前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『F国際ビジネスマンのワールドウオッチ③』ー「原子力発電所の新設計画の英政府の狙いが頓挫」BBC NEWS(3/29) 

   

日本のメルトダウン(278)

『F国際ビジネスマンのワールドニュース・ウオッチ
 
『“RWE社とE.on社は、WylfaOldburyにおけるイギリスの原子力
発電所の計画を中断させている”』―
「原子力発電所の新設計画に投資を呼び込むイギリス政府の狙いが
頓挫している」  
◎『RWE and E.On halt UK nuclear plans at Wylfa and Oldbury”』
2012329  BBC NEWS

 
 
F氏は『このようなニュースは、日経、朝日、NHKなどはもっと取り上げ、日本政府にドイツをもっと学ばせるべきです。特に 東芝、三菱重工、日立等に原子力部門のリストラを促し、再生エネルギーの開発重点にシフトさせることは効果絶大です。
各社から原子力部門だけを取り出し、三社合併の原子力会社を作れば人材はかなり余ります。
緒方貞子が 最近のJICA理事長退任の挨拶で「日本ほど技術が進んだ国で、広島 長崎を経験し原子力に慎重な筈なのに福島の様なこんなことになった。そんな原発を外国に安易に輸出していいのか」と言っています。

(訳者のBBC記事へのコメント)
 
1.   福島第一原発の大災害が海外に与えた影響は、ドイツ政府による202年迄の国内全原子炉の運転停止の決定が最たるものであった。
 
 ここに来てドイツ総合エネルギー業界でシェアⅠ、2位、欧州全土においてもトップグループのE.On, Wylfaの両社が合弁で進行中のイギリスの原発建設、運転プロジェクトから撤退すると云う新たな事態が発生し、イギリス政府、フランスEDF等を含む欧州総合エネルギー業界、原子力プラント業界を巻き込む大騒動に発展している。
 
 イギリスはこの10年以内に、老朽化した原子力、石炭火力の新旧交代を急がなければならず、2社の撤退は同国の電力供給能力が潜在的に逼迫した状況にあることを浮き彫りにしている。特にイギリスの原子力発電はフランス、ドイツの外国勢に建設、運転を依存しており、2社の撤退は大きな痛手となっている。代役と予想されるフランス勢の足下を見た高値も懸念される。
 
 また今回の事態は、イギリス政府の今後のエネルギー政策の見直しを迫る端緒になっているという。
 
2.   福一の経験から、世界の原子力産業は原発の安全リスク増、大幅コスト増という大変化に襲われ、電力オペレーション業界、建設業界は発電システムとしての原子力の事業性を根本から厳しく見直さざるを得なくなっている。儲からない事業になる事を非常に恐れている。
 
 このBBCの報道は、ドイツ政府の政治的な誘導も当然予想される中で、2社がドイツ国内での原子力事業の将来に見切りを付けると同時に海外事業のみの原子力事業という存在形態もあり得ないだろうと判断し、ガス発電や再生エネルギー発電等にシフトして行くと伝えている。原子力を止めて再生エネルギーの開発に注力する様にという政府からの指導があったことは想像に難くない。
 
3.   原子力への依存を急速に低減し、早くゼロに持って行く事ができるには、過半の人材を代替エネルギーの開発に集中させ、これを加速させなければならない。原子力に人材を留め置く余裕はないと思われる。原子力の停止と代替エネルギーの開発促進は車の両輪であり、背水の陣で国を上げて取り組むドイツの決断に日本は大いに学ばなければならない。
 
(事業者名の注釈)

* E.on, RWEは各々ドイツのデユッセルドルフ、エッセンに本社を置く大手エネルギー会社で、独4大電力会社中の上位2社である。電力、ガス、水道 などの公益事業でドイツの他、中欧、英国、米国に進出するエネルギーコン
 グロマリット。
* WylfaはU.KのWales, Angleseyにある原子力発電所、1971年運転開始、980MW、 OldburyはU.KのEngland, Gloucestershireにある原子 力発電所、1967年運転開始、2012年廃炉開始
*  EDFはフランス電力公社、仏最大の半官半民の電力会社であるが欧州各国、中国、ベトナム、米国、南米、アフリカなどに進出する電力多国籍企業。発電内訳は原子力83%、水力8%、石炭4%、その他3%。原子力は独占的に建設、運転。
 CentricaはUK最大手のガス電力会社、国内でブリティッシュガスブランドで都市ガス事業。ヨーロッパ、北米にも進出。 NugenはUKの原子力発電会社、Moorsideプロジェクトに参加、
* Scottish and Southern Energy (SSE) は英国第二位の総合エネルギー企業、英国全土に電力、ガスを供給、海外ではポルトガル、オランダ、アイルランド、スウェーデンに進出、再生可能エネルギーに注力
 
2012/3/29         BBC NEWS
 
“ RWE and E.On halt UK nuclear plans at Wylfa and Oldbury ”
“ RWE社とE.on社は、WylfaとOldburyにおけるイギリスの原子力発
電所の計画を中断させている ”
 
