世界/日本リーダーパワー史(920)米朝首脳会談開催(6/12)―「結局、完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)は先延ばしとなりそう』★『米朝会談の勝者は金正恩委員長か!』(下)
2018/07/19
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結局、一番問題の非核化(CVID)についてはどうなったのか。
前坂俊之(静岡県立大学名誉教授)
「非核化の手順はまず核実験を「凍結」する。その後すべての核施設や核計画をIAEAに「申告」し施設を「解体」、核関連物資を「廃棄」し、後戻りできないかどうかの「検証」を行うというプロセスを経て、実現する。
これまでの北朝鮮のやり方は、非核化の段階を踏むごとに制裁解除や経済支援の見返りを求めくる段階的なものでしたが、これは時間がかかり、北朝鮮の核開発を許してしまった。
リビアの非核化は約1年、南アフリカの非核化も2年で完了している。今回は全面的で非可逆的な非核化をできるまでは一切の制裁解除は行わないということでスピーディーに対応していく方針だったのです。」
「非核化の実務作業は国際原子力機関(IAEA)が行い、日本側はすでに3億円規模の費用負担を示しているが、政府内には反対意見もあった。日本はこれまでに北朝鮮が非核化を約束するたび資金提供(500億円以上)を行ってきたが、約束はほごにされ、詐取されていたのです。」
「日経6月9日付によると、北朝鮮の核施設の停止作業などで20回以上訪朝したオリ・ハイノネン元IEAE事務次長は寧辺の核施設の停止作業をした経験からこう語っている。
最初の段階で北朝鮮に完全な申告リストを作らせなければいけない。核施設の稼働を停止し、モニターなどを設置して監視下に置く。そして核物質のサンプルを採取し分析する。核物質の除去や解体に移るのは、その分析結果が明らかになってから。
北朝鮮の核兵器保有数はまだ分からず、多くの人が核兵器の解体プロセスなど一連の作業の複雑さを過小評価している。貯蔵している高濃縮ウランなどの核物質を北朝鮮から運び出すことは北朝鮮の意思しだいだが、数カ月でできる。北朝鮮全体の非核化作業は最長で15年はかかるといいます」
非核化の費用は「韓国」『日本』が出すとトランプ発言
「この経費については、トランプ氏は記者会見で「韓国と日本が大いに支援してくれるだろう。彼らは支援する準備ができていて、支援しなければならないことも知っているはずだ。アメリカが支援する必要はない」と述べた。」
「非核化の費用については英投資顧問会社によるトンデモ試算があるよ、これはバカげているが、紹介すると、北朝鮮が完全な非核化を遂げた場合の費用は10年間で2兆ドル(約216兆円)、韓国、アメリカ、中国、日本が均等に負担すると試算して、4カ国が、5000億ドルずつ負担する。10年間にならすと、国内総生産(GDP)比で韓国が毎年18.3%、アメリカが1.7%、中国が1.6%、日本が7.3%の負担となる。
また、北朝鮮上層部による横領などを避けるため、資金を適正に運用する団体の設立の必要性も指摘している。こんな莫大で殺戮用の北朝鮮核開発費用をなぜ日本側が負担しなければならないのかね」
「日朝平和条約の話がすすんで北朝鮮が日本に戦時賠償を求めた場合、「対日請求権200億ドル、北朝鮮再建の『種銭』可能」(中央日報日本語版6月14日)なる記事が出ているが、これもまた韓国側のフェークニュースだね。
北朝鮮側が過度な戦時賠償を求めてきて、韓国もこれに同調するなら、日本側は拉致家族の損害賠償を請求すればよい。北朝鮮の行った大韓航空機事件やその他、日本も被害を受けた「テロ犯罪国家北朝鮮」に対する損害賠償と謝罪要求をしなければならないとおもうよ。2002年の日朝平和宣言では100億ドル水準で日本経済支援をするというのが妥当じゃないかな」
「それと、6月に産経新聞に掲載された河野洋平氏講演詳報(2)「南北分断の遠因には日本の植民地政策があった」の記事が早速「韓国中央日報」に転載され、「河野元官房長官が日本は北朝鮮に植民支配からおわびを」の見出しで取り上げられている。
私は日中韓150戦争史を研究し、なぜ日本は韓国を併合して植民地にしたのかを調べてきたが、河野氏の日韓朝の歴史認識は過去に傾いた一面的なもので、北朝鮮の被害意識を過大に評価して、この30年間の加害責任を過少に評価、大目に見ていると思う。韓国、北朝鮮メディアはこの河野発言の一部分を切り取って、大々的な反日ニュースにしているとおもう。まさしくフェイクニュースだよ。」
米韓合同軍事演習は中止する!
