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『Z世代のための日本興亡史研究④』★『日本海海戦完勝の<東郷平八郎神話>が40年後の<太平洋戦争開戦と敗北>の原因の1つになった』★『ネルソン神話と40年後の東郷神話の同一性』

   

 
第2次近衛内閣(1940年7月22日から1941年7月18)の和戦決定のとき、陸軍は海軍に対して、「海軍は戦えぬ」といってくれ、と申し入れたのに対し、海軍はそれをいえなかった。その原因はさかのぼって、この東郷元帥の一喝からきている。
日本を滅ぼした東郷平八郎元帥の「「トラウマ面罵事件」
https://www.maesaka-toshiyuki.com/person/57320.html

和戦決定の重大間題に直面しながら海軍部内では、軍令部も海軍省も「近衛から下駄をはかせられるな」ということになった。
このため、及川海相は近衛首相に対して「海軍によって陸軍をおさえ得ると思われているかも知れないが、閣内一致して、総理が陣頭に立って抑えなければダメである」との態度に出た。荻外荘会見の2日前、鎌倉の近衛の別荘に及川海相が呼ばれたときのこと。
東条英機陸相から海軍に対して申入れがあった時、及川海相は、「海軍として返事すべきではない。首相が「解決すべきものである」と逃げた。

●「なぜ、戦えぬといわなかったか? いかにも残念である」


太平洋戦争が惨敗に終った1945年(昭和20)の暮から翌年にかけて、海軍で生き残った最高首脳者が何回か集って、日米戦争を検討する会を開いたとき、井上成美大将が及川大将に食ってかかった。
「全責任は私にある」と及川大将は答えた。そして、それがいえなかった2つの理由をあげた。
第1の理由は満州事変当時の東郷元帥のどなりこみ事件であった。東郷元帥は日本海海戦では英雄ではあったが、この言動は日本海軍に大きな災いとなった。

ロンドン軍縮会議のとき、東郷元帥は海軍の最長老として、海軍の軍紀(軍は政治に干与せず)について厳守すべきなのに、単純な東郷元帥は部内の一部の強硬派と、部外の右翼の策動にのり、事態を紛糾させて、非常な問題を起した。

第二次世界戦争の発火点となった満州事変に際しても、前途を憂慮する首脳者にたいしても強権的な言動を繰り返し、ついに太平洋戦争の開戦にまで響いた。

●第2の理由とは―

さらに、さかのぼっていえば、日本海海戦の勝利は、いかにも東郷艦隊の猛訓練」で鍛えられた「百発百中神話」によってロシア艦隊を撃滅したように宣伝きれ、「訓練」ということが日本海軍の「神話」になったことである。
日本艦隊の大砲の照準装置にはレンズが入っいたが、 バルチック艦隊にはクロス・ヘアの照準器しか持つていなかった。その事実をいわずして、ただ「東郷精神」のみが強調された。
これはネルソンの場合と同じである。1805年10月21日、トラファルガルの海戦でネルソンはフランス艦隊を撃滅し、ナポレオンをして、永久に英本土上陸を断念させた。以来、今日にいたるまで世界海軍の英雄に祭り上げられているが、ネルソンの勝利も、たまたま英艦隊が風上にあって敵と対戦したことが決定的な勝因となった。

●英国魂と大和魂の類似性

だが、それがいわれずに、ただ「ネルソン魂」だけが強調、賛美された。トラファルガル海戦(1805年)のちょうど100年後の「日本海海戦」(1905)で東郷神話が生まれ「大和魂」が強調されたのは国家興亡史における両国の類似性を感じる。

英国は大西洋上の海洋国家、日本は太平洋上の海洋国家である。英国はいい意味でも悪い意味でも「ジョンブル精神」(英国魂)があり、日本の大和魂と共通する面が多い。

トラファルガル海戦(1805年)によって、フランス・なポレオンを抑え世界中の7つの海に植民地を広げ「大英植民史地帝国」を建設した。日本は米国の黒船来航)によって明治維新(1868年)で開国し、西洋に追いつけと「富国強兵」「殖産振興」政策の国づくりにまい進した。

 500年にわたってユーラシア大陸の寒冷地の領土拡張・植民地政策を続けた「ロシア・侵略主義」に対して、弱小国家日本は日英同盟を結び、英米の支援によって日露戦争(1905)でからくも勝利した。アジア、中近東の有色人種で唯一独立を守った。日本興亡史の「坂の上の雲」を登ったのである。

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