前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「チャットGPT」で「リープフロッグ」せよ』★『AI研究の第一人者・松尾豊・東大大学院教授は「インターネット時代には日本は遅れたが、AI時代には「リップフロッグ」(カエルの二段とび)でフロントランナーなれる」★『絶好のチャンス到来で、デジタル日本経済の起爆剤になる』

      2023/05/09

前坂俊之(ジャーナリスト)

 
「チャット GPTの出現で、「ホワイトカラーの仕事のすべてが何らかの影響をうける」
「指示待ち族の仕事はなくなる」「会社の営業・総務・経理・人事・開発・広報・企画・・・大量解雇時代へ」などサラリーマンにとってギョッとする雑誌の見出しが並ぶ。
この「チャットGPT」の開発元の「OpenAI」のサム・アルトマンCEO(37)が4月10日に緊急来日し、岸田文雄首相と20分にわたり会談した。同氏は「素晴らしい話し合いができた。AI技術の利点と、欠点を軽減する方法について話した」と述べ、岸田首相も「(イタリアから)指摘されていたプライバシーや著作権のリスクと合わせて国際的なルールづくりについて意見交換した」と応じた。
その後、日本の「国家戦略」策定中の自民党「AIの進化と実装に関するプロジェクトチーム」の会合に出席し、「OpenAI」の理念と開発、実績、安全性、使用例、日本への七つの提言をまとめて発表した。
  • ①日本関連の学習データのウェイト引き上げる、政府の公開データなどの分析、提供を行う
  • ②LLM(大規模言語モデル)を用いた学習方法のノウハウを共有し「GPT-4」の画像解析などの先行機能の提供する
  • ➂機微データ(精神的・社会的なダメージを与える情報)の国内保全のセキュリティーを検討する
  • ④日本の若い研究者や学生などの研修・教育する研究所を東京に新設するーなどを発表した。
アルトマンCEOは今月29、30日に群馬県高崎市で開催のG7広島サミットの群馬高崎デジタル・技術大臣会合にあわせて『チャットGPT』の方針内容の説明に来日してきたものであろう。
松野博一官房長官は14日の衆院内閣委員会で「現状では従来の検索サービスとは異なる情報漏えいなどのリスクが想定されるが、規制する考えはない」と言明。河野デジタル相も「(国家公務員の)働き方改革につなげることは非常に大きなテーマだ」と強調し、行政機関での活用に改めて意欲を示した。
 
一方チャットGPTについはG7各国で個人情報の無断収集や著作権侵害、子供への悪影響などの懸念が広がり、規制の動きが出ている。EU加盟国の欧州データ保護会議は13日、チャットGPTへの対応を協議する専門部会を設置。イタリア、スペイン、フランス、ドイツも規制に前向き姿勢だ。カナダも調査を開始したほか、米国商務省はAIの規制案について一般からの意見の募集を始めた。

日本だけがなぜ導入に前向き、積極的なのか?

「リ-プフロッグ」でイノベーション

 

AI研究の第一人者・松尾豊・東大大学院教授は「インターネット時代には日本は遅れていた」が「今後のAI時代には「リ-プフロッグ」(カエルの二段とび)してフロントランナーなれる」―絶好のチャンス到来で、デジタル日本経済の復活起爆剤になるという。
リープフロッグとは、「技術などが途中の段階を飛び越えて一気に進展する経済変化。途上国や新興国で新しいデジタル技術が一気に普及することを指す。国民IDシステムを導入したインド、SMS(ショートメッセージ)が普及したケニアなどは、先進国が数十年かけた技術革新をわずか数カ月で達成して経済成長した。
すでに日本国内での『チャットGPT』の利用者が100万人を突破、マンガ・アニメ大国の日本の生成型AI画像技術(生成したいイメージをテキストで入力すると、イラストをAIが自動で生成してくれる技術)のポテンシャルは高い。
その点を見越してアルトマンCEOは「GPT-4の画像解析などの先行機能の提供する」と、東京に研究所を新設することを発表した。
18、19、20世紀半ばまで世界最先端の「知の集積・殿堂」といえばは大英図書館(約1億7000万資料)であり、世界初の『ブリタニカ百科事典』(1768年創刊~)であろう。同事典110人のノーベル賞受賞者、5人の米大統領を含む4千人の寄稿者で作った、いわば知の巨大なアナログアーカイブだった。
 
アルトマンCEOはGoogle検索とは全く異なったクールなシステムの「チャットGPT」を作った。チャットGPTの「大規模言語モデル」はテキストデータは約 570GB(ギガバイト)、パラメータ数は約 1750億個 を自己学習(ディープラーニング)する「大規模言語モデル」で、これを世界最速のスパコンであらゆる対話、質問に対して、即座に人が書いたような滑らか文章、言葉で答えてくれる非常に安価なAI(人工頭脳)人型ロボットの誕生である。
初期のインターネット、Googleの登場は「知識の民主化」をもたらしたが、今回のチャットGPTの登場は誰にでも対話して答えをまとめてくれる」「知恵の民主化」を一層加速させるものだ。既存の政治、経済、社会、教育システムを根本から変えることは間違いない。
 
