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<イラク戦争とメディア> 『グローバルメディアとしてのアラブ衛星放送の影響』―アルジャジーラを中心に(下)ー

   

静岡県立大学国際関係学部紀要「国際関係・比較文化研究第2巻第2号」〈2004年3月〉
 
『グローバルメディアとしてのアラブ衛星放送の影響』―アルジャジーラを中心に(下)ー
                                             
  静岡県立大学国際関係学部教授 前坂 俊之
 
第5章   イラク戦争突入へー攻撃されるアルジャジーラ
第6章   おわりに
 
 
   アラブ衛星メディアの報道―アルジャジーラの場合
 
一方、『アルジャジーラ』はイラク戦争をどう報道したのか。今回のイラク戦争では,アルジャジージーラの独壇場だったアフガン攻撃とは違って、アラブの衛星各局も取材体制を大幅に強化した。
 
『アルジャジーラ』はイラク国内にバグダッドに12人、バスラ、モスル、クルド人自治区などに計約30人もの記者を配して、さらにクウェートから記者1人が米軍の従軍取材にも参加して、イラク側から戦争の実態を複眼的に放送した。アルアラビアは開戦1か月前に開局したばかりだったが,それでも,記者9人,スタッフ12人をイラクに配置した。またアブダビテレビは記者7人,スタッフ20人を派遣した。
アルジャジーラ、アルアラビア、アプダビTVなど中東の衛星メディアは英米メディア一辺倒の視線から、逆の視線、反対の情報、多角的な視点を提供した。米英軍の発表や情報のウソを、現場からの中継や当事者へのインタビューという形でたびたび覆してみせ、戦争の実態を世界に知らせたのである。
アルジャジーラは米英軍が「ウムカスル制圧」と発表するや、そのウムカスルから生中継で「制圧された様子はない」と町の様子を伝えた。「イラクの第51連隊の司令官が降伏し、捕虜になった」という英軍の情報にも、捕虜になっているはずの司令官本人をインタビューして、「今も戦闘は続いている。これからも血の一滴まで徹底的に戦う」と言わせて情報のウソを暴いた。
 「バスラでシーア派が反フセインの反乱を起こした」という英軍の発表にも、駐在していた記者を街中に走らせてライブ中継で、「ごく小さな混乱はあったものの、今、町は平穏だ」とリポートして、英米軍の情報操作を覆した。[1]
画面の下には常時、イラク市民の死傷者数が表示され、米側の会見の際は画面を2分割して、イラクの病院内のけが人の映像を流した。
『アルジャジーラ』はバクダッドの市民の被害、子供や女性が傷ついたり、死体の映像もそのまま流して戦争の悲惨さを伝えたが、3月23日、イラク国営テレビが流した米英軍捕虜たちへの映像を世界に伝えたところ、『ジュネーブ条約違反』として米英などから厳しい反発を招いた。
米国以外のメディアは『アルジャジーラ』の映像を大きく流したが、米国内では放映を自粛する動きが相次いだ。28日には死亡した英兵二人の映像も放送するなど捕虜、戦死者の放送をめぐって批判を浴び、ラムズフエルド国防長官は「捕虜の撮影は違反だ。イラクの宣伝だ」と激しく攻撃。アルジャジーラのヒラール編集局長は「われわれは米英軍の一点ではないし、もちろんイラク政府の一部でもない。双方に起きていることを伝えるのがわれわれの使命だ」と一歩も引かなかった。[2]
バクダッドが陥落寸前の4月8日には 米軍戦車が外国メディアの陣取っていたパ
レスチナホテルを砲撃し、ロイター通信のカメラマンら2人が死亡、3人が負傷。米軍
は「カメラを銃口と見誤ったのではないか」と弁明した。
同じ日、バクダッド中心部の「アルジャジーラ」支局もミサイル攻撃を受け、タレク・アユーブ記者が死亡し、この日1日で3人のジャーナリストが犠牲となった。
また同日、アラブ首長国連邦の「アブダビテレビ」の支局も米戦車の砲撃で破壊され、「アルジャジーラ」は南部のバスラでも支局の入ったホテルに爆弾を落とされており、アフガニスタン攻撃の際にも支局が米軍から爆撃されたことなどから「意図的に狙われた可能性がある」と強く反発した。
 
