速報(94)『日本のメルトダウン』『日本の原子力発電の将来の形を決めてしまう一知事の力』『ニューヨーク・タイムズ(7/2付)』
『ニューヨーク・タイムズ(7/2)』
F国際ビジネスマンのコメント
(訳者の要約)
福一問題の痛切な経験の渦中、日本人は原発問題を全て原点から再考することを要請されている。
定期修理後の運転再開と雖も、例外では無い、安全安心を最優先に、大局、小局見落としなく、国家的、国際的な視野で考慮、検討が不可欠である、一地方知事の問題ではなく、国の指導力の問題でしょうと厳しく叱責している。
今迄、リスクを最も多く蒙る市民、一般国民の意見集約が著しく欠けている、これを根本的に解決しなければいけないと訴えている。
(訳者コメント)
⒈この記事の出された後、ストレステストの必要性が提起され、玄海町長の再開容認撤回、知事も白紙の方向となり、加えて九電の「やらせメール」問題も発覚して、運転再開問題は完全に暗礁に乗り上げている。
⒉ NYTは、日本の原子力政策が、政府、霞ヶ関、電力会社、御用学者など一部の特定集団によって隠密裏に決められ、利害得失を最も受ける一般市民、国民が不在、なおざりにされていた、と厳しく指弾し、今後はこれら一般市民、国民の意見集約を重視し、決定プロセスの中心に据えなければいけないと云っている。
⒊玄海原発の再開問題は、政府と九電のもたつきが奏功し、時間と共に、底辺の声が出始めている。時間を掛けて、民意を中心に、各セクターの声を十分に拾い、有意義な討議に繋げて行かなければならない。」
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2011/7/2 NYT by Martin Fackler
" A Governor’s Power to Shape the Future of a Nuclear Japan "
日本の原子力発電の将来の形を決めてしまう一知事の力(一知事の力で、日本の原子力発電の将来の形を決めてしまって良いのだろうか?)
佐賀、日本 ー 政治的な指導力が弱い事で悩み抜いている国日本)において、福島第一発電所の事故後、日本の原発の将来を決めてしまう重大な決断が、南方の辺鄙な県の県知事に、急に伸し掛かっている。
佐賀県知事、フルカワ・ヤスシ氏は、カン首相の要請、つまり昨年冬以来の定期修理で停止中の原子炉2基を再稼働して欲しいという、これを支持するかどうかを近日中に決めなければならない。
ここへ来て、次の様な警告が増えて来ている、もしフルカワ知事が、再開を認めなければ、他の県知事もこれに追随し、日本の全ての原子炉は、1年以内に稼働停止し、終了となる。
その理由は、日本の原子炉は法的に13ヶ月毎に定期修理の為、運転停止を要求されている。日本の54の原子炉の内、現在35基は停止している、その内のいくつかは3・11地震と津波の被害に依るが、殆どは保全修理の必要性に従っている。
それらがもしも再稼働に入らなければ、停止する最後の原子炉は来年4月になる(この時点で、日本の原子炉は全て停止する)、その結果は電力供給力の1/3が日本から失われる事になる。
修理完了して待機中の原子炉を再稼働させるには中央政府の認可が必要であるが、福島原発事故以来、認可されていない。大震災に続いて、原子力への一般市民の反発の中で、カン政府は、地方の政治的リーダー達にも、運転再開を承認する様求めている。
フルカワ氏は、運転再開を決める様要請されている最初の県知事である。この事は、彼を日本の原子力の将来に関するある種の先導者に変えている。彼の決定は、運転停止の続行による電力不足の恐怖と安全の持続の狭間で、一般市民が同様の不安をどの程度持ち続けるか推し量らなければならないその他の地方リーダー達(県知事、市長、町長、村長など)に異常な関心と注目を集めている。
” 突然大きな責任が私に課せられた様に感じます ”、とインタビューでフルカワ氏、52才、は云う。
” 原子炉の稼働再開を決定しないと、我々はドイツより早く脱原発国家に変わってしまう” と2022年迄に原発をスクラップにするドイツの決定に言及した。
ほとんどの知事は原子炉の稼働再開について、模様眺めでどっちつかずにみえるので、全ての視線はフルカワ氏に注がれている。先月、毎日新聞が報道した、原発が地元にある10の県知事はインタビューで、安全対策について、より詳細な情報が必要と、ほとんどが言いながら、原子炉の再開は支持できないと言っていた(2 人の県知事はインタビューに応じなかった)。
月曜日には、福島県知事が更に踏み込んで、福島は原発に関し経済的依存そしてエネルギー依存の面でも、終了する事を宣言した。
フルカワ氏は、7月中旬迄には決めたいと言う、再開するかどうかの決定に関し明らかに苦しそうな表情であった。水曜日、中央政府の安全対策に関する説明には満足していると言い、彼の佐賀県では原子炉の再開に傾きつつある模様であった。
佐賀県におけるこの情勢は、国の原子力の将来に関する議論の方向を決める幾つかの勢力を、明らかに一瞥させるものである。福島原発事故は海外には刺激を与えたが、日本国内では、大きな街頭デモなど殆ど見られなかった、とは言え、原子力発電に対する一般大衆の明確な激しい反発の有る事が分かる。最近、東京新聞が先月行った世論調査によれば、82%という圧倒的な多数が、原子炉の廃棄を支持している。
