『Z世代への現代史復習問題』<ウクライナ侵攻1年>―戦争は『予断と誤断』で起きる]米国の「シリコンカーテン」(半導体制裁)☆『世界外交史の奇跡ールーズベルト大統領と金子堅太郎の友情外交で日露戦争に勝利した』
2024/04/02
ウクライナ侵攻1年―戦争は『予断と誤断』で起きる(23年2月)
ウクライナ戦争の長期化が懸念される中で、23年3月10日、米シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻(はたん)を発表、スイスの金融大手クレディ・スイス・グループの株価も暴落し、世界的な連鎖的な金融危機の不安が高まってきた。第2次世界大戦の引き金になった1930年のウオール街の大暴落、リーマンショック(2008年9月)の恐怖が再びよみがえる。ウクライナ戦争の動向とともに今後の世界経済の行方から目が離せない。(この情報は23年3月15日までの情報分析です)
「突然の米シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻(はたん)には驚いたが、これまでの異常なシリコンバブルを考えれば、ついに来たかという感じですね。
リーマンショックを強く意識したバイデン大統領は即座に「米国の銀行システムは安全で、銀行預金が戻ってこなくなるリスクはない」と国民に演説し沈静化に努めた。そこにスイスの欧州の金融大手クレディ・スイス・グループンい飛び火して、世界金融危機のリスクが再燃してきて、予断をゆるさない状況です」
戦争は『予断と誤断』で起きる
「ではこの問題は次回に譲るとして、今回は3月10日までに起きた世界状況について論議しましょう。戦争は各国の予断、油断、誤断と決断の負の連鎖によって起きる」といわれる。ウクライナ戦争が1年経過したが、まさしくこの「思い違い」「コミュニケーションギャップ」の連続で長期戦に突入している。
3月5日、中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)と全国政治協商会議(両会)が開催された。この両会はゼロコロナ政策が終了後、約3年ぶりの開催で、今後の経済成長率や経済運営の見通し、経済閣僚の人事、国家機構の組織改革など経済問題などを幅広く協議するものだ」
「習近平政権が2月初めのブリンケン国務長官の訪中を歓迎したのは、冷え切った米中関係と中国経済の立て直しを協議するためだったが、予期せぬ気球問題が破裂して、「友好ムード」を一挙に吹き飛ばされた。両会での経済協議は米中関係緩和ムードは一挙にしぼみ、一層厳しいものになった。
これまで偶発的な衝突を避ける環境づくりに取り組んできたバイデン政権は「気球撃墜」後、オースティン米国防長官が、直ちに中国の魏鳳和国防相に電話連絡をしたが、魏国防相は拒否し、対話ホットラインは機能しなかった。私の推測では、偵察気球は中国軍の長年のルーティンと思われるが、まさかバレる(?)とは、の想定外の事態に中国側は態度を急変させ、再び「戦狼外交」に逆戻してしまったのではないか」
「ブリンケン国務長官は2月18日、ドイツで、中国の外交を統括する王毅政治局委員と会談、「中国はロシアに対し政治的、外交的な支援を行っているが、軍事支援をすれば深刻な問題になる」と強く警告した。これに対し王毅氏は「ウクライナに武器を提供し続けているのは中国でなく米国だ。米国に中国に命令する資格はない」と強く反発した。
一方、ロシアのプーチン大統領も2月21日、議会の年次教書演説で①米国との核軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行の停止②戦術核の実験を再開させる準備ができているーなどと述べ、西側諸国を強くけん制。王毅氏は22日に ロシアを訪問しプーチン大統領と会談。プーチン氏は「両国関係は全てが前進し、発展している」と友好関係をアピール。
王氏も「ロシアを批判することを避けて、北大西洋条約機構(NATO)が紛争を引き起こした」とロシアの主張に賛成した。2月24日には国連総会ではロシア軍の即時撤退とウクライナの永続的な平和などを求める決議案が、欧米や日本など141か国の圧倒的な賛成多数で採択されるなど米・NATO・日本・韓国対ロシア・中国・イラン・北朝鮮の対立関係はエスカレートするばかりです」
- 太平洋戦争も「誤断と決断」の負の連鎖
「プーチンはウクライナ侵攻は3日で片付くと豪語していたが失敗した。太平洋戦争も日本の「誤断外交で開戦した点では共通している。1939年(昭和14)8月23日、ナチスドイツとソ連の間で突然『独ソ不可侵条約』が結ばれた。平沼騏一郎首相は驚愕し、同30日「欧州情勢は複雑怪奇なり」として内閣を総辞職した。 記者団に囲まれた太田耕造書記官長は「複雑怪奇とは、日本人のコモンセンス(常識)ではわからないということですよ」と説明すると、 記者からは拍手が上がり「わかる、わかる」との声が出た。
