前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

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『オープン講座/ウクライナ戦争と日露戦争➅』★『英国の歴史家H・G・ウェルズは「日本国民はおどろくべき精力と叡智をもって、その文明と制度をヨーロッパ諸国の水準に高めようとした。人類の歴史において、明治の日本がなしとげたほどの超速の進歩をした国民はどこにもいない。』★『日露戦争』は川上操六プロデューサー、児玉源太郎監督、主演は川上の薫陶をうけた情報参謀の福島安正、柴五郎、明石元二郎、海軍は山本権兵衛、東郷平八郎、秋山真之らオールキャスト

   

 

   日本リーダーパワー史(842)記事再録

978-4-7593-1555-4

このほど、「世界史を変えた『明治の奇跡』(インテリジェンスの父・川上操六のスパイ大作戦、海竜社 2200円+税)を出版した。

私が川上操六に注目したのは2011年の3、11の福島原発事故からである。

3,11原発事故は巨大地震による自然災害だけでなく、原発をクリーンエネルギーとみて津波防護壁の高さ、その他のリスク管理を怠った人災事故の面が強く東電、政府、原発専門家、国民をふくめた一大国家的失敗、リスクコントロール不全であった。

この国難、国家リスクに対して、日本政府の司令塔はリーダー不在で迅速な対応が出来ず、情報の混乱と各省庁のバラバラの対応、国民への情報発信不足で、国も国民も右往左往する混乱と対応ミスが長く続いた。

また、これとほぼ同時期に、周辺国の中国、北朝鮮、韓国との尖閣諸島の帰属問題、拉致問題、従軍慰安婦問題など歴史認識ギャップの対立と紛争がエスカレートして国民に2重3重の不安を恐怖をかりたてた。

このような『日本のダッチロール』、国難に対して歴代リーダーはどのように対応したのだろうかーという問題意識が私の中に芽生えた。

  • 国難を突破したトップリーダーとは一体誰だろうか。

  • そのリーダーパワー(指導力)とは、国難突破力とは一体何か、

明治以降の歴史リーダーパワーを調べて、わがブログにコツコツ書いてきて、連載はすでに800回を超えた。

この過程で川上操六の存在が大きくクローズアップされてきた。来年2018年は明治維新から150年の節目の年である。

「泰平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船)たつた四杯で夜も眠れず」【狂歌】

の通り、4隻の黒船到来で慌てふためいたリスク管理ゼロの徳川幕府はつぶれてしまう。これが幕末・明治の国難第一号であり、西郷隆盛、大久保利通ら薩摩藩、長州藩らの志士たちの活躍で明治維新が実現する。

その後、明治新政府は「富国強兵」「殖産振興」の長期国家戦略を組んで、日清戦争(明治27-8年)、日露戦争(明治37-8年)に勝利して、先進国の仲間入りを果たした。1920(大正9)年には国際連盟で常任理事国4か国(イギリス、フランス、日本、イタリア、アメリカは孤立主義から加盟せず)のポストに座った。すでに100年以上も前のことである。

18,19世紀の欧米各国によるグローバリズム(帝国主義、植民地主義)に対して、軒並み植民地化されたアジア、中東、アフリカの有色人種各国の中で、『世界史の奇跡』を興して、唯一独立を守り通したのが<明治日本>なのである。

 H・G・ウエルズの『世界史』やアーノルド・トインビーの「歴史の研究」の中で『明治日本の躍進は世界史の奇跡である』として賞賛しているが、肝心の日本は自国の歴史を知らず、自画像を喪失し「歴史忘却病」に陥っている。

H・G・ウェルズは「日本国民はおどろくべき精力と叡智をもって、その文明と制度をヨーロッパ諸国の水準に高めようとした。人類の歴史において、明治の日本がなしとげたほどの超速の進歩をした国民はどこにもいない。

1866年(慶応2年)の日本は、まだ極端なロマンチック封建主義の、荒唐きわまる漫画のような中世の国民にすぎなかった。それが1899年(明治22年)には完全に西欧化して、最も進歩したヨーロッパ諸国と同列に立ち、ロシアよりも進んでいるのである。

アジアは絶望的にヨーロッパから立ちおくれて、もう取り返しがつかぬという考えを、日本は完全に吹きとばした。日本に比較すれば、どんなヨーロッパの進歩でさえも、まどろこしくて試験的だったと思える。

……その上で日本は帝政ロシアとの戦争(日露戦争)で、アジア史に一エポックをつくり、ヨーロッパの尊大傲慢な態度に終止符をうった」(『世界史』(1920年)と高く評価している。

明治維新を達成した西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允の『明治傑』は

明治10年の西南戦争で西郷が自決、大久保はその後暗殺され、木戸も亡くなり一斉に歴史の表舞台から消えた。その後は条約改正をめぐる外交問題と、朝鮮をめぐるロシアと清国(中国)との対立、紛争が延々と続く。