「アルジャジーラ」のイラク戦争報道については、昨年8月末に、カタールの同本社訪れアドナン・シャリフ(ADNAN・SHARIF)編集長(GENERAL MANAGER)にインタビューしたが、次のように答えた。[3]
(質) 「イラク戦争報道で最も力を入れたのはどの点ですか?いろいろな記事を書 いてきましたが・・」
(答) 「いや、私たちは記事は書きません。そこで起こっているありのままの姿、真の姿を撮影していたんです。どれがスクープというわけでなく、撮ったものが全てスクープです。戦争では次に何が起きるか予測できないし、私たちの記者も危険だった。事実、特派員の一人が亡くなっています。公平性や中立性を保とうと追求し続けて、『ONE OPINIONとTHE OTHER OPINION』を報道していたので、イラクの旧政権からもアメリカ政府からも同様に脅されました。編集方針や批判精神にこだわり続けたからなんです。私たちは映像を通して信頼性を追及しているのです」
(質) 「そうやってアルジャジーラは成功したんですね」
(答) 「そうです。自分たちの一つの意見があれば、他の意見もあるというやり方がメディア界で成功する方法だと思います。真実を隠そうとしても、過去には隠すことが出来たが、今ではインターネットなど自分たち以外の媒体から情報を得ることが出来てしまう。
報道の狙いは全てのことについて正しい答えを出すこと、世界で起こっていることに関して確実なイメージを与えることです」
(質)「アルジャジーラの報道で一番大きかったものは何ですか?」
(答)「戦争報道で自ら危険を冒したこと、それが民衆に起こっていることを伝える第一人者であったこと、起こっていないことは伝えなかったこと、を誇りに思っています。私たちはニュースにはすぐには飛びつきませんでした。
例えば、放送でこんなことが起きましたと伝えて、その5分後にやはり違いました、と後悔するような真似はしたくないからです。現場に向かい100%確実だと思った事実を伝えることで報道の信頼性を追及しています。それが私たちが考える信頼性です。」[4]
 
③ アルアラビアの戦争報道
 
『アルジャジーラ』の成功に刺激されてアラブ湾岸諸国では、2003年ごろから衛星ニュース放送が増え始め、中東メディア戦争は新たな段階に突入した。
 
過激で、お騒がせな?『アルジャジーラ』の代替物として、サウジやレバノン、UAE(アラブ首長国)など各国の資本が出資し、バランス感覚のある対抗馬として、穏健なニュース局として『アルアラビアTV』(UAE・ドバイ本拠)を設立した。イラク戦争直前の2月20日ドバイから放送を開始した。[5]
さらに、『アブダビTV』(アブダビ本拠)もニュース報道枠を大幅に充実させて、『アルジャジーラ』と三つドモエで、フセイン元イラク大統領やテロの背後の存在などをめぐって、西欧のCNN,BBCなどのメディアと激しい報道合戦に突入した。
特に、24時間ニュース放送の「『アルアラビアTV』は『アルジャジーラ』の最大のライバルとして登場した。 アルアラビアでは,今回のイラク戦争を「第三次湾岸戦争」と名づけて、このタイトルが頻繁に使用。「穏健的な編集でイラクとアメリカ側情報をバランスよく伝える手法をとっている」という。[6]
私は中東メディアの動向の調査で、昨年8月31日にインタビューした『アルアラビアTV』のサラ・ナジム(SALAH NAGM)編集長(Director of News)はこう答えた。
創設の理念、編成方針については「アルジャジーラTVに対抗するつもりでスタートしたのではありません。中東のメディア・マーケットは3億人で、その半分は若者です。いくつかの戦争を経験し政治情勢も変化して、ニュースが山ほどある。中東や北アフリカでは悪いニュースだけでなくて、平和的なニュースもある。新しいニュースTV局が存在する余地があるのです。
私たちの局が力を入れているのはニュースです。中東と世界のニュースを偏らずバランスのとって分かりやすく伝える。TVの真価(TV Value)と質に力を入れており、中東では新しいことです。これまでのTV局のやり方は昔ながらのものが多いのです」
「われわれは24時間のニュースチャンネルです。毎日、15、16時間はニュースだけを流しています。一番大切なことは、視聴者を引きつけて、飽きさせず、なおかつチャンネルを替えられないように。ただ単に事実を報道するのではなくて、日々の暮らしに密着した番組を届けています。それがとても大事なトピックスです」
「イラク戦争報道、視聴者の反応は」の質問に対しては、「放送始めた1週間後の3月3日にイラク戦争が始まった。技術的な準備を完全には終えていなかったので、社内外はテンテコ舞い。ただ、イラク戦争が始まることは最初から分かっていたので視聴者の関心はむしろ戦争が終わった後どうなるのか、にありました。ですから戦争報道より戦後の私達のイラク報道がアラブ地域の視聴者を獲得することに成功しました。私たちは事実だけを報道して、事実をゆがめたり誇張したり、偏見を加えて放送したことはありません。いつでも中立を保つようにしています」
「AFPの記者がイラク市民に『どこのTVの報道を見たいか』とインタビューしたところ『真実を知りたければアラブのチャンネル、例えばアルアラビアを見るといい』と言っていた。この街頭インタビューはやらせではなくて、本物です。マーケットシェアは発表できませんが、大きなシェアを持っているはずです。アルジャジーラTVによると8千万人の視聴者がいることになっており、とにかく、ごく短い期間にアルジャジーラに匹敵する放送局になったわけです」
「番組の特徴は」との質問に対して、「他TV局はニュースの歴史や背景などを報道しますが、私たちはニュースの将来的への影響力を報道します。私たちは資料フィルムを使わず、現場で撮影したフィルムを使います。私たちの報道姿勢は将来の展望を重視していますが、彼らは発生したことだけを放映しています。
アルジャジーラがそうなんです。私たちはバックグラウンドの報道はしないけれど、事件の経緯とか発生した原因、つまりなぜそのような事態が発生したのか、ということについて報道します。ショートプログラムは、画像の質、作品の質、スタジオの質、報道に携わっている人間の質にこだわった番組です。番組の内容は事実を重視し、事実に基づいたものです。『意見と歴史』の番組の最初のコラムのところは、最初のコラムのところの50分だけで、私たちは放送していません。アルジャジーラは放送しています」
 
