日本リーダーパワー史(857)ー『今回の「北朝鮮有事危機」は真に国難に該当するものなのか』★『「北朝鮮危機」こそが自民党圧勝の最大要因だ 英メディアは日本の総選挙をどう分析したか』★『トランプの強気が招く偶発的核戦争』★『衆院選で明白、政治家のレベルの低さこそ本当の「国難」』
2017/11/11
日本リーダーパワー史(857)
日本史における「国難」4戦争と
『朝鮮有事』『朝鮮半島大変動」とを
比較検証する。
10月23日、総選挙の結果が出た。自民党が過半数を超える圧勝で、安倍首相の続投が決まった。11月にはベトナムでAPECが開催され、同5日にはトランプ大統領が来日し、北朝鮮問題危機は新たなステージに入る。
同時に国内問題も難問山済みで米中覇権争いの狭間で翻弄される「か弱い」日本では改めて安倍首相の強力なリーダーシップが問われる。
今回、安倍首相は「国難突破選挙」と名付けたが、現在は真に「国難」に値す危機を迎えているのか、を考えてみたい。
国難とは一体なにか。
日本の辞書では「国の危難」、中国語の辞書には「多くの外国勢力の侵略による国難」と定義。英語では「カントリーリスク」である。
つまり、国難とは外国との戦争を意味しており、つまり迫りくる「米朝開戦」危機に備えてのリスク管理というわけだが、これには与野党から大きなブーイングを浴びた。
そこで、日本史の中でこの「国難」(対外戦争)に値するものを調べてみた。
①まずは「元寇の役」(モンゴル襲来、1274年ー1281年)がある。
「元寇の役」はユーラシア大陸を席巻しモンゴル帝国の圧倒的な軍事力により日本は敗北寸前となったが、2回とも台風によってモンゴル軍船はすべて沈没、からくも侵略を防ぐことができたといわれている。
この時、世界の覇権を握るモンゴル帝国は6度にわたりに日本に使者を派遣、朝貢(属国化)を迫ってきたが、時の鎌倉幕府6代執権・北条時宗は使者を斬り殺して拒否し、戦争となった。
- ②はペリーが率いる米国海軍東インド艦隊4隻の黒船来航(1853年)である。米側はその圧倒的な海軍力、軍事力を誇示して、開国、貿易を強く迫り、徳川幕府は家康の祖法(憲法)の鎖国政策を破り、開国し日米和親条約を結んだ。これに薩長などから『尊王攘夷』「倒幕運動』が起こり、15年後に明治維新となった。
- ③は日露戦争(1904年、明治37)は、満州を制圧し朝鮮半島に手を伸ばしてきたロシアとの、国の興廃をかけた一戦だった。
日本は事前に用意周到に戦略情報網を張り巡らし、日英同盟を結んで、米国の支援も受けて開戦に踏み切った。天王山となった日本海海戦では英海軍ネルソン提督の「トラファルガーの海戦」(英スペイン戦争)を上回る世界の海戦史上に残るパーフェクトな勝利をおさめた。
この後、即座に日本びいきのルーズベルト米大統領に斡旋、調停を依頼して、ポーツマス講和会議を開催し和睦した。小国日本が大国ロシアに背負い投げの1本勝ができたのは明治のトップリーダーたちの強い危機意識、インテリジェンス、情報力、外交力、スピーディーな決断・実行力、団結力のたまものであった。
(4)次はわずか80年前のアジア太平洋戦争(1937-1945)である。これは中国との「大義のない戦争」から追い詰められた末に米国との「出たとこ勝負」の戦争であった。英米撃滅を唱えて「英語の使用、研究などは一切「敵性語」として禁止する。戦争末期の本土決戦では米兵に対して女性、子供まで竹やり戦術を強制するアナクロニズム(時代錯誤)のお粗末ぶり。
「敵を知り己(おのれ)を知らば百戦百勝」とは孫子の兵法の第一条である。この逆に第4条には「敵を知らず、己を知らざれば百戦百敗」とある。
日露戦争は孫子の兵法とクラウゼヴィッツの戦争論をマスターした勝利といえるが、アジア太平洋戦争はこの正反対のドロ縄の「百戦百敗」の悲惨な戦争であった。
結局、この日本の国難興亡史の結果は2勝2敗で、その勝敗を分けたのは事前の徹底調査分析の『戦略情報の有無』である。
クラウゼヴィッツは「戦争とは他の手段をもってする政治の継続である」と定義した。戦争と平和は二元的な対立概念ではない。政治選択の1つが武力を使わない外交ゲームであり、別の選択が武力の戦争となる。
「平和を守るためにも戦争を準備しなさい」とのラテン語の警句もある。
日露戦争では日本はロシアを第一仮想敵国として徹底的に研究し、国家戦略を練り直し「はじめに熟慮。おわりは断行」(モルトケ流)でスピーディに取組み、戦争終結(出口戦略)も早かった。アジア太平洋戦争とは雲泥の差である。
では、今回の「北朝鮮有事」は真に国難に該当するものなのか。
北朝鮮は水爆実験に成功し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)、核搭載ICBMも完成したと豪語、核保有国を宣言している。米側は核搭載ICBMの小型化にはまだ成功していないが、来年中には完成するとみている。
トランプ対金正恩の「恫喝」の戦争はヒートアップし、異次元の危機に突入している。『来年には衝突もあり得る』と想定して、安倍首相は今回の解散に踏み切ったとの見方が強い。