明治政府は清国、ロシアの国力、軍事力を恐れて、その後延々と15年にわたり日・中(清)・朝の3カ国の対立、2度の朝鮮の日本公使館焼き討ち事件、紛争が激化して、ついに日清戦争(明治27年)が起きる。この日清戦争が明治の国難第2号といってよい。

このとき、明治天皇も伊藤内閣も、山県有朋らの元老たち、国会内の多数派の野党も一致して『日清戦争には反対』の態度だった。

 

川上が1年半にわたって弟子入りしたドイツのモルトケ参謀総長のいつも講義の最後に出る言葉は、「はじめに熟慮。おわりは断行」で、これがモルトケの要諦であった。
http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/3473.html

 

日本国難史にみる『戦略思考の欠落』 ㉑
 『日清戦争は明治天皇は反対だったが、川上操六、陸奥宗光の戦争であった」
①   「 最高指揮官は命令しなければ意思は伝わらない。命令は決心の
表現である」「 戦争は避けることばかりを考えていてはますます不利になる」(マッキャベリ)
  • 「決断力のない君主は中立に逃避して滅びる」((マッキャベリ)
  • 「統率とは統御し、指揮することである。政治集団を統率するためには、人材を集め、教育し、適材適所に配置し、人材を評価、抜擢し、組織力を発揮できるように編成する」(クラウゼヴイツ)
  • 「時は善も悪もかまわず連れてくる」(マッキャベリ)
  • 「チャンスは刻々と過ぎて行く。だから「兵は拙速を尊ぶ」(孫子)、http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/12926.htmーーーーーーーーーーーーーーーーー
  • この120年前の日清戦争前夜の雰囲気と現在の中国、北朝鮮との対立エスカレーションは全く同じものである。

4年前に日本でも「国家安全保障会議」(日本版NSC)が誕生したが、明治の陸軍参謀本部は『長期国家戦略』や『防衛政策』を調査、研究、検討、立案する唯一のセクションである。

そのトップの川上操六参謀次長は清国、西欧列強に情報将校を派遣して、実地に調査、研究、情報収集をおこない、「清国は敵ではない。一度、傲慢中国をたたいて覚醒させる必要がある」と陸奥宗光外相とタッグを組んで、明治天皇や伊藤総理の反対の意向を押し切って強引に開戦に持ち込んだのである。

川上はロシアのシベリア、満州、朝鮮、日本への侵略・膨張政策を福島原発事故のように『想定外とせず』『想定内として』部下を各地に秘密裏に派遣して情報収集と分析をかさね、朝鮮を属国として500年間支配してきた清国の反日傲慢の鼻をへし折らねば、日本の独立は危ういとの危機認識のもとに、日清、日露戦争の勝利の方程式を解いた。

日清戦争ではほぼ完全勝利をおさめたが、ロシア、ドイツ、フランスの『三国干渉』にあい「臥薪嘗胆」した川上参謀総長は『日露戦争』の準備を進めていた5年後の明治32年に急死する。その5年後の明治37年に、一大国民劇スペクタクル『日露戦争』の火ぶたは切って落とされる。

川上操六プロデューサー、児玉源太郎監督、主演は川上の弟子たち、薫陶をうけた情報参謀の福島安正、柴五郎、明石元二郎、海軍は山本権兵衛、東郷平八郎、秋山真之らオールキャストであり、奇跡の日本躍進物語である。

戦争がいいの、悪いのと論議は尽きないが、戦争に勝った国は栄え、負けた国は滅びる、それは人類文明の『生存競争』の歴史であり、各国の興亡史でもある。

もし、川上がいなければ、日本の明治の興隆、大発展はなかった可能性は高い。なぜなら、明治天皇、伊藤博文、山県有朋ら元老らの反対を押し切って「川上操六と陸奥宗光(外務大臣)がタッグをくんで、先制攻撃に踏み切ったから」である。

とは言えないが、日清戦争はズルズル決断できずに起きなかった可能性は高いのではないかと思う。

川上のインテリジェンス(知性、智慧、智謀、スパイ、諜報、謀略、軍事探偵なども含む概念)を知ることは、明治の奇跡を解く重要なキーワードである。

ところが汗牛充棟の明治の発展の原動力、日清、日露戦争本や明治の軍人伝、戦略本を探しても、川上についての単行本は70年前の徳富蘇峰著「陸軍大将川上操六伝」(第一公論者、昭和17年1942)の1冊だけで、戦後は全く無視されているのか、これ以外には出版されていない。

これこそリーダー、歴史研究者、国民のインテリジェンスの欠如を示すものと思い、資料の少ない中で取り組んできた。まだまだ不十分きわまるが、続編で補充するつもりである。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

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