前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「75年たっても自衛権憲法を全く変えられない<極東のウクライナ日本>の決断思考力ゼロ」★「一方、ウクライナ戦争勃発3日後に<敗戦国ドイツ連邦議会>は特別緊急会議を開き、防衛費を2%に増額、エネルギーのロシア依存を変更した」★『よくわかるオンライン講座/日本国憲法制定真相史②』★『東西冷戦の産物として生れた現行憲法は・・わずか1週間でGHQが作った憲法草案 』

   

日本リーダーパワー史(356『東西冷戦の産物として生れた現行憲法」
『わずか1週間でGHQが作った憲法草案 ③
 
 
前坂 俊之(ジャーナリスト) 
 
 
 
③ 13日、日本側にGHQ案を提出、驚愕する日本政府
 

ドラマの第2幕はここから始まる。 13日午前10時から外相官邸で、憲法問題についての両者のトップ会談が開かれたが、この日は日本側に憲法制定をはじめて知らされた最も重要な日となった。

米国側はホイットニー、ケーディス、ロ-ウエル、ハッセーの4人が出席、日本側は吉田外相と松本国務相、それに白洲次郎終戦連絡事務局次長と外務省通訳官・長谷川元吉だった。日本側は8日に「憲法改正要綱」と「説明書」をGHQに提出しており、この日はてっきりその見解を聞く会合と思っていた。

 
官邸の広場にイスを設けてあり、太陽を背にして座ったホイットニー准将はタイプした草案数部を机の上に差し出して、厳しい表情で告げた。
 
「先日、提出された草案は民主主義の文書としては受け取るわけにはいかないと最高司令官は拒否された。ここに日本側の情勢に合致した案をわれわれが作成し、最高司令官は日本側に手渡すように命じられた。この文書について討議する前に、十分な読む時間を与える」といって庭に出て散歩に行った。
 
予期していなかった憲法草案の突然の提示に日本側は驚愕した。松本国務相、吉田外相らはおそるおそる頁をめくると、天皇はシンボルであるとか、戦争放棄とか、一院制などという条項にダブルショックを受けた。
 
しばらくして戻ってきたホイットニーは再び宣言した。
 
「皆さんもご存知のように最高司令官は、天皇を戦犯として取調べるべきだという他国からの強い圧力に対して、天皇を護ってまいりました。
 しかし、最高司令官といえども、万能ではありません。この新しい憲法の諸規定が受け容れられるならば、天皇は安泰になるでしょうし、日本が連合国の管理から自由になる日が早くなると考えます。日本政府に押しつける気持ちはありませんが、改正案を速やかに提出されることを切望します」
 
この時「もし受け入れなければ天皇の身体について重要な変更をせざるを得ない」との脅迫的な言辞(!?)があったと松本は証言している。ホ准将やGHQはそれを否定しているが、日本側はとにかく茫然自失の状態となった。
 
 特に、松本国務相は「軍備がもてないことや、天皇が象徴である点など左翼的な内容は全く受け入れがたい。総司令部に再考を求めたい」と激しく反発して、受け入れることはもちろん、検討することさえも拒絶反応を示した。
 
このため、日本政府の戸惑いと驚き、憲法草案の取り組みについて終戦連絡事務局参与・白洲次郎が15日、釈明と再考を求める手紙を書いてホイットニーあてに出した。世に言う「ジープ・ウェイ・レター」である。16日にホイットニからは拒否の返事があった。
 
18日、こんどは松本が「一国の法制度はそう変えるべきものではない。もし根本的な過激な憲法改正が、いま突然に行われれば穏健な人々にもはげしい衝撃を与え、民主主義そのものに反対の態度をとらせる」という内容の長文の『憲法改正についての補充説明書』を書いて総司令部に提出した。
 
ホイットニーは「再考の余地は全くない」と「説明補充」を拒絶し、GHQ草案を受入れるかどうか「48時間以内(20日正午まで)に回答がなければ総司令部案を発表する」と一層きびしい態度で迫ってきた。
 
窮地に追い込まれた政府は19日になって閣議の席で、はじめてGHQ草案の提示があったこと、その内容について松本国務相から各大臣に報告させた。政府の対応は後手後手に回り、13日に示されGHQ案は、翻訳もせず6日間も棚ざらしにして、この間、閣僚にも一切知らせず論議もしていない状態で、GHQ側の強硬姿勢を完全に見誤っていた。
 
閣議ではGHQ草案を何とか拒否して、明治憲法を継続したいという腹の松本が自説を主張して譲らず、同じ考えの吉田らの保守多数派と、受け入れやむなしとする幣原、芦田らで意見は真つ二分となってまとまらなかった。
 
とりあえず、回答期限を22日まで延長するようにGHQに要請し、幣原首相が再び、マ元帥にアドバイスを求めることになった。
 
21日、幣原首相と会見したマ元帥は「極東委員会では天皇を戦犯として追及するとか、聞くに堪えないきびしいしい意見が続出している。自分は天皇制を維持したいので、できるだけ早く憲法の基本原則を受け入れてもらいたい」と語った。
 
