『2022年はどうなるのか講座(下)/2022年1月15日まで分析)』★『コロナエンデミックから世界大変動の第2幕へ』★『2022年も米中覇権争いは続く。』★『日米戦争80年目の教訓』★『無責任な近衛首相の辞任!』★『CO2とEV世界戦の2022年』★『』出遅れる日本勢は大丈夫か?
前坂俊之(ジャーナリスト)
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22年も米中覇権争いは続く。
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「米民主主義国グループ対強権的中国独裁共産党政権、ロシア、独裁国との熾烈な競争の第2ラウンドに突入した。米国は大統領選の中間選挙が11月にあり、バイデン民主党政権は内部対立もあり一部に敗北の予想も出ている。
一方、中国の政治日程は2月に北京冬季五輪、10月には5年に1度開催の第20回中国共産党大会が開催される。ここで習近平国家主席の三選(15年間)が実現し永久国家主席なるかどうかが注目される。
習近平氏は自らの輝かしいイメージを世界に誇示したい一心なので、この1年は国際情勢のある程度の安定を模索するとみられています。
しかし、香港についで台湾に対する中国の軍事的挑発行為は2年近く続いており、この相手を威嚇、罵倒、脅迫する伝統的な中国式行動は今後とも収まることはないでしょうね」。
「そんな中、1月3日、米国、中国、ロシア、英国、フランスの核保有5大国の首脳は「核戦争に勝者はなく、決してしてはならない」と明記した核戦争防止をうたう異例の共同声明を発表した。核兵器禁止条約が1月22日で発効1年となるが、米国・中国・ロシアなどが核軍縮に逆行しているとの批判が強まっていることを意識したものとみられる。
1985年に当時のレーガン米大統領とソ連のゴルバチョフ共産党書記長の「核戦争防止の共同声明」に次いで2度目の声明となった。バイデン大統領の巧みな外交戦術といえるね。一方、昨年12月27日の日中防衛大臣のテレビ会談で長年の懸案だった偶発的衝突回避に向けての「ホットライン」が22年中にも開設する方針で一致したというのは朗報だよね」
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日米戦争80年目の教訓
「昨年の12月8日は太平洋戦争勃発の真珠湾攻撃から80年目でした。日本は国力が10分の1以下のなのになぜ覇権国米国と無謀なる戦争に踏み切ったのか、日本の失敗を知ることは将来への歴史的教訓になりますね。政治家、軍人のトップリーダーの不見識、誤断、無責任、陸軍、海軍の対立、分裂、戦略不全、科学技術、デジタル技術、暗号技術などのインテリジェンス不全など様々な複合要因があります。この欠陥が、今回の「コロナ敗戦」「デジタル敗戦」にもつながっていますね」
「真珠湾攻撃への道はといますと、1940(昭和15)年9月27日、日独伊三国同盟の締結調印から始まっています。この日、山本五十六連合艦隊司令長官は、親友に「内乱(陸海軍の相克)では国は滅びないが、戦争では国が滅びる。内乱を避けるために、戦争に賭けるとは、主客転倒だ」と怒りをぶつけている。日米戦争を危惧した近衛文麿首相は山本を招き会談した。山本は「日米戦争をぜひやれと言われれば、初めの1年や1年半は、存分に暴れてご覧に入れます。しかし二年、三年となっては、ぜんぜん自信はありません。日米戦争の回避に努力を願いたい」と申し出たといいます。
もともと、山本は米国の駐在武官5年以上の経験があり、米国の国力を一番よく知る海軍軍人だった。山本海軍次官は、米内光政海軍大臣、井上成美軍務局長とトリオを組んで60-100の国力差のある米国との戦争は絶対反対」を唱えていたのです」。
「山本は最高のインテジェンスをもった軍人だった。海軍記者クラブ「黒潮会」で「陸軍のバカどもにも困ったものだ。南も討て、北も討てと騒ぎ立てるが、だれが戦うのか。米英日の海軍力比率は、五・五・三の比率で、対米英戦となれば、一〇対三の戦いになる。こんな簡単な算術さえ奴らには分からんのだ……」と激怒していたといいますからね」。
「三国同盟締結後、英米は日本への経済封鎖を一層強化した。 1941年7月の日本軍の南部仏印進駐(ベトナム進駐)に対してルーズベルト大統領は日本資産の凍結,石油の全面禁輸を行いABCD包囲網(米英中蘭)を引いた。日米外交を打開したい近衛首相はルーズベルト米大統領との首脳会談を申し込んだが、米側は「中国からの撤退」を要求し、実現しなかった。石油の全面禁輸がつづけば、あと一年で石油が底をつく土壇場に追い込まれた結果、窮鼠猫をかんだわけだ、情けないね」
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無責任な近衛首相の辞任!