「最近の特ダネは!」との質問には「私たちはスクープよりもニュースの質にこだわった仕事がしたいのです。スクープはスピードと取材、ロディスティックスの三拍子そろって初めて生まれるが、私たちはそのために仕事をしているわけではない。視聴者に満足してもらえるような質のよいニュースを提供したいのです。スクープは私たちの最大の関心事ではありません。私たちの取材源はどんどん広がっています。例えば、イラクの人たちがパイプラインに細工をして原油を盗んでいます。そうした犯罪組織ができているので、今、取材をしています。盗んだ原油は船で国外に持ち出しています。シリアの大統領との独占インタビューもスクープの一つです。4ヶ月前にはサダム・フセインの娘との独占インタビューもものにしました。これは皆さんが言うスクープではないかと思いますが、大きなスクープでした」[7]
2003年9月、アルアラビアは「テロをあおった報道だ」として、イラク統治評議会から「アルジャジーラ」とともに、会見取材を一時禁止された。理由は反米感情が高まっているイラク北中部地域「スンニ派トライアングル」について、「スンニ派とシーア派の対立をあおるメディアのでっちあげ。暴力や差別、憎しみをあおるメディアは容認できな」というもの。両衛星放送は「評議会の決定は報道の自由を侵すものだ。イラクで報道を続ける」などとする声明を出した。[8]
 
②  アブダビTVの戦争報道
 
 
もう1つの「アブダビTV」(本拠・UAE首都のアブダビ)は UAE(アラブ首長国連邦)の首長国メディア公社傘下のテレビ局で2000年1月に開局。アルジャジーラ、アルアラビアと違って24時間ニュースチャンネルではないが、取材網は,中東を中心に欧米、アジア,北アフリカなど20数カ所で、記者,プロデューサーなどスタッフは合計220人, 2000年1月に衛星チャンネルをスタートさせて以来、大きく組織替えをし、ニュースの時間と内容を充実させた。
これまでパレスチナ紛争、イラク戦争、テロ事件など大きなニュースが起きた場合はニュース枠を拡大して放送し、そうでない場合はニュース枠を縮小するといういわば「アコデオン方式」を採用しており、今回のイラク戦争では「フロントラインから」を統一タイトルにし、エンタテイメントなど他の番組はキャンセルし24時間、戦争関連のニュースを流し続けた。モハメド・ドラチャド副局長は次のように語った。[9]
「われわれの編集方針は、最も早く、公正な立場で、正確にバランスを保った報道をすることです。戦争報道についてのガイドラインはありません。もともとニュース専門チャンネルではないのですが、臨機応変に対応し、報道しています。最も重視しているのは、一方に偏らないことです。今回のイラク戦争について、イラク、アメリカ双方の立場に立って起こっていることを、ありのままを伝えること、いろいろな視点、多様な見方、考え方を多角的に伝えることです」
 