幣原が憲法の基本原則とはとはと尋ねると「天皇を象徴にすること。もう一つは戦争放棄であり、あとはこの案通りしろということではない」と答え、幣原はもはやGHQ案を変えることは難しく、妥協も望み薄だと判断した。
 
22日の閣議で幣原首相はマ元帥との会見の詳細を報告して、再び全員で議論となったが、「マ元帥の2つの原則に沿っていかないと、どういうことになるかわからぬ、もっと大きいものを失う恐れがある」との意見が大勢となり、内閣としては『ほとんど煮え湯を飲まされた』気持ちだが、GHQ草案にそった日本側案を作成する方向でやっと衆議一決した。
 
同日、天皇に報告するために、幣原首相は吉田外相と楢橋書記官長を伴って参内したが、天皇も「やむを得ない、天皇の大権については顧慮せずともよい」と了承された。
 
26日の閣議でGHQ草案に基づく日本案の起草が決まり、案文は松本国務相、佐藤達夫法制局第一部長、入江俊郎法制局次長らが作成することになった。この日、米国ワシントンでは極東委員会の第1回会議が開かれ、ソ連、オーストラリア、英国などは天皇制廃止を主張、共和主義的な憲法をつくろうという意見が各国から出ていた。
 

こうして日本政府は、GHQ案に沿った憲法を作成する方針を決定すると、26日に松本国務相、佐藤達夫法制局第一部長、入江俊郎法制局次長らが案文の起草にとりかかり、3月2日に脱稿したが、総司令部から矢の催促で「こちらと一緒に翻訳しながらやろう」と言われて、英訳せず日本語のままのものを4日に民政局に提出することになった。 これが「3月2日案」である。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本敗戦史(44)「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』の内幕<ガラパゴス日本『死に至る病』東條首相誕生の裏側➂

日本敗戦史(44) 「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』の内幕 <ガラパ …

★5日本リーダーパワー史(778)『アジア近現代史復習問題』 小村寿太郎のインテリジェンス②ー『なぜ、日清戦争は起きたのか』●『朝鮮は日本の生命線、今ならまだ北からのロシアの侵略が朝鮮半島に伸びておらず、イギリスの南からの魔手もまだだ、問題は清国でその屋台骨は腐朽しており、将来のアジア人のアジア繁栄のためには、日清が堅く提携せねばならぬが、清国がこんなに脆弱では困る。速やかに目覚めさせる必要がある』

★5日本リーダーパワー史(778)ー 『アジア近現代史復習問題』 小村寿太郎のイ …

no image
<まとめ>『坂の上の雲』の主人公―名将・児玉源太郎を研究せずして『日露戦争勝利』を知ることはできない。

<まとめ>児玉源太郎について   ―『坂の上の雲』の主人公― 明治陸軍 …

no image
片野勧の衝撃レポート(46)太平洋戦争とフクシマ⑲ 『なぜ悲劇は繰り返されるのかー原発と闘った男たち(下)

   片野勧の衝撃レポート(46) 太平洋戦争とフクシマ⑲『 …

長寿学入門(219)ー日本ジャーナリスト懇話会(2018/3/23)で『60,70歳から先人に学ぶ百歳実践学入門』を講演『私の調査による百歳長寿者の実像とは・・』★『「生死一如」-生き急ぎ、死に急ぎ、PPK(ピンピンコロリ)をめざす。』

日本ジャーナリスト懇話会  2018年3月23日 『60,70歳から先人に学ぶ百 …

no image
速報(144)『日本のメルトダウン』☆『欧州債務危機が大恐慌引き起こす恐れ=ソロス氏』

速報(144)『日本のメルトダウン』   ☆『欧州債務危機が大恐慌引き …

no image
★『2018年(明治150年)の明治人の歴史復習問題』-『西郷どん』の『読めるか化』チャンネル ➂<記事再録まとめ>◎『山県有朋から廃藩置県(史上最大の行政改革)の相談を受けた西郷隆盛は「結構です!」と一言の基に了承し、即実行した』◎『西郷の大決心を以て事に当たったからこそ 用意周到、思慮綿密なる大久保や木戸の危んだ 廃藩置県の一大事を断固として乗り切ることができた。 西郷こそは民主主義者である(福沢諭吉の言葉)』③

 ★『2018年(明治150年)の明治人の歴史復習問題』- 『西郷どん …

「パリ・ぶらぶら散歩/ピカソ美術館編」(5/3日)⑦『ピカソが愛した女たちー画家の精力絶倫振りは、超弩級、地球人とも思えません。

『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(111)』   「ラ …

no image
速報(385)『日本のメルトダウン』◎動画『今年の経済見通しーロバート・フェルドマン 』● 『浜矩子同志社大学大学院教授』

速報(385)『日本のメルトダウン』   ◎『「どうでもいい存在」から …

no image
日本メルトダウン脱出法(782)「日本は蘇るか? 経営者が知っておくべき「経済の新潮流」●「外国人観光客に勧められない!東京「7大ガッカリ」観光地が判明」●「外国人が驚く!ニッポンの「鉄道作法」10選 日本の「常識」は海外からみると「ガラパゴス」

  日本メルトダウン脱出法(782)   日本は蘇るか? 経営者が知っ …