『明治裏面史』 ★ 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー, リスク管理 ,インテリジェンス㊷『児玉源太郎、福島安正の防衛戦略』★『日露戦争の本質はロシアの清国、朝鮮、韓国、日本への侵略戦争に対する 日本の自衛戦争であり、全世界の被植民地の民族に希望を与えた』
2017/07/27
『明治裏面史』
★ 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,
リスク管理 ,インテリジェンス㊷
『児玉源太郎、福島安正の防衛戦略』★
20世紀初頭の「第ゼロ次世界大戦」ともいうべき日露戦争は1904年(明治37)2月4日午後に開かれた御前会議によって正式に決定、国交断絶と軍事行動の発起が勅裁されて、直ちに陸海軍は予定の計画に従って行動を開始した。
日露戦争は日本対ロシアの2国間の戦争であったが、日本側を日英同盟の英国と米国が支持、ロシア側を露仏同盟のフランスとドイツも支持した点で世界代理戦争であり、第一次世界大戦(1914年(大正3年)-1918年(大正7年)にかけて戦われた人類史上最初の世界大戦)の10年前に起こった点で「第ゼロ次世界大戦」と位置づけることができる。
世界の植民地・帝国主義の2大覇権国イギリスとロシアの中国侵略、全面対決という時点で、ボーア戦争で兵力を東洋に割くことが出来なかったイギリスが「日英同盟」を結んで、凶暴ロシア『シロクマ』の侵攻に対して、日本を東洋の番犬として、使い戦わせたという構図である。
もう1つの視点は、ロシアの仕掛けてきた清国、朝鮮、韓国に対する植民地戦争に対する日本の防衛戦争の色彩が強く、南北アメリカ、中東、アジア、アフリカの全世界で吹き荒れた植民地獲得大戦争の中で、唯一、日露戦争に勝利して、自国を守り抜いた点では世界史を変えた戦争でもあった。
日露戦争の結果、ロシア革命、辛亥革命が誘発され、植民地の犠牲になっていたインド、清国、ベトナム、フィリピンなどのアジア各国や中東各国にも多大な影響を与えた点で、まさしく世界史を変えた大戦争であったのである。
御前会議終了後の2月4日夜、陸海軍の動員下令が全軍に伝達された。
➀4日夜10時、韓国京城占領のため急派準備中であった陸軍の臨時派遣隊は、直ちに乗船開始の命令を受けた。
② 海軍の東郷平八郎連合艦隊司令長官は洋上に警戒中の艦船に対し、明5日10時以降は敵艦接近すれば直ちに交戦開始を下令し、明後6日早朝を期して主力艦隊の佐世保出港を指令した。
➂ 津軽海峡、対馬海峡の各要塞重砲に対し直ちに応戦配置の命令が伝えられた。
陸海主務幕僚たちは同日夜遅くまで、敵情報に関する最後の打ち合わせや、作戦行動の細部協定に余念がなかった。
児玉参謀次長は4日夜半、引き続いて寺内陸相以下の陸軍主脳と協議を続けた。
万が一にもわが連合艦隊が緒戦に破れて、黄海方面の制海権が敵の手に入り、陸軍作戦の海路輸送が不可能となった場合、陸軍の主力は朝鮮半島のみで作戦をせざるを得なくなる。
このようなシュミレーション②に備えて、極秘のうちに少数者だけで対策を研究することになり、この夜も研究、議論を続けた。
元老会議の記録文書には「露国政府ハ東洋ノ平和ヲ顧念スルノ誠意ナキコトヲ確認スルノ、止ムヲ得サルニ達シタリ」と前置きし
「事、茲(ここ)二到リテハ、実二止ムヲ得サルガ故二、 帝国政府ハ此談判ヲ継続スルモ妥協二至ルノ望ナキヲ以テ、 之ヲ断絶シ、自衛ノ為メ必要ト認ムル独立ノ行動ヲ執ルコトニ決ス」と、やむを得ぬ自衛の戦争であることが明記されている。
陸軍参謀本部では、児玉次長の下で福島安正情報部長が対ロ情報、作戦に関して、ほぼ中心のまとめ役であり、早期開戦を唱えて参謀本部を先導してきたが、日露戦争後に各地に招かれておこなった講演の中で、当時の参謀本部の雰囲気について、開戦までのいきさつをこう語っている。
『ことここに至っては、今更どうも、こうもないではないか。今や日本はどうしてもロシャと戦わなければならぬ。
海軍が六六艦隊を建造し、陸軍が十三個師団態勢を作るべく、国民と共に血の滲むような努力を続けて今日に至ったのは、三国干渉の恥辱を受けて日本がロシャに旅順を奪わられて以来ここに十年、すべてが今日このことあるを予期して対露作戦に備えてきたのではなかったのか。
もし今にして戦わなければ、今日まで鋭意努力をしてきた陸海軍の軍備もその意味がないと私は判断する。それは今のうちならばロシャのシべリヤ鉄道建設が不十分なために、ロシャは本国に持っている兵力を極東に輸送できないので、この好機に乗じてロシャの出鼻を挫くことが唯一の戦う方法なのだ。
「ただし、不幸にして日本が戦って負ける場合も当然考えておく必要がある。もし日本が戦って負けた場合、ロシャは先ず差し当り台湾を奪うであろうし、また莫大な償金をも要求してくると覚悟をしなければなるまい。しかし日本はまだ亡ぶことはない。