「アルジャジーラTVの総責任者だったアル・アリ氏の退社をどう見ていますか」の質問に対しては、次のような明快な回答があった。
「米国はアル・アリ氏を標的にして圧力をかけました。われわれが米国に行き、『CNNの放送内容はおかしい』と抗議したとしても、米国政府は『自分の知ったことではない』,『CNNには報道の自由があり、政府は介入できないと』答えるでしょう。ところが、米国はわれわれには容赦ない圧力をかけてきます。『言論の自由」を強調しながらです。米国の偽善です。
二枚舌の論理です。アル・アリ氏はそのスケープ・ゴード(生贄のヤギ)となりました。米国の主張する「自由」とは結局、自分たちのための「自由」であって、こちらの「自由」ではないのです。二枚舌です」
 
「ある日、米国人が来て、「イラクのサダム・フセインがアルジャジーラTVに金を出している」と言いました。「だれからそのような話を聞いたのか」と問いただすと、イラクの情報機関の情報だというのです。情報機関が流す情報が正しいはずがないでしょう。ところがそれをみんな信じてしまう」[10]

 

以上のイラク戦争で三つ巴で報道合戦するアラブ衛星メディアとCNN,BBCなど欧米メディアがこれに加わっての世界・アラブ・メディア戦争の色彩が一段と強くなった、今回の戦争報道だが、中東の視聴者はアラブの衛星放送のどのチャンネルを見たのか、また信頼しているのかをNHKが調査した興味深いデータがある。
それによると、[11]「どのチャンネルを一番よく見たのだろうか」との質問ではアルジャジーラ77%と圧倒的に多く、次いでアルアラビア15%,LBC、アルハヤト6%の順であった。
「最も信頼できるチャンネルはどこか」ではアルジャジーラが71%とこれまたダントツでその理由は「ニュースの正確さは歴史的な実績になっている(セールスマン26歳)」「いつも最新のニュースを一番早く伝えている(OL30歳)」「多様な意見を自由に民主的に紹介している(教員36歳)」「戦争の本当の映像を生で中継している(医師35歳)」などと評価しており、アルジャジーラは今回もアメリカ,イギリス政府ばかりでなくイラク政府からも批判を浴びたが,中東の視聴者からは高い信頼を得ているとことがわかった。
 
おわりに
 
このレポートの調査のために今回十数人のジャーナリスト、政府関係者から取材したが、いずれも米国に対してアラブに自分たちの価値観を強引に押し付けようとする態度を強く批判した。
 
アブダビ市内の情報文化省でイブラヒム・アルアベド氏(同省アドバイザー、営通信社エミレーツ・ニュース・エージェンシー総責任者)を訪ねたが、「メディアによる民主化についてどう思いますか」と質問すると、「私たちは『民主化』という言葉は好きではありません。誰かが外から価値や見解を我々に押し付けようとするものだからです。米国はアラブに民主化をもたらそうとして、これまでに2億ドルもの資金を投じた。だが全く無意味なものでした。民主化は外からもたらされるものでなく、内側から自然に生じるものだ。どんな社会でも自らの特質、文化や特有の価値を持っている。アラブのメディアは自分たち地元のあらゆる問題を取り上げ、議論している。それが民主化という念を育むのです」[12]と激昂し大声で米国を批判した。

 

今回、アラブのマスメディアを現地で調査することによってアラブ衛星メディアが欧米メディアと肩を並べるほどに急成長し、その存在感を増していることを肌で実感じた。アラブの声や世論を代表し、これまで国際的な発言権がなかったアラブ諸国で、衛星ニュースメディアを持つことによって、米国やヨーロッパのイラク、中東政策を批判、監視する武器を手にしたのであり、イラク戦争を遂行する米国にとっては目障りな存在なのである。
 
アラブ衛星メディアの代表としてアルジャジーラがターゲットにされて、米国から攻撃されていると同時に、アルアラビアなどとのメディア戦争よって、アルジャジーラ包囲網は一層狭まりつつあるな、との印象を強く受けた。
帰国後すぐ同社のスター記者・タイシ-ル・アッルー二が休暇でスペイン・バロセロナの自宅に帰郷中にスペイン警察に逮捕されたというビッグニュースが飛び込んできた。アッルー二記者(48)は『オサマ・ビンラディン』のビデオ映像をスクープし、アフガン戦争、イラク戦争で活躍した今回の戦争で最も有名な従軍記者である。
 