1940年6月14日、フランスもナチスドイツに敗北した。ヨーロッパを席巻するナチスドイツの破竹の勢いに、国内世論は「バスに乗り遅れるな」が合言葉になり、第2次近衛内閣の松岡洋右外相は9月27日「日独伊三国同盟」を締結した。
松岡は「真の相手はソ連で、ドイツの仲介で日ソ関係を調整すれば、米・英も、日本との開戦を考えるはずがない」の判断した。
ところが 米国は「三国同盟は米国への挑戦であり、独裁者たちの脅迫には決して屈しない」と態度を一層硬化した。
1941年12月8日、日米開戦の報を聞いた松岡は、「三国同盟の締結は僕の一生の不覚だったことを、今さらながら痛感する。これを思うと死んでも死にきれない」とざんげの涙を流したというからね」
「確かにね!。「予断と誤断で戦争が起きる」とすれば、台湾有事はますます可能性が高まってきているが、米中日、各国ともよほど想定内として厳重なリスク管理をする必要がありますね」
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米国の「シリコンカーテン」(半導体制裁)
「こうした米中外交の言論戦とは違い、米国による中国への「シリコンカーテン」(半導体制裁)は着実に進んでいる。今や、国際政治、経済、軍事力のカギを握るのは半導体チップなのである。バイデン米大統領は2月7日、連邦議会上下両合同会議で内政、外交方針を示す「一般教書」の演説を行った。
「かつて米国は世界の4割近いチップを製造していたがこの10年で1割に落ち込んだ。米国メーカーはチップ不足のため十分に自動車を製造できなくなった。中国の半導体企業と対抗するために超党派で『半導体及び科学法』を成立させたといわれる。このため、昨年10月、半導体と製造装置の中国への輸出は米国の暗号解読や極超音速ミサイルの誘導といった軍事目的に使用される恐れがあるとして厳格な規制を課した。さらに1月末には世界に冠たる半導体製造装置メーカーを擁するオランダと日本は米国と共同で最先端ハイテク装置の中国輸出を一部禁止することで合意。同時に中国のメモリー半導体大手である長江存儲科技(YMTC)など2社に対する半導体製造装置の輸出を規制した」
「一方、習近平主席は2015年5月「中国製造2025」(半導体自給率を70%に引き上げ」を発表、16年にYMTCなど2社が設立された。その結果、中国の半導体自給率は15年(10%)から21年(24%)に上昇、30年(50%)に達するものと予測されていたが、米国の厳しい規制で目標の70%達成は難しい状態となっている。
今後、世界半導体製造装備でシェア2、3位の日本とオランダが米国(第1位)の規制に完全に加われば、中国の半導体産業は半導体が作れない苦境に陥いる。米国のシリコンカーテンはそこを狙ったものですね。さらに、バイデン米政権は2月16日、スーパーコンピューターや人工知能などで米国が持つ先端技術の悪用や違法な取得を防ぐための「破壊的技術攻撃部隊」を創設、中国やロシア、北朝鮮、イランなどの「最先端技術のハッキング」には反撃する方針を打ち出した」
「世界的なベストセラーになっている最新刊のクリス・ミラー著『半導体戦争―世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』(ダイヤモンド社)をさっそく読んでみた。同書によると、「米中両国は消費・販売する半導体の大半を台湾のTSMCに依存している。中国の半導体企業は自国の家電産業に供給する半導体の6%しか製造できず、不足分の7割をTSMCに頼っている。TSMCは米国の半導体企業が設計した半導体の92%を契約生産している。
そのため、TSMCのマーク・リウ会長は「世界は台湾のハイテク産業を必要としている。この地域で戦争が起こるとすべての国の利益に反するので世界はそれを許さないだろう。それが“シリコンの盾”の意味だ」と説明している。台湾有事が起これば、まさに「世界は地獄を見る」ことになるだろう」
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ルーズベルト大統領と金子堅太郎の友情外交
「ウクライナ戦争1年を前にした2月21日、バイデン米大統領はウクライナの首都キーウ(キエフ)を電撃訪問、ゼレンスキー大統領と会談し「民主主義陣営を守り抜く」との宣言を発した。この訪問プロジェクトはまる
で「大統領のミッション・インポッシブル」である。国防省、情報機関などが数ヵ月前から極秘裏に計画、17日に実行した。まず大統領専用機でポーランドに飛び、列車に乗り換え真夜中の約10時間かけてキーウに到着、5時間しか滞在せず再び列車でポーランドに入り、ホワイトハウスで発表し、世界をアッと驚かせたね。私はこれを見ながら、日露戦争での金子堅太郎の「ルーズベルト大統領工作」を思い出したよ」
