前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

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「トランプ関税と戦う方法論」ー「石破首相は伊藤博文の国難突破リーダーシップに学べ⑨』★『日本の運命を変えた金子堅太郎の英語スピーチ力③』★『カーネギーホール、ハーバード大講堂の万余の米国インテリ層に日本の強さの秘訣は武士道にあるとスピーチした』★「武士道とは何か」ールーズベルトが知りたいと新渡戸稲造の本を買った』★『ル大統領は<日本が勝つが、黄禍論を警戒せよ>といった』

   

★☆「武士道とは何か」ールーズベルトが知りたい

その後は各地方から招待を受けて、南船北馬、各都市の宴会、演説会が始まった。アメリカという国はうっちゃっておけば宣伝する者が勝つ。嘘を言っても宣伝者が勝つから、他人の宣伝に委しておいてはいけぬ。向うが宣伝でやればこっちからも宣伝をやらなければならぬ。しかし決してうそを宣伝してはいかぬ。アメリカ人は正義を貴ぶ国民であるから正義のある方には必ず組みする。
事実を言わなければ同情は得られない。こういう呼吸を呑み込んで私が演説したから、その後は毎日毎日大学からも商業会議所からもクラブからも協会から個人からも演説の依頼が来た。
それからここに少しお話しておきたいことは、大統領のルーズベルト氏は非常に日本の武士道を研究している。六月七日に私に午餐会に来てくれというから、ニューヨークからワシントンに行って午餐会に臨んだ。その会食中ルーズベルトいわく、
「僕は日本の武士道ということがしきりに新聞紙上に現われるから、いろいろ本を見たがいかんせん武士道ということを書いた本がない。よく武士道とか武士とかいうことを言うが一体どういうことを武士道というのか、何か書いた本はないか」と聞くから「

それは書いた本がある。新渡戸稲造というボルチモアの学校で勉強した日本人が、武士道について英文で書いた小さい本がある。
それを読めば、すっかり分かる」

「そうか、それが欲しい」
「それでは僕がのちほど送ってあげよう」
と言って約束をしました。それから後で私が送ったところがルーズベルトがそれを読んで、初めて日本の武士道ということを知って、ただちにニューヨークに電報をかけて三十部とり寄せて、それを五人の子供に一部ずつやって、
「これを読め、日本の武士道の高尚なる思想は、我々アメリカ人が学ぶべきことである。

この『武士道』の中に書いてある『天皇陛下』という事を修正すればそれでよろしい。アメリカは共和国であるから天皇はない。俺は主権者であるけれども、大統領である。よって『天皇陛下』という事を『アメリカの国旗』という字に直せば、この武士道は全部アメリカ人が修業し、実行してもさしつかえないから、お前達五人はこの武士道をもって処世の原則とせよ」と言い聞かせたということを聞いた。それから残り二十五部は上下両院の有力なる議員とか、親戚とか、あるいは内閣大臣の人達にこれを分配して、この「武士道」を読めと言った。

この書で初めてルーズベルトが武士道を会得して、ますます武士道ということを研究するようになって、ついには柔道まで官邸でけいこするに至った。今の海軍大将の竹下勇という人はその当時は公使館付の中佐であったが、柔道の型を大統領に教えた指南役である。

ル大統領―日本が勝つが、黄禍論を警戒せよ

その後ルーズベルトは、とうとう日本から畳を取り寄せ、柔道の先生を呼んで、官邸の一に畳を敷いて、そこで柔道着を着てけいこをした。そこまでいわば日本にかぶれた、よく言えば日本にすっかり感化されたのである。
その六月七日の食後における大統領の談話は日本にとっては最もよい談話であった。ご承知のとおり第一の会見でルーズベルトが非常に日本に同情を寄せたことはこの前お話した。この日、大統領は私に向っていわく
「日本は今度の海陸の戦争において、その実力を初めて世界の各国から認められた。この態度で戦争していけば、この戦は必ず日本が勝つ。しかるにその代りに反対が起こるかもしれぬ。