しかしながら、同じ世論調査の中で、殆どの回答者が、原子炉の即時停止を求めず、代替手段を見付けながら原子力発電を段階的に廃止する事を求めている。
ここ佐賀県の街中、市民の対話では、東京における意思決定者達と同様、輸入に頼る石炭、石油に替わる唯一の重要エネルギー資源を確保する為、福島事故で白日に晒された危険と資源不足国の必要性の狭間で悩み抜く国民性が良く表れている。
原子力発電の安全性について深い憂慮を抱いているが、厄介払いして遠ざけてしまう事についても強く心配している、と仙台にある東北大学で政治学者のマキハラ・イズル氏はいう。
原子炉の全てが停止すると云う見通しは、産業界や日本の強力な原子力ロビーを驚愕させた、彼等は、もし原子力発電が失われれば、経済的に最悪の結末を迎えるという警告を発した。
更に、彼等は、電気料金の値上りや、大停電も起きると警告し、今の日本の震災ショック経済に一層のダメージを与えると云う。
これ以上の原子炉の停止はここでは無いと云っても、エネルギー不足の兆しが見えてくる中で、金曜日、政府は東京の工場やその他の大口の電力ユーザーに対し、今夏の電力使用を昨年の15%カットとする様要求した。
" もし原子炉全てが止まれば、経済への影響は甚大である"と先月末 カン氏は警告した。
日本の未だ小規模の反原子力運動は、まだ一般的には左翼運動の一部と見做されているが、福島原発事故以来、信頼を勝ち得て来ている。運動家達は、深い無関心が、村八分にされる恐怖と同様に、多くの日本人達が行動に踏み切る事を躊躇させている、と零している。
多くの人々は、物陰から我々をサポートしてくれているが、彼等は、過激派と見做され嫌われることを恐れている、とイシマル・ハツミ氏、佐賀の反原子力グループのリーダーで、59才の主婦は云う。
当地では、多くの人々が云う、ここを有名にしている主な売り物が釉薬を掛けた陶器類やグルメ向けのビーフ位で、九州の南端、住民も約85万人しか居ない、田舎の県、佐賀で、何故この様な重大な決断が降りかかって来たのか、悩み抜いている、と。
その理由の幾分かは、タイミングの問題である。玄海原子力発電所、その4つの原子炉の内2つが、2ヶ月前に定期修理を完了し再スタートを待っている。残る2つの原子炉は運転中である。
フルカワ佐賀県知事は不平を洩らしている、再稼働の決断が彼に降り掛かって来たのは、日本の福島後の将来のエネルギー問題に関する明確な方針を、カン首相が示してくれないからであると。これは日本全国から聞こえてくる批判である、そしてカン氏は、重大な復興法案が国会を通過すれば首相の職を辞する事に同意している。
" カン首相は日本国政府が行うべき決定から逃げている "、とフルカワ氏は云う。金曜日に、知事は、カン氏に彼のエネルギービジョンを伺う為に会談を申し入れた。
県知事は、中央政府と地元の企業グループからこの問題の結論を急ぐ様に迫られていると、いきり立っている。
その代わりに、彼は原子力の規制当局者や発電プラントのオペ ーレーター、九州電力に対し、一層詳細な説明を繰り返し求めている。それは、当地で福島型のメルトダウンが起きない様にするにはいかにすべきか、に関する説明である。
" 原子炉の再稼働に賛成の企業グループを見いだす事は容易であるが、再稼働に反対する一般大衆の不安は、不定形で見定め難い "、とフルカワ氏は云う。
水曜日に、カン氏は経産大臣、カイエダ・バンリ氏を佐賀に派遣し、フルカワ氏に対し直接、安全対策を説明させた。先週末、原子力規制当局者は、原発プラントの安全性に関する公聴会を、ここ佐賀で開催し、その内容は、CATVやインターネットを通じてライブで放送された。
法律的には、地元の了解を得る必要性はないのだが、原子力発電に対する足許の激しい反発は、地元の了解を取らずに原子炉の稼働再開をする事を、政治的に困難にしていると、九州電力の当局者は云う。
玄海原発の運転管理者、ムラシマ・マサヤス氏は、県議会やその周辺の市議会を訪れ、九州電力の主要な安全対策の概要を説明した。福島第一発電所のプラントと異なり、玄海原発は、活断層の近くに有るわけでは無く、1000年以上の歴史の中でも、大きな津波の経験のない日本国土の一部にあると。
原発の位置する玄海町のキシモト・ヒデオ町長、は既に運転再開受け入れのサインを出している。再開容認の大きな要素は、玄海町の発電プラントへの経済的依存であることは、町長も認めている、6400人のこの町で、約1億ドル年間予算の2/3が、原発の法人税他と交付金に依存している。
" ここでは、住民の気持ちの中では、経済的な悩みの方がより大きいと思う " とキシモト氏は云う。
玄海町の住民は云う、事故が起きれば、福一原子力発電プラントの近くの住民が国に命令された避難と同様のことを、ここ玄海町でもせざるを得ない事を恐れていると。しかしながら、彼等は、町長の指示に従うしか選択の道が無い、と云う。
" 我々の生活が、原子力発電プラントと密接に繋がっている事は分かっている " とヒダカ・ヒロヨシ氏、56才、玄海町で健康物産店を経営する、は云う。" この事が、我々を沈黙の町に変えてしまっている "。
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