「明治の最強の外交官と称えられる金子堅太郎は今やすっかり忘れさられた存在と化しているので、ここでおさらいしたいと思いますね。
金子堅太郎は1853(嘉永6)年3月、福岡市で福岡藩士の長男に生まれた。1871年に岩倉使節団に同行し、米国に留学した。ボストン小学、中学校を飛び級で卒業、この時、卒業生代表として英語で答辞を述べというから英語力はずば抜けていた。ハーバード大学法科に入学、英米の憲法史、哲学史などを勉強し、学内外でセオドア・ルーズベルト(後の大統領)をはじめ、その後、著名な政治家、文学者、哲学者などになった学友、知人と豊富な人脈を築き、計8年間の米国生活を送った。1878年(明治11)に帰国、その後、政治家となり、司法大臣、農商務大臣を歴任、伊藤博文のもとで、明治憲法,皇室典範の起草にも従事した日本を代表する国際法学者であった。
日露戦争は、1907(明治37)年2月4日の御前会議で開戦が決定した。その夜、伊藤博文枢密院議長から金子に呼びだし電話があり「日露戦争開戦が決まった。日本が勝てる見込みはない。すぐ米国にいって、学友のルーズベルト大統領を日本の味方につける秘密工作をしてもらいたい」と命じた。金子は2名の随行員を従え、「ガンマンの国」米国に日本刀の代わりに『英語スピーチ力』を武器にサムライ外交官として乗り込んだのです」
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ル大統領は「日本が勝つ、勝たせなければならない」と応援
「3月26日、金子はホワイトハウスにルーズベルト大統領をたずねと、ル大統領は玄関まで駆け足で迎えにきて、「君はなぜもっと早く来なかったか。僕は君をとうから待っていた。」と金子をハグして大歓迎した。大統領執務室では「日本は正義と人道のために戦っているが、ロシアは近年各国に対して悪虐非道の振舞をしている。とくに日本に対しての行動は人道、正義に反しており、今度の戦争は日本が勝つ。勝たせなければならない。そこで私は日本のために働く」といきなり断言し、「これは君と僕との間の内輪話で、公けにしてもらっては困る。」と話し、金子を驚かせた。
さらに「君はハーバード同窓会の会員で、その東京の会長だから、米国のハーバード会員は、日本に同情するに決まっている。」とも告げて、金子は百万の援軍を得たような喜びにひたった」
「勇気凛々となった金子はルーズベルト、ハーバード大人脈を最大限いかしてニューヨーク、ワシントン、ボストンなどで2日に1度ほどペースで午餐会、パーティーに出席し、講演会では「日露戦争の経緯」、「極東の大勢」「武士道」などのテーマで流ちょうな英語で講演。「米国の国民性には公平、公正な競争を求めて、弱者に声援を送る「アンダードッグ精神」(負け犬に対する同情心)があり、それに訴える「広報外交」を精力的に展開した。金子の講演会は人気沸騰しいつも満員の盛況だった。ル大統領と金子の友情はますます深まりホワイトハウス、自宅、別荘にもたびたび招かれ、互いに日露戦争の情報を交換した。」
金子堅太郎の決定版といってよい松村正義著「日露戦争と金子堅太郎―広報外交の研究」(新有堂、1987年)によると、その中にはル大統領の作戦指導や重要な機密情報があり、金子はその内容を外務省に暗号電報で逐次、速報した。
- フィンランド、ポーランドなどの独立運動家と提携してロシア革命を内部から扇動して、ロシアをかく乱せよという情報(これが明石元二郎の「明石工作」(現在に換算すると工作資金は約25億)の元になった。
- 日露戦争では軍事費調達のため外国債6億9千万円を英米株式市場で発行。そのうちユダヤ人銀行家・ジェイコブ・シフが2億ドルの国債を購入したこの高橋是清(日銀副総裁)の外債工作」にも金子工作によるユダヤ人銀行家人脈が一枚かんでいたといわれる。
➂ロシアの宮廷内には開戦派と和平派の派閥対立が激しく、その内部情報が日本側に逐一知らされた。
- ドイツ皇帝のル大統領あての書簡の内容も聞き出した。
――など日本の勝利に金子の「ルーズベルト工作」の外交力が大きく貢献し、勝利に結びついたことは間違いない」
「世界一の軍事超大国ロシアに「極東の貧乏新興国日本」が勝利したことに世界は驚いた。その奇跡的な勝利は日本だけの力で勝ち取ったものでは決してない。ロシアの満州・朝鮮・日本に対しての侵攻危機に「日英同盟」(1902年)を締結、英国をバックにして、開戦した段階では金子堅太郎の超人的な活躍でル大統領の応援を勝ち取りポーツマス条約締結にこぎつけわずか1年7か月で、戦争を終結させ、出口戦略に成功したのです。「柔よく剛を制す」で小男の日本人が暴れる大男をロシア人を見ごとに倒した世界の戦争史、外交史にも例のない勝利です。明治のトップリーダーたちのインテリジェンスに学ばねばならない、と思う」
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