「ところで12日の米朝首脳会談の内幕が次々に明らかになってきているね。14日のAP通信などによると、非核化の期限についてポンペオ国務長官は「トランプ大統領の任期が終わる2021年1月までにほぼ実現したい」という。
米韓合同軍事演習については「北朝鮮との非核化交渉が行き詰まれば、軍事演習を再開することになる」とクギをさしている。」
「また、米政府の説明では米朝会談でトランプ大統領が「(北朝鮮が)完全な非核化を実現すれば経済制裁は解くが、本格的な経済支援を受けたいならば日本と協議するしかない」「拉致問題を解決しない限り、安倍首相は支援には応じない」と発言した。
これに対して、金委員長は「安倍首相と会ってもよい」とのべた。読売などによると、日朝間の協議は米朝首脳会談が浮上した今春以降、極秘で行われてきた。今回の金委員長の姿勢の転換を受けて、安倍首相は日朝首脳会談を8月か、9月に平壌や国際会議を利用して行うことを検討しているという。状況は大きく動きだしたのです」
トランプ大統領が6月12日に首脳会談を急いだ理由は何なのか
(「米朝会談を急いで6月12日に実現したのは、歴代大統領がやれなかった朝鮮戦争の終結を実現し、あわよくばノーベル平和賞を獲得したいという名誉欲と首脳会談実現の業績をアピールして11月の中間選挙への共和党の支持率をアップさせたいためです。
トランプ氏の身辺に迫って来たロシアゲート事件への国民の目を、北朝鮮問題にチェンジして、人気挽回を計りたい一心なのです。
特に政治日程が6,7月に立て込んでいる。来年度の予算審議も大幅に遅れている。トランプ氏の経済政策の「個人所得税減税法案」「インフラ大型投資計画な」などの審議は大幅に遅れている。
7月末から8、9月は議会は夏休みに入るなどして実質審議は、6月中旬から7月下旬までに限られる。「6月12日」の会談開催はタイムリミットだったのです。」
「これにロシアゲート事件の捜査が絡んでくる。1年前に任命されたモラー特別検察官による捜査で、これまでにフリン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、マナフォート元選対本部長、コーエン顧問弁護士らトランプ陣営から4人が虚偽供述やロシア疑惑に直接関係しないマネーロンダリング(資金洗浄)などの疑いで訴追され、起訴された関係者は計19人、3団体に上っており、トランプ氏本人への事情聴取を求めている。」
(「これに対して、トランプ氏はモラー特別検察官の任命1年目の5月17日,ツイッターで「米国史上最大の魔女狩りが2年目を迎えたが、私の共謀も司法妨害もない」、6月4日には「私自身には自身に恩赦を与える絶対的な権限がある。」ともツイッターして激しく非難、攻撃している。共和党も中間選挙への影響にやきもきしている状態です。」
(「結局、この問題のポイントは、起訴、不起訴にかかわらずモラー特別検察官が、捜査結果報告書を司法副長官あてにいつ提出するかのそのタイミングです。
かりに「大統領不起訴」の「捜査結果報告書」が出たとしても、議会に対しては「弾劾審議勧告」が出される可能性が高いという。もし、8月中に提出された場合は、トランプ大統領は窮地に追い込まれる。米朝首脳会談はその前に早く行わなければならないと追い詰められていたのです。」
「グレン フクシマ研究員は6月3日付のコラムで「トランプ大統領は金正恩委員長との会談を通じて、ジョージ・W・ブッシュ大統領の支持率が2001年に9・11危機の結果で90%に上がったことを真似ようとしている」とし
「シンガポール会談後に勝利を宣言した後、天才的な交渉家として世界にノーベル平和賞受賞の資格のほか選挙に勝利する権利を主張するだろう」と書いている」 (韓国中央日報日本版6月6日付)
