2025年は太平洋戦争敗戦から80年目となる。今後1年間、日本終戦80年史を振り返り、断続的に連載する。『太平洋戦争の悲惨、無残な敗戦による結末に至る。①』
記事転載 日本敗戦史(45)
「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』の内幕<ガラパゴス日本『死に至る病』「暴走機関車大日本帝国アジア号」 が中国、全面脱線、転覆、破滅、無残な敗戦による結末へ。
5-太平洋戦争の悲惨、無残な敗戦による結末に至る。
「誰もが望まない戦争」「清水の舞台から目をつむって飛び降りた開戦」「ドロナワ式、戦争目的のない開戦」「長期ビジョンのない、出たとこ勝負の開戦」だったことが、この以上の経過を見れば良くわかる。歴史の原因と結果は直結するケースが多い。「清水の舞台(清水寺)から目をつむって飛び降りた自殺戦争」、文字通り「ジリ貧をさけようとして、ドカ貧」の悲惨な結末となった。
まずは、その被害状況の数字を挙げる。
1944年(昭和19)年3月10日 米軍による東京大空襲 死亡8万、負傷4万人 被災家屋:26万
同年5月25日 米軍による東京大空襲、死傷者は7415人、被害家屋約22万戸。
同年8月6日 米軍による広島への原爆投下 死者十数万―30万人
同年8月9日 米軍による長崎への原爆投下 約7万4千人―15万人が死亡、
その本土爆撃の実態とはいかなるものだったのか。
―全国の被災地は215都市 計約645平方キロ、犠牲者は47年1月結成の全国戦災都市連盟が113都市を調べた分だけで51万人、被災人口は964万人。当初は、軍需工場が専ら狙われたが、東京大空襲以降は、中低空で大量の焼夷弾を投下し市街地を焼き尽くす無差別爆撃が始まった。東京は45.3.10の東京大空襲で約27万戸を焼き、約8万4千人が死亡した。
文字通り【自殺戦争】だったことは、開戦前の1941(昭和16)年1月、当時の陸軍大臣・東條英機が示達した「戦陣訓」(陸訓1号)に表れている。これは軍人としてとるべき行動規範を示した文書。この中の「生きて虜囚の辱を受けず」という一節が軍人・民間人の多量の無駄な死や自殺の原因となったか否かが議論されているが、アッツ守備隊玉砕戦死 2638名(戦死率99%)、サイパン島玉砕、戦死約21,000、自決約8,000、捕虜921なのである。
1945(昭和20)年になるともはや敗戦は決定的なのに、国体護持のためだけに50万以上の国民を犠牲にしたのはなぜか。
6月24日には「義勇兵役法」なるものが制定される。
これは連合軍の日本本土侵攻に対処するため、全国民の軍事組織化を意図、15歳以上~60歳以下の男子、17歳以上~40歳以下の女子を義勇兵、役として必要に応じて国民義勇戦闘隊に編入できるというもの。すでに沖縄戦では、全住民を軍の道連れにしていたが、この法律は、沖縄の本土化を意味した。国民皆兵によって竹やりなどで米軍にたちむかっていくという狂信的な、アナクロニズム(時代錯誤)で皇国護持を唱えていたのである。
7月26日には「ポツダム宣言」(英中の連合国が署名した内容)が発表された。
① 日本を世界征服へと導いた勢力の除去(6条)
② 日本国は本州、北海道、九州、四国と諸小島に局限される(8条)
③ 戦争犯罪人の処罰(10条)
④ 全日本軍の無条件降伏と日本国政府によるその保障(13条)
⑤ 全日本軍の無条件降伏と政府がそれを保障する事を受け容れられない場合は、(ドイツ同様の)迅速且つ完全なる壊滅あるのみ)との声明だった。
これにたいして、7月27日 鈴木貫太郎首相は記者会見し「黙殺声明」、斷固戰争完遂に邁進する」と発表した。「黙殺」は同盟通信社で「ignore it entirely(全面的に無視)」と翻訳された。この「黙殺」発言が、原爆投下のつながる。
7月28日 青森大空襲、広島県呉軍港攻防、大分県日出町、改装空母「海鷹」爆撃、鳥取県大山町の大山口列車銃爆撃
7月29日 京都府舞鶴市、舞鶴軍港空襲、静岡県浜松市、浜松艦砲射撃
7月31日 静岡県清水市 清水艦砲射撃
8月1日 新潟県長岡市 長岡空襲
8月2日 富山県富山市への大空襲、茨城県水戸市への水戸空襲
8月6日 広島市へ原子爆弾投下、死者12万人から約30万人(現在まで)
8月9日 長崎市へ原子爆弾投下、死者75000人-15万人(現在まで)、ソ連が対日参戦、満州国へ侵攻、
御前会議で「国体の護持」を条件に受諾を決定。
8月10日 連合国に「国体の護持」の条件でのポツダム宣言の受諾を打電。
8月11日 米国は「降伏時より、天皇および日本政府の国家統治の権限は連合軍最高司令官に従属する(subject to)」と。この訳について「制限の下におかれる」とする外務省と「隷属する」とする軍部の間の対立。福岡県久留米市への空襲