これは君よく注意してもらいたい。日本の実力を世界が認めるようになればヨーロッパの強国が猜疑の念を抱くであろう。現にドイツの大使のごときはこの間、僕に会いに来ていうには、日本が日露戦争について成功すれば、アジアで欧米諸国の勢力と地位に非常な妨害になる。ことにドイツは青島の租借地にすぐ影響する。米国もフィリピンは今に日本に取り上げられるぞ。それでなるべく日本をどうかして押えつけなければいかぬ」
としきりに僕に説いた。

しかし、僕はこれに対して、「そのご心配には及ばぬ。たとえ日本が勝ったところが、成功したところで、日本には武士道というものがあるから、けっして他国の既得権たる青島なりフィリピンなりを取るという心配はない。そのことはご安心なさい」

と僕が注意しておいた。しかし日本人が成功したといってあまり図に乗っていろいろやると世界の反感を招いて、ついには昔の十字軍(Crusade)のごときものを組織して、ヨーロッパ全体が日本を圧迫するようなことをするかもしれぬ、この点は注意して、勝ってもあまり誇らぬように自重してもらいたい。
ことに旅順が陥落するまでは自重してもらいたい。旅順が陥落すればロシアから必ず講和を申し込むにちがいないから、それまでは日本が勝ってもあまり誇ってはならない。もし誇ればヨーロッパの反感を買って講和談判のときに思わざる妨害が起る。
講和談判のときになれば朝鮮は無論、日本の勢力範囲に入るべきものと僕は思っている」
とルーズベルトが言った。これはじつに意外であった。

当時の情況によればロシアを追払って、やっと朝鮮問題が解決するくらいに思っているのにルーズベルトは朝鮮は無論日本の勢力範囲に入るべきものと言ったのであるから私は意外に思った。おそらく日本の政治家でも要路の人でも三十七年の六月七日に、そういう考を持っていた人はあるまいと思う。後日になれば日韓併合は俺がしたとか、俺の建策だとか、何とか言って誇っている人もあったが、ルーズベルトはそのときすでに朝鮮は日本の物と断定していた。じつにルーズベルトは世界の大勢を達観した人であると私は思った。そこで彼は語を継いで言うには、

☆英仏政府に働きかけたルーズベルト大統領

「僕が今日厳正中立を布告して、努めて日本に対して表面、同情を示さないのは、目下どうしても英仏の態度押さえつけて、日本の妨害にならぬようにしようと思うから僕もまた自分の態度をなるべく注意している。しかし君と僕とは古い友達である。ことに同窓の友達であるから、君にも腹臓なく言うけれどもこれは公けに言うのではなく、全く旧友として言うのであるから、そのつもりで聴いてくれ。しかし僕は大統領であることも承知していてくれ」

と言った。さあ、私は一向分らなくなった。ルーズベルトの真意は旧友として言ったことは大統領としてもやはり同論だという意味を婉曲なる言葉の中に含ませて言ったということを察した。
はたしてそのとおり大統領は英仏の政府に対して日本のために骨を折ってくれた。ただちにこの話を英文にしたためて、暗号電報で小村外務大臣に発送した。この電報の届いたとき、日本政府は非常に大統領の態度を徳として小村から長い電報が私に来て日本政府はこの談話を非常に喜んでいる旨、大統領に通知してくれろと言って来ましたから、小村の電報を大統領に渡しました。

これから暑中休暇にはアメリカ人は皆、山間か海岸に行って、要路の人びとはワシントン・ニューヨーク・フィラデルフィア・ボストンなどにおらぬから、ひとまず日本に帰って秋になったころが米国の友達から山間の別荘、或いは海岸の別荘に二、一週間ばかり泊りに来いという案内が来たから、好い機会である。この機を利用し避暑がてら各所にでかけて日本の態度を説明しよう。この好機会を逃すまいと七、八の二ヵ月は日本に帰らずして、アメリカの友人の別荘回りと決心した。

ところがここに一つ大事件が起ったそれは八月十一日にロシアの駆逐艦デシテリヌイが芝栗(チーフー)に逃げ込んだ。それを日本の駆逐艦が同港に進入して捕獲してしまった。この電報がアメリカに来るとアメリカ人が騒ぎ始めた。今までは日本は仮面をかぶっていたのだ、人道だとか、正義だとか、国際条規だとかいっていたが、今回局外中立港に逃げ込んだロシアの軍艦を捕獲したことは国際法違反だといってごうごうと攻撃し始めた。

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