「戦争か、外交か、撤退か‥」―行き詰った近衛首相は十月十二日、豊田貞次郎外相、東條英機陸相、及川海相を招き、荻外荘会談を開いた。戦争に反対の及川海相は、和戦の決を総理に一任した。ところが、最高責任者の近衛は「戦争は私には自信がない。自信のある人にやってもらいたい」と発言。「戦争に自信がないとは何ごとですか」と東條は怒り、同十四日には「撤兵は絶対にしない」と答え、「人間、たまには清水の舞台から目をつむって飛び降りることも必要だ」と優柔不断ま近衛をののしった。近衛は万策尽き果てて十六日朝、政権を投げ出したいうわけで、全くもって情けないトップ連中ですよ」。
「次に指名されたのは東條英機・開戦内閣です。『昭和天皇独自録』によると、昭和天皇、木戸幸一内大臣は東條を高く評価しており、昭和天皇の「御前会議の決定を白紙還元せよ」という聖慮を実行できるのは彼しかいないと決定したのです。東條には全く予期せぬ首相指名だったので、震えあがったといいますね。こうしてトップの誤判断と「責任回避」と「先延ばしの政治」によって誰もが望まぬ日米戦争に流されていったのです」
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CO2とEV世界戦の2022年
「今度はテーマを地球環境問題に移しましょう。世界の潮流は脱炭素社会、グリーンエネルギー、ガソリン車からEV(電気自動車)へと大きくカジを切っていますね。
中でも環境重視の欧州連合(EU)はCO2の排出ゼロと電気自動車(EV)普及の戦略プログラムで主導権を握って、世界をリードしている。
19年に欧州グリーンディールを発表、二酸化炭素などの排出を実質ゼロにす気候変動対策をまとめた。20年末には「クタソノミー規制」(持続可能性に貢献する経済活動)を成立させた。これは26年以降、「ゼロエミッション車」(大気汚染物質、CO2を排出しない車)以外の車を「SDGs(サステイナブル投資」の対象から外す規制です。
この結果、ガソリン車、HVの比重が高い日本自動車関連企業は「環境に配慮しな企業」のイメージ与え開発費の資金調達ができず、株価下落のリスクが高くなる可能性も出てきています。
EU経済の屋台骨を支えるのはドイツの自動車産業(雇用者数は全体の20%)であり、将来導入が検討されている国境炭素税など含めた「温暖化対策」は「EV保護主義政策」の裏返しではないかとの批判が出ている」
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出遅れる日本勢は大丈夫か?
「EV市場の将来を予測する週刊「エコノミスト」(2021年9月7日付)の「EV世界戦特集号」によりますと、2035年に世界の主要市場で販売される電気自動車(EV)は約5000万台と見込まれている。そのうち最大はEUで35年にはガソリン車の新車販売を禁止し、EV車2200万台の販売を見込む。2位は中国で1950万台で新車の50%をEVに、残りをHVとする。3位は世界制覇をもくろむテラスの米国で2030年に新車の50%をEVにして900万台の販売を見込む。一方、日本は中国と欧米を動向を両にらみするスタンスで30年代の半ばに新車をEVやHV化するが、その比率についてはまだ未定といい、EVの普及では世界のEVレース1,2周回遅れの状態です」
「日本メーカーではホンダが脱ガソリンを明言しているが、トヨタは水素自動車に特化して、高性能、汎用性の高い燃料電池FCシステの開発に成功し、長距離トラック、大型タンカー、電力設置型の幅広い用途に向けの水素発電の独自戦略をとっている。
しかし、現段階で、米電気自動車(EV)最大手「テスラ」と「トヨタ」とを比較してみると、テスラの時価総額はすでに世界一の118兆円、トヨタは34兆円とすでに3倍先を走っている。トヨタの販売1台あたり利益は25万円、テスラは73万円でその差は大きく開いている。.
ますます加熱するCO2排出削減、EV世界戦で日本の戦略は相変わらず不在のままで、土壇場で漂流している。官民一体で取り組まなければ日本経済のエンジンは失速するばかりではないか」
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21世紀サステナブル哲学のオードリー・タン氏
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「では最後にポストコロナの新しい哲学は芽生えているのかを考えてみたいと思います。コロナ騒ぎの中で最も注目された人物の1人が台湾のコロナをうまく抑え込んだデジタル大臣のオードリー・タン氏(35歳)でしたね。タン氏は知能指数が180以上で、独学でコンピューター・プログラムを勉強して、16歳で会社を設立。巨額の富を得て、2014年後半に、台湾のデジタル大臣の逆メンター相談役に抜擢された。「逆メンター」とは若い方が年配の方にアドバイスをする役割ですね。
「2014年7月、馬総統時代に、政府は若い人の声をもっと聴くべきとして、35歳以下の「若者顧問会議(26人)」が創立した。メンバーとなったタン氏のデジタルスキルが高く評価され、2016年には蔡英文政権下のデジタル担当大臣に指名された。タン氏は「徹底的な透明性」を理念に掲げており、あらゆる情報をインターネット上に公開することで「政府、首相、大臣、政治家、官僚などが何をやっているか、考えているを知ることができる「情報公開」、「徹底的な透明性」、「見える化」の「社会信用システム」を作り「人々が国家の主人公になれる」とのビジョン(共有経済)を掲げている。これは未来のインターネット民主主義社会の見本になるのではないか」
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人新世の『資本論』」の著者、斎藤幸平氏
「もう1人りはベストセラー「人新世の『資本論』」の著者、大阪市立大准教授の斎藤幸平氏です。彼は地球環境危機と格差拡大を解決策として、資源利用を減らす脱成長経済への転換を求めている。EU・国連が主導する脱炭素、再生可能エネルギーやEV(電気自動車)へシフトする「緑の資本主義」は逆に新たな地球の環境破壊を招くと反対している。増える一方の車削減や労働時間短縮、地方分散、女性・子供の権利の拡大、車優先の町づくり転換する。これまで地球破壊、経済成長優先、金儲け主義の株式資本主義から180度転換し、人々の「幸福追求型」の公益資本主義を提案しています。
この基本となるのが「コモン」 (共有財)の領域を拡大して、商品を過剰に消費するのをやめ、水や電気、住居など人間の生活必要なものを自分たちで共に創る「共有財」としてい「競争型」社会から「共創型」社会へシステムチェンジする思想です。
水、電力、交通、教育、農業の市民運営のほか、食肉税や炭素税など環境負荷が高い活動へ課税し「ウェルビーイング」(心身の幸福)を指標に、誰もが能力を発揮できる社会の実現を目指すというもので(毎日新聞1月14日付)でZ世代から注目されている」
つづく
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