 
「原子力発電所の新設計画に投資を呼び込むイギリス政府
の狙いが頓挫している 」
 
主役の2社、RWE社とE.On社は、U.K域内で新設原子力発電プロジェクトを展開する事はしない、と発表した。
両社はHorizon原子力発電と呼ぶ合弁会社を作り、その下でAngleseyとBristol近傍のOldbury-on-severnに新設するプラントに投資する計画を進めていた。イギリス政府は、両社の撤退には失望しているが、このプロジェクトに対し重大な関心を寄せる企業は他にもいる、と云う。
両社は撤退の理由として、原発プラント建設資金が増大する問題、ドイツ政府が全ての原発プラントの廃炉を決めた事によるコスト増大の問題を上げている。
 
両社は2009年に、Gloucesterに本社を置くHorizon原子力発電会社を作った。この会社が、Anglesey島のWylfaと南GloucestershireのOldbury-on-Severnの二カ所に原子力発電所を新設する計画に取り組んでいた。
これらの計画は、この10年以内に廃炉にして、新設の発電所に置き換えて行くと政府に指定された古い原子力発電所8カ所の内の二つである、これはUKの発電能力の凡そ4分の1に相当する。
 
しかし日本の福島原子力発電所の大災害の後、昨年5月ドイツ政府は2022年迄に全ての原子力発電所を閉鎖することに決めた。RWEとE.On,両社はドイツの発電所の大半を所有しているが、この両社にとってドイツ政府の決断は高く付くものであり、他の原子力発電所への投資の意欲を削ぐものであった。
 

 - 現代史研究 , , , , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ㊺』3/11 『NYT』 Fukushima’s Continuing Tragedy ー福島の継続する悲劇

  『F国際ビジネスマンのワールド・ウオッチ㊺』 &nbsp …

no image
日米の歴史パーセプションギャップ・誤解の原因は②・・ダンスは野蛮・国会は魚市場のセリと同じ

日米の歴史パーセプションギャップ・誤解の原因は・・② <ー1860年の日米通商条 …

no image
米占領下の国内政治はどうだったのか(1945-50)ー占領下での各政党の歩みー

                                    2008 …

『Z世代のための日本興亡史研究』★『2011年3月11日の福島原発事故発生で民主党内の菅直人首相対鳩山由紀夫、小沢一郎、野田佳彦の派閥闘争が激化、自滅した』★『成功例の江戸を戦火から守った西郷隆盛と勝海舟、高橋泥舟、山岡鉄舟(三舟)の国難突破力①』★『人、戒むべきは、驕傲(きょうごう)である。驕心に入れば、百芸皆廃す』(泥舟)』

2011/06/04 日本リーダーパワー史(157)記事転載再編集 『江戸を戦火 …

「オンライン・日本史決定的瞬間講座⑫」★『電力の鬼」松永安左エ門(95歳)の<長寿逆転・不屈突破力>が『世界第2の経済大国』の基礎を作った』★『人は信念とともに若く、疑惑とともに老ゆる』★『葬儀、法要は一切不要」との遺書』★『生きているうち鬼といわれても、死んで仏となり返さん』

  ★「松永の先見性が見事に当たり、神武景気、家電ブームへ「高度経済成 …

「Z世代への遺言」★「日本を救った奇跡の男ー鈴木貫太郎首相①』★『昭和天皇の「聖断』を阿吽の呼吸でくみ取り、『玄黙戦略」でわずか4ヵ月で80年前終戦を実現』★『太平洋は神がくれた平和の海でトレード(貿易)のためのもの。これを戦争の海に使ったならば、両国ともに天罰を受ける』

  2024/08/16   記事転載再編集」   …

『Z世代のための死生学入門』『中江兆民(53歳)の死に方の美学』★『医者から悪性の食道ガンと宣告され「余命一年半・・」と告げられた兆民いわく』★『一年半、諸君は短促なりといわん。余は極めて悠久なりという。 もし短といわんと欲せば、十年も短なり、五十年も短なり。百年も短なり。 それ生時限りありて、死後限り無し」(『1年半有』)』

     ★『中江兆民(53歳)の遺言』ー「戒名は無用、葬式も無用、灰 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史]』(26)-記事再録/トラン大統領は全く知らない/『世界の人になぜ日中韓/北朝鮮は150年前から戦争、対立の歴史を繰り返しているかの連載⑶』ー(まとめ記事再録)日中韓異文化理解の歴史学(3)『日中韓150年戦争史の原因を読み解く』 (連載70回中、37-50回まで)

日中韓異文化理解の歴史学(3) 『日中韓150年戦争史の原因を読み解く』 (連載 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(161)記事再録/日中北朝鮮150年戦争史(6) 日清戦争の発端ー陸奥宗光『蹇々録』の証言②『頑迷愚昧の一大保守国』(清国)対『軽佻躁進(軽佻浮薄)の1小島夷(1小国の野蛮人)』(日本)と互いに嘲笑し、相互の感情は氷炭相容れず(パーセプションギャップ拡大)が戦争へとエスカレートした。

    2016/06/20 &nbsp …

no image
ウクライナ問題はどうなるのかー日本記者クラブで石郷岡建氏、下斗米伸夫・法政大学教授、ハルチェンコ・ウクライナ駐日大使

 <ウクライナ問題はどうなるのかー日本記者クラブ「研究会」> &nbs …