ところが日本に敢然として戦う精神がなければ、あの凄じい勢で東洋に進出中のロシャは、先ずシベリヤの大陸鉄道を完成し、これを基礎にして満州に大軍を駐屯させ、旅順を海軍基地として活用するためには朝鮮海峡の自由航行保証が必要との理由で直ぐ朝鮮半島を自己の支配下に置くであろう。
このようにロシャが磐石の態勢を極東に造り上げてしまった頃になると、ロシャと協定しておいた条約などは反故同然で何等の役に立たず、日本のあらゆる勢力は朝鮮半島から駆逐されるばかりでなく、朝鮮海峡の中央に位置している壱岐・対馬もロシャのねらうところとなり、ひいては九州や北海道の日本本土にも手をつけてくるようになることは火を見るよりも明かである。
わが日本は断じて欧州人の気力の前に屈伏してはならない。もし日本がロシャ人の前に屈状するならば、最後は日本が第二のインドやビルマと同様の運命を辿り、彼等の奴隷になり果てて消え去ってしまうことになる。
このように考えると、どうしても進んで戦う以外に採るべき道はないと確信する。」
(以上は島貫重節『戦略日露戦争』(上)原書房 1980年 238―240Pを引用)
関連記事
-
-
『日本世界史(グローバル・異文化・外交コミュ二ケーション史』生麦事件、薩英戦争は英国議会でどう論議されたか①英国「タイムズ」
『日本世界史(グローバル・異文化・外交コミュ二ケーショ …
-
-
『オンライン現代史講座/2・26事件の原因の1つは東北凶作による女性の身売りが激増』③『アメリカ発の世界恐慌(1929年)→昭和恐慌→農業恐慌→東北凶作ー欠食児童、女性の身売り問題→国家改造/超国家主義/昭和維新→5・15事件(1932)→2・26事件(1936)、日中戦争、太平洋戦争への道へと転落した』
昭和七年(1932) 悲惨、娘身売りの残酷物語ー売られ行く娘たち 凶作地の惨状 …
-
-
世界リーダーパワー史(937)ー『トランプ大統領の弾劾訴追の可能性は?』★『弾劾訴追と上院、下院の関係の手続きはこうなる』
世界リーダーパワー史(937) ★弾劾訴追と上院、下院の関係の手続き …
-
-
『日露インテリジェンス戦争を制した天才参謀・明石元二郎大佐』 ➂『ヨーロッパ各国革命党の共闘、連合会』結成を画策
『日露インテリジェンス戦争を制した天才参謀・明石元二郎大佐』-戦時特別任務➂ …
-
-
『Z世代のための日本戦争史講座』★『「ハーグ、ジュネーブ条約」を無視して捕虜を虐待、 死刑を指示した東条首相の『武士道は地に墜たりー目には目、歯には歯を』★『陸軍反逆児・田中隆吉の証言』②
●米ドーリットル部隊の東京初空襲(1942 年4月18日)ー真珠湾攻撃から4ヵ月 …
-
-
冤罪追及の旅『加藤翁事件』 「虚心坦懐」-加藤新一翁の雪冤(1979年9月)
1979年9月10日発行 「季刊 証言と記録」第3号に発表 冤罪追及の旅 「虚 …
-
-
『Z世代のための旧統一教会復習講座』★『日本の冬の陣―安倍国葬と旧統一教会』★『●「旧統一教会」は「カルトビジネス(悪徳商法)」「コングロマリッド」(総資産約8千億円)』(22年11月15日までの情報です)
2022/12/03 の記事再録 日本の冬 …
-
-
『オンライン100歳学講座』★『 全財産をはたいて井戸塀となり日本一の大百科事典『群書索引』『広文庫』を出版した明治の大学者(東大教授)物集高見(80歳) と物集高量(朝日新聞記者、106歳)父子の「学者貧乏・ハチャメチャ・破天荒な奇跡の物語」★『生活保護、極貧生活でも飄々とした超俗的な生き方に多くの人々は百歳老人の理想像を見て、その知恵と勇気に感動した』
前坂 俊之(ジャーナリスト) 物集高見が出版した大百科事典『群書索 …
-
-
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』㉓「伊藤博文統監の言動」(小松緑『明治史実外交秘話』)⑧『伊藤統監の辞職『一億円は高過ぎる』『事実上の併合へ』
「 英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が 報道した「 …
-
-
日本リーダーパワー史(262)<本物のリーダー、偉人とは>大津波を私財を投じた大堤防で防いだ濱口悟陵
日本リーダーパワー史(262) <本物のリーダー、偉人とは~、この …
- PREV
- ★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < アメリカ・メルトダウン(1059)>トランプ大統領半年間のお笑い暴走暴言運転の支離滅裂。「ロシアゲート事件」「パリ協定離脱」で世界から見捨てられ空中分解、 墜落過程に入った。
- NEXT
- 『明治裏面史』 ★ 『日清、日露戦争に勝利した明治人のリーダーパワー,リスク管理 ,インテリジェンス㊸★『日露戦争開戦の『御前会議」の夜、伊藤博文は 腹心の金子堅太郎(農商相)を呼び、すぐ渡米し、 ルーズベルト大統領を味方につける工作を命じた。』★『ルーズベルト米大統領をいかに説得したかー 金子堅太郎の世界最強のインテジェンス(intelligence )』