もし、米朝核開戦となれば、韓国、日本などへの被害は天文学的な数字になることは、マスコミで報道されている。
そうならなくても、急転直下、対話が再開し『米朝会談、国交回復』へと動き出した場合にも、「朝鮮半島情勢』は大変動して、一層リスクは高まる。4ケース以上の国難到来である。最悪のケースを想定して準備することは国家生存の最重要事項であろう。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「北朝鮮危機」こそが自民党圧勝の最大要因だ
英メディアは日本の総選挙をどう分析したか
http://toyokeizai.net/articles/-/194371
北朝鮮危機「アメリカには安倍晋三が必要だ」
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/10/post-8727.php
トランプの強気が招く偶発的核戦争
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/10/post-8695.php
衆院選で明白、政治家のレベルの低さこそ本当の「国難」だhttp://diamond.jp/articles/-/146745?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(650) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(43)『三国干渉』に日清戦争の立役者・川上大本営上席参謀はどう対応したか①『余の眼晴(がんせい)が黒いうちは、臥薪嘗胆10年じゃ』と
日本リーダーパワー史(650) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(43) …
-
-
『オンライン講座/真珠湾攻撃から80年➄』★『 国難突破法の研究➄』★『ハワイ・真珠湾攻撃は山本五十六連合艦隊司令長官の発案だった②」
2010/06/28 日本リーダー …
-
-
マルズキ・ダルスマン氏が『北朝鮮の人権状況』について日本記者クラブで会見発表
マルズキ・ダルスマン 朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)人権状況に …
-
-
終戦70 年・日本敗戦史(57)A級戦犯指定の徳富蘇峰の『なぜ日本は敗れたのか』⑨「世界戦史上、最も愚劣な戦争だった支那事変(日中戦争)」
終戦70年・日本敗戦史(57) マスコミ人のA級戦犯指定の徳富蘇峰 …
-
-
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(159)』4/1の上野公園、満開初日の桜です。やはり中国人観光客 が多い印象です。
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(159)』 4/1の上野公 …
-
-
日本リーダーパワー史(630) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(23) 『川上操六参謀次長と日清貿易研究所を設立した荒尾精 「五百年に一人しか出ない男」(頭山満評)ー表の顔は「漢口楽尊堂店長」、実は参謀本部の海外駐在諜報武官。
日本リーダーパワー史(630) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(23) …
-
-
世界も日本もメルトダウン(961)★『アメリカの衰退を示す、史上最低の米大統領選挙』ー『米共和党、トランプ氏のわいせつ発言暴露で大混乱に』●『 暴露されたトランプ米大統領候補の女性蔑視発言の全訳』●『コラム:米国で感じた「トランプ大統領」の確率=佐々木融氏』●『 ヒラリーか、トランプか? アメリカ大統領選「第3の選択肢」まで浮上』
世界も日本もメルトダウン(961) 『アメリカの衰退を示す、史 …
-
-
『オンライン講座/ウクライナ戦争と日露戦争の共通性の研究 ⑧』★『日露戦争勝利と「ポーツマス講和会議」の外交決戦①』★『その国の外交インテリジェンスが試される講和談判』
前坂 俊之(ジャーナリスト) 日露戦争は日本軍の連戦連勝のほぼ完勝 …
-
-
「中国人の日本語作文コンクール」最優秀賞の姚儷瑾さん(20歳)が日本記者クラブ(2/6)で会見動画【100分】
昨年の「中国人の日本語作文コンクール」(日本僑報社、 日本交流研究所所長主催) …
-
-
日本メルトダウン脱出法(801)「2050年の日本は超一流の大国か、没落の三流国か(古森義久) 「バラ色のシナリオ」実現にはいくつもの改革が必要」●「韓国の訴訟件数は日本の100倍以上、偽証600倍 なぜこうも日本と違うのか、その歴史的背景を探る」●「アメリカの金融正常化で 先進国は「勝ち組」と「負け組」に分かれる」
日本メルトダウン脱出法(801) 2050年の日本は超一流の大国か、没落の三流国 …