識問題はどうでしょうか。

たとえば、東京裁判に関する文書も全て公文書館で電子化し、中国語バージョン、韓国語バージョンを作成してインターネットで公表すればいいだけの話です。
できることなら、テキストだけではなく、分かりやすい動画情報で公開することも検討すべきです。そうしておけば、事実に基づいて論争ができます。取調室のビデオ導入と同じです。困ったことに、そういう当たり前のことができていないのです。

 

 

今回の原発事故の場合も、東京電力、その他の原発の情報に関して国家を挙げて完全な調査を行い、事実関係を明らかにしていくことが最低限必要です。

政府の事故調、国会の事故調が動きはしましたが、決して満足の行くものではありません。民主的な国家のベースは情報の公開であり、やはり後世に正確な情報を残していくのが最も大切なことです。

 

                                                     つづく

 

 

 

 - 現代史研究 , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
速報(105)『日本のメルトダウン』小出裕章情報 『瓦礫で発電するバイオマス発電について』

速報(105)『日本のメルトダウン』 『瓦礫で発電するバイオマス発電について』 …

『Z世代のための<日本政治がなぜダメになったのか、真の民主主義国家になれないのか>の講義⑤『憲政の神様/尾崎行雄の遺言/今の政治家にも遺伝の日本病(死にいたる病)『世界に例のない無責任政治を繰り返している』尾崎行雄③

    2012/02/25  日本リー …

no image
日本メルトダウン脱出法(873)『5分でわかる「パナマ文書」事件の経緯と深刻さ』●『「パナマ文書」騒動が水を差す 反腐敗運動への中国庶民の期待感』●『中国の脅威に東南アジア諸国が「頼みの綱は日本」』●『いつの間にかアジアの「安い国」になっていた日本』

日本メルトダウン脱出法(873) 5分でわかる「パナマ文書」事件の経緯と深刻さ …

no image
日本リーダーパワー史(683) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(62)『世界史の中の『日露戦争』<まとめ>日露戦争勝利の立役者―児玉源太郎伝(8回連載)

  日本リーダーパワー史(683) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(66)記事再録/ 日本の「戦略思想不在の歴史⑴」(記事再録)-日本で最初の対外戦争「元寇の役」はなぜ起きたか①

2017年11月13日 日本で最初の対外戦争「元寇の役」はなぜ起こったか 今から …

no image
世界史の中の『日露戦争』④『ロシアの難しさ』開戦2ヵ月前『ロシアの態度はいよいよ傲慢となって、戦争での決着しかない』

  『日本世界史』シリーズ 世界史の中の『日露戦争』④-英国 …

no image
速報(29)『日本のメルトダウン』41日目ー◎世界一原発大国へ突進の中国対敗戦日本の新たな戦いが始まる●

速報(29)『日本のメルトダウン』41日目 ◎世界一原発大国へ突進の中国対敗戦日 …

人気リクエスト再録『百歳学入門』(233) -『昭和の傑僧、山本玄峰(95歳)の一喝!➀」★『法に深切、人に親切、自身には辛節であれ』★『「正法(しょうほう)興るとき国栄え、正法廃るとき国滅ぶ」「葬儀は絶対に行なわざること」(遺書)

    2012/06/01  記事再録 百歳学入 …

no image
日本メルトダウン脱出法(728)「アングル:安保法制で転換迎える日本、「普通の国」なお遠く」●「海外からの「短期移民」が少子高齢化ニッポンを救う」

日本メルトダウン脱出法(728) [アングル:安保法制で転換迎える日本、「普通の …

no image
日本リーダーパワー史(323)「坂の上の雲」の真の主人公「日本を救った男」-空前絶後の参謀総長・川上操六(41)

日本リーダーパワー史(323) 「坂の上の雲」の真の主人公「日本を救った男」&# …