8月13日 千葉県成東町の成東駅爆破、山梨県大月市の空襲
8月14日 御前会議開催、天皇再び受諾決定。群馬県伊勢崎市、埼玉県熊谷市の空襲、大阪市の大阪城空襲、山口県岩国市の岩国大空襲、山口県光市の光海軍工廠、
8月15日 終戦
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
結局、当時の天皇制国家日本機関車( 国体)の本質は車輪部分の陸軍、海軍は一致協力せず、バラバラに別方向に回転して暴走が止まらなくなったのに、運転席の政府は危険を察知しても軌道修正せず、逆にアクセルを踏み続け、統帥権を持つ昭和天皇も、実際には統帥・作戦には介入はできず、追認するだけの大元帥であり、警笛役の新聞、マスコミも警笛を鳴らさず、 「イケイケ、どんどん」『勝った、勝った」の大本営発表のウソ発表を垂れ流した。
肝腎の乗客席の国民には窓が全部閉め切られた密閉状態におかれ、世界の様子を目隠しされ「勝った」「勝った」の「大本営発表の情報しか聞かされていない状況であった。この 「暴走機関車大日本帝国アジア号」 が中国、アジア・太平洋地域でジグザグ、無鉄砲な暴走を続けて全面脱線、転覆破裂破壊して空前の死傷者、被害をだした末にやっとストップしたのが「終戦のという全面敗戦の日」であった。
<主要参考文献―前坂俊之「太平洋戦争と新聞」講談社学術文庫(2007)、山中恒「アジア太平洋戦争」岩波書店(2005)、若槻泰雄「韓国・朝鮮と日本人」原書房(1989)>
関連記事
-
『リーダーシップの日本近現代史』(202)ー『COP25と<脱石炭の行動を起こせない>」大災害国日本の沈没①』★『2018年の気象災害被害が最悪国だった日本』★『100年に一度の想定外の災害が毎年のように襲ってくる「巨大災害多発時代」に突入した日本』★『それなのにCOP25で2度目の化石賞でダメ出しされた日本は51位 石炭大国の中国は30位』★『安倍政権下で環境問題後進国へ転落、世界との差は2周遅れで信用失墜へ!』
●「今やらねば、いつできる.何よりダメな日本の衰退』 COP25で2度 …
-
「Z世代のための『人生/晩節』に輝いた偉人伝』★『住友財閥の中興の祖『幽翁』伊庭貞剛の日本一見事な引き際、晩晴学③』★『人を使うには4つのしばりつけに注意すべきだ★『 リーダーは『熟慮・祈念・放下・断行』せよ』
2019/11/20 /『 リーダーシップの日本近現代史』 …
-
「知的巨人の百歳学」(145)―『世界史を変えた「真珠王.御木本幸(97歳)の長寿健康法」★『「ないないづくし」の三重県の田舎の海で、日本初代ベンチャービジネス王に輝いた御木本の独創力をエジソンも大絶賛。ノーベル賞級の大発明!』★『ミキモトパールの発明が20世紀・中東の「石油の世紀」きっかけとなった』
世界史を変えた「真珠王.御木本幸(97歳)の長寿健康法」 &nbs …
-
知的巨人たちの百歳学(176)記事再録/「東洋のビール王」「大日本麦酒創業者」(アサヒ、サッポロビールの前身)・馬越恭平【88歳) 「健康10ヵ条」ー「2つの養生<体の養生と財布の養生とは怠るな>」 「四気の保持を忘れぬこと―元気、勇気、長生き(気長の意味) 、腹の落付き(沈静)の四つ」
2015/09/16   …
-
『百歳学入門』(229)-『 ルノアールの愛弟子の洋画家・梅原龍三郎(97)の遺書』★『「葬式無用、弔問、供物いずれも固辞すること。生者は死者のために煩わされるべからず』
2018/05/27 記事再録 『百歳学入門』(229) …
-
『リーダーシップの日本近現代史』(334)-『新型コロナウイルス/パンデミックの研究①-日本でのインフルエンザの流行の最初はいつか』★『鎖国日本に異国船が近づいてきた18世紀後半から19世紀前半(天明から天保)の江戸時代後期に持ち込まれた(立川昭二「病と人間の文化史」(新潮選書)』
2020年4月22日 前坂 …
-
『2018年、米朝戦争はあるのか➈』-『トランプ大統領の「認知症騒動の顛末」★『銃乱射の被害者を訪問したトランプ、ご機嫌で大顰蹙(ひんしゅく)。この男に心はあるのか?』★『米副大統領、平昌五輪で北朝鮮と会談予定だった 北朝鮮がドタキャン』
トランプ大統領の「認知症騒動の顛末」 前坂 俊之(ジャーナリスト) CNNは1月 …
-
百歳学入門(47)荻原井泉水(92歳)の『天寿・長寿10ヵ条』「随」の精神で「天」に感謝し「天」に随い「天」を楽しめば【天寿】となる
百歳学入門(47) 荻原井泉水(92歳)の『天寿・ …