「アル・カイダのメンバーと接触し、資金援助したという共犯容疑」に問われたものだが、同社は「でっち上げだ」だと強く反発。しかし、アッルー二記者は起訴され、裁判が始まった。アルジャジーラ潰しがここまできたのか、と愕然とした。[13]
今回の「アルジャジーラ現象」を歴史のなかでマクロに捉えると、かつての国際情報秩序の論争に行きつく。国際的な情報の流れ、グローバルメディアについては1970年代、国連で國際情報秩序をめぐる論争が西側先進国と旧ソ連、第三世界との間で激しく戦わされた。英米などの4大通信社(AP,UPI,ロイター、AFP)が世界の情報量の大部分を牛耳っており、途上国を支配する一方的な情報を流しているという批判であった。
さらに、テレビ番組の一方的流通とその影響をめぐっても「文化帝国主義」「メディア帝国主義」の論議も巻き起こり、相互の情報の流れに変えるための「マクブライド委員会」(1980年)の提言があり、西側メディアは強く反発して、85年には米国、引き続いてイギリスが脱退して東西のイデオロギー対立がより激化した、という経緯がある。
 
その後、十数年間、世界の情報格差は固定され、依然として続いてきた面が強いが、今や、衛星放送、インターネット、IT技術の飛躍的な発展で、グローバルメディアの誕生を阻んでいた情報技術、地域格差はなくなった。西側先進国以外で初めてアルジャジーラはグローバルメディアにのし上がったが、それだけにバッシングが強くなっているのである。イラク戦争の戦闘の泥沼化、紛争激化、中東へのアメリカの軍事介入は今後も続くだけに、中東衛星メディアの動向から目を離せない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


[1] 斎藤雅俊JNNパリ支局長『イラク戦争報道の現場から』(「passing time」 no42 2003,7-8月号)
[2] 産経03年3月29日
[3]2003年8月末、中東衛星メディア調査団(団長・天野勝文日大教授ら5人)の一員として調査に出かけた。8月26日にアルジャジーラを訪問、インタビューした。前坂俊之「イラク戦争とジャーナリズム」『総合ジャーナリズム研究2004年春号』188号参照。
[4] 前坂前掲書「イラク戦争とジャーナリズム」にさらに詳細なインタビューが掲載
[5] サウジアラビア資本の衛星テレビMBC(Middle East Broadcasting Centre)が中心になり,衛星打ち上げに2億ドルを投入,レバノン、湾岸各国が資本参加。 アルアラビアは設立の理念として地域の安定と民主化を掲げ。記者などのスタッフは400人でBBCでの経験をもつジャーナリストも多い(『存在感を増す中東衛星テレビ』太田昌宏 放送研究と調査 2003年5月号)
[6] 太田前掲書『存在感を増す中東衛星テレビ』
[7] 『アルジャジーラ』のシャリフ編集長は『私たちの後にきたTV局は、アルジャジーラを倒そうとする明らかな目標を持っています。彼らはアルジャジーラの編集方針が嫌いで、彼らの多くは今もって政府のために発言しています。私たちは違います。報道の自由の限界は百%以上であり、報道の自由には天井はありません。そう言う意味で、他の局は競争相手だと私たちはみていません』と私に語った。
[8] 朝日2003年9月26日
[9]太田前掲書『存在感を増す中東衛星テレビ』「湾岸各国はアラブ各国と微妙な利害関係をもつ国が多いが,UAEはいずれの国とも良好な関係を維持している数少ない国でこの立場を生かして幅広い取材先を確保している」
[10] イラク戦争後の昨年5月、『アルジャジーラ』を立ち上げ、ここまで発展させてきたアル・アリ前編集長が突然、辞任した。イギリス紙などは「『アルジャジーラ』の記者やキャスター三人が旧イラクの情報機関と関係したいたという疑惑が発覚して、解任された」と報じていた。このアル・アリ辞任の確認も今回の中東メディア調査の1つのポイントであった。これをただすとシャリフ編集長は「その質問に答えることは出来ませんが、アリは5年の任期できており、イラク戦争も一段落したので国営カタールTVに帰っただけです」と言葉をにごした。ところが、ここで、はからずもアル・アリの辞任劇のウラを知ることが出来た。米国による「アルジャジーラ」潰しの一環だったのである。
[11]「戦争下,中東のテレビと視聴者・100人へのアンケートを中心に」太田昌宏・メディア経営部<2003年9月号「放送研究と調査」>
[12]前坂前掲書「イラク戦争とジャーナリズム」
[13] 前坂俊之『イラク戦争・メディア最前線』月刊「潮」2003年12月号参照

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