日本は「失われた30年」で「国民一人当たりGDP」は世界28位にまで落ち『貧しい国」なった。その原因は経済成長の原動力である日本のデジタル競争力は22年度で63か国中29位に転落したため。この逆転突破力に「チャットGPT」が期待されている。
ゴールドマン・サックスは最新のレポートによると、世界で約3億人分の仕事が生成型AIの影響を受ける可能性があると推定。世界の仕事の18%が自動化される可能性があり、新興市場よりも先進国の方が大きな影響を受け るとみている。
また「フォーブス日本版」(4月3日版)
https://forbesjapan.com/articles/detail/62090
によると、「① (米国の)1 農業、鉱業、製造業の仕事は生成型AIの影響を最も受けにくい。
②情報処理産業の仕事の「プログラミングや文章作成のスキル」はChatGPTの能力と近いため、最も影響を受ける。
➂15年以内に「ニュースの90%が機械によって書かれるようになる」と予測する。果たして「チャットGPT」が日本の救いの神となるのかどうか注目される。

 - 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
世界リーダーパワー史(933)ー『ウォーターゲート事件をすっぱ抜いてニクソン大統領を辞任に追い込んだ著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏が 今月11日に発売するの最新作「Fear;Trump in the White House」(恐怖─ホワイトハウスの中のトランプ)」の抜粋』★「トランプ大統領の無知な暴君、裸の王様の実態を完膚なきまでに暴露』

世界リーダーパワー史(933)  著名米記者の「トランプ本」が暴露 「 …

no image
『昭和史キーワード』終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「1億総ざんげ」発言の「 戦争集結に至る経緯,並びに施政方針演説 』の全文(昭和20年9月5日)

『昭和史キーワード』 終戦直後の東久邇宮稔彦首相による「1億総ざんげ論」 (戦争 …

no image
速報「日本のメルトダウン」(522)「八方ふさがりの日米関係」(英エコノミスト誌)『日本の国防:過去を振り返るな」(同誌)

 速報「日本のメルトダウン」(522)     ● …

no image
野口恒のインターネット江戸学『江戸から学ぶウェブ社会の活力②江戸は日本人が最も旅行した時代

日本再生への独創的視点<インターネット江戸学連続講義>   『江戸から …

no image
知的巨人たちの百歳学(175)記事再録/『一億総活躍社会』『100歳元気社会』のシンボル 「 医師・日野原重明(103)、漢字学者 白川静(96)に学ぶ」

    2015/11/05知的巨人たちの百歳学( …

no image
『 地球の未来/世界の明日はどうなるー『2018年、米朝戦争はあるのか』③『歴代米大統領がこれまで米朝戦争に手を出さなかった理由』★『「選択肢は予防戦争しかない」―米外交誌「ナショナル・インタレスト」の衝撃レポート』★『ジョセフ・ナイ教授は「キンドルバーガーの罠」について警告』

『2018年、米朝戦争はあるのか』③ 『アメリカ国内の米朝戦争への危機感は日本よ …

no image
『2018年「日本の死」を避ける道はあるのか―日本興亡150年史』(1)前坂俊之 (静岡県立大学国際関係学部名誉教授)

  ★『2018年「日本の死」を避ける道はあるのかー ―日本興亡150年史』(1 …

no image
<2018年は明治維新から150年 >「目からウロコの明治裏面史(1)」日本の運命を決めたドイツ鉄相・ビスマルクの1言『大久保利通の「富国強兵政策」はこれで決まった』

2018年は明治維新から150年 目からウロコの明治裏面史(1) 日本の運命を決 …

no image
速報(99)『日本のメルトダウン』(小出裕章情報2本)『東京都下水汚泥施設での放射性廃棄物』『上関原発のやらせ』

速報(99)『日本のメルトダウン』   ●(小出裕章動画情報2本) 『 …

no image
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < アメリカ・メルトダウン(1058)>『弾劾か刑事訴追か、泥濘にはまったトランプ 息子までロシアと接触、次は周辺から逮捕者の可能性』★『トランプ長男、ロシア疑惑の動かぬ証拠を自らツイート』●『トランプ「支持率最低」政権の深刻すぎる前途 就任半年で政策動かず、ロシア疑惑が重し』★『「大惨事」もありえる米議会のヤバすぎる状況 大事な夏休みも短縮する勢い』●『 四面楚歌のトランプ、弾劾は時間の問題か 全米で次々提訴され、ロシアゲート捜査は核心に迫る』

★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < アメリカ・メルトダウン(1058) …