(「ロシアゲート事件の捜査結果が11月中間選挙の勝敗を左右するのです。中間選挙では下院435人全員が改選され、民主党が多数を占める勢いです。民主党が下院で勝利した場合、トランプ氏に対する弾劾審議を担当する下院司法委員会委員長ポストが共和党から民主党に入れ替わる。
下院本会議審議でも民主党が多数を占めるため、弾劾決議(事実上の起訴)が成立する可能性も大きくなるのです。」
「米朝首脳会談の世論調査では(ロイター6月14日)、米国民の51%がトランプ大統領の北朝鮮政策を支持し、民主党支持者も、北朝鮮政策では支持率が約30%に上ったという。予想通りトランプマジックショウの成功というわけだね」
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結局、一番割をくうのは 日本となるわけか・・。
(「国際政治評論家のイアンブレマー氏によると、今回の米朝会談の結果、最大の敗者は、日本だろう、という。日本は依然として、温存されて試験の必要もない、北朝鮮の中・短距離ミサイルの射程内にある。米国のアジアにおける存在感の低下と中国の影響力のさらなる拡大、さらに朝鮮半島でほとばしりそうな民族的な誇りは、日本にとって脅威にもなるはずだ。(日経5月18日)とね」
「ロイターによれば、トランプ米大統領が朝鮮戦争の終結宣言に意欲を示し、今回、米韓軍事演習の中止、在韓米軍の将来的な撤退にも言及したことで、東アジアにおける米国の防衛線が後退し、日本は中国やロシアと直接向き合う「最前線国家」になる恐れがあるとの懸念の声が出ている。
米軍が韓国防衛への関与を減らせば、朝鮮半島が中立化し朝鮮半島は、長期的には中国の勢力圏に落ち可能性も出てくる。
そうなれば、38度線が対馬海峡まで南下してくることになり「日本は憲法、外交政策、安全保障政策を根本から見直さざるを得ない。また、朝鮮戦争が正式に終結すれば、米軍横田基地(東京都内)には朝鮮国連軍の後方司令部があり、平和協定を結べば撤退することになり、日本の安全保障にも影響してくる、という」
「今後、朝鮮戦争の終結、米朝和平条約締結へ大きく踏み出したことには間違いないし、朝鮮半島統一も視野に入ってきた。トランプ政権は東アジアの安全保障環境には同盟国の分担、防衛費の増額を要求している。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所が発表した2017年の世界のGDPに占める軍事費の割合は2.2%、米国がNATO諸国に求めている軍事費は平均2%だが、日本は0.9%でしかない。トランプ大統領はこの数字を問題化しており、安保ただ乗り論」を再びむし返して、ディール外交をしかけてくるでしょう」
「日本側は戦後一貫して「アメリカにおんぶで抱っこ」「金だけ出して米軍を雇兵とし、すべてアメリカ頼み、「米軍基地」は沖縄にほとんど押し付けて、世界の紛争には無関心でかかわることを出来るだけ拒否する『一国平和主義』を貪ってきた。
フランス、スウエーデンで徴兵制を復活させる動き
普通の国の「自国は自国で守る」「独自の外交戦略を展開する」という気概も独立精神もないのではないか。憲法改正や自衛隊の憲法明記にも国民の50%以上は反対し、国論の分裂が長期にわたって続いている。冷戦思想から21世紀のニューノーマル時代(かつての異常な状態がありふれたものとなる時代)へ転換したことが理解できていないのです。」
「ヨーロッパではフランス、スウエーデンで徴兵制を復活させる動きが出ている。平和国家スウェーデンも対ロシアとの対立で、徴兵制を復活し、戦争に備える冊子を国民に配布した。
「いかなる手段を使ってでも侵入者に抵抗するよう、全住人に指示しているものです。特に強調しているのは戦争が始まってもいない段階から「戦争に敗れた」というデマを国民に流すサイバー攻撃、フェークニュースへの警戒を呼び掛けているのです。他山の石ですね」。
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