前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(765)ー『今回の金正男暗殺事件を見ると、130年前の「朝鮮独立党の金玉均らをバックアップして裏切られた結果、「脱亜論」へと一転した 福沢諭吉の理由がよくわかる②』★『金玉均や朝鮮独立党のメンバーを族誅(罪三族に及ぶ)して、 家族、親族、一族の幼児まで惨殺、処刑した。福沢は社説『朝鮮独立党の処刑』と題して、過酷、苛烈な処刑を野蛮国と激しく批判した』

      2019/08/09

 

 

日本リーダーパワー史(765

今回の金正男暗殺事件を見ると、130年前の「朝鮮独立党の金玉均ら」

をバックアップして裏切られた結果、「脱亜論」へと一転した

福沢諭吉の転換理由がよくわかる②

金玉均や甲申事変を起した朝鮮独立党のメンバーを族誅(ぞくちゅう)、罪三族に及ぶ)として、

家族、親族、一族の幼児まで惨殺、処刑した。福沢は『朝鮮独立党の処刑』と題して、

この過酷、苛烈な処刑を野蛮国の仕業と激しく批判した。

 

  福沢諭吉はなぜ「日清朝の提携」から「脱亜論」に180度転換したのか②

 

1884年(明治172月、「漢城旬報」第10号に井上執筆の「華兵凶暴」と題する記事が掲載されると、清国側から激しい抗議がおきた。当時、清国は朝鮮の内政・外交にひどく干渉して、特に、清国兵の横暴ぶりは言語道断で、掠奪したり凌辱したり傍若無人の振舞は見るに堪えなかった。

二月のある夜に、城内貞洞の薬局で清国兵が人参を買い、代金を払わずに立ち去ろうとするのを主人がとがめると、清国兵はいきなりピストルで主人を射殺した。

殺された主人の子供が清国兵営に訴へたが、犯人を捜査するどころか、かえって袁世凱は「わが清国兵は規律厳正である。この犯行は他国人が清国兵を装ってしたものであろう」と門前払いを食わした。

井上はこの不正を見過ごさず記事で追及し、末尾に「支那兵の中には無頼の徒が少くない。その挙動が往々にして殺伐粗暴を免れない。今回の事、清国兵が行ったということに間違いない」ときびしく批判した。

この記事が出ると清国兵営は直ちに朝鮮政府に新聞配布禁止を命令し、博文局に抗議してきた。四月には北洋大臣李鴻章も朝鮮政府に「『漢城旬報』は官報である。今回の事は明らかに中国に礼を欠くものだ」と責任追及してきた。

朝鮮政府は狼狽した。井上は1人で責任をとり、「旬報」第16号を発行すると共に、外衛門顧問、博文局主宰もあわせて辞職して帰国する事となり明治17年5月に帰ってきた。

井上は帰国後も福沢邸に住んでいた。福沢、後藤象二郎は共に井上の労を慰め、「遠からず再び行ってもらう事になるだろうから、それまで十分に休息せよ。」と激励した。

井上は帰国早々から朝野を奔走して、朝鮮を決して捨てて置けないと力説して、その意見を「時事新報」に発表したり、三田演説館などで演説し、金玉均らの支援を続けた。

 以上が、福沢が朝鮮独立党を支援のため、愛弟子の井上らを派遣した1件だが、この約2年後、再び朝鮮を揺るがす政変が起きる。

金玉均、朴泳孝らの独立党が1884年(明治17124日、クーデター「甲申事変」を計画した。

清仏戦争で清国の敗北を予測し、在朝軍が手薄になった隙を狙って、金玉均らは郵政局の完成披露式典の日に政変を決行した。王宮を占拠して国王高宗を保護し、日本公使・竹添進一郎指揮の日本軍150人の保護の下で新政権を作った。

金玉金が首相に、朴は大蔵大臣となり、

➀国王は今後皇帝陛下として独立国の君主に

②清国への朝貢の廃止する。

➂税制を改め、宦官の制の廃止

など14項目の革新政策を発表した。

ところが、閔妃が袁世凱に密使を送って、救出を要請、衰世凱率いる清国兵1500人によって日本軍150人が守る王宮はたちまち奪回され、わずか3日の天下に終わった。

 日本公使館は焼き討ちにあい、独立党やその幹部、日本人居留民40人以上が殺害され、特に婦女子30余名は清兵に陵辱され虐殺された。竹添公使は命からがら仁川に避難して帰国、金、朴らも日本に亡命して福沢邸に再び逃げ込んで、クーデターは失敗に帰した。

この事変の処理をめぐり、日本政府は伊藤博文全権を北京に派遣、天津で、北洋通商大臣の李鴻章と交渉した。

伊藤は袁世凱による王宮の日本軍への攻撃と漢城(ソウル)市内での清国兵による在留邦人への殺害、略奪の責任を追及した。だが、李鴻章は逆に日本側のクーデター関与を批判して、交渉は難航した。

 結局「日清両軍は4カ月以内に朝鮮から撤退する」「将来、朝鮮に出兵する場合は相互に連絡し、派兵後は速やかに撤退し、駐留しない」との天津条約を翌年4月にやっと結んだ。

この間、朝鮮側は事件に関与した朝鮮独立党のメンバーを族誅(ぞくちゅう)、罪三族に及ぶ)として、家族、親族、一族の幼児まで惨殺、処刑した。福沢は明治18223日などの『時事新報』に『朝鮮独立党の処刑』と題して、この過酷、苛烈な処刑を野蛮国の仕業と激しく批判した。316日には有名な社説『脱亜論』を掲載した。

「西洋文明を採用しなければわが国の独立は保てない。日本のみがアジアで唯一、文明開化している。しかし清国と朝鮮はかたくなに古来の習慣に固執して、近代化を拒否しており、明治維新のような変革ができなければ数年のうちに亡国するであろう。日本は両国の開化を待って共にアジアを興す猶予はない。悪友(清国と朝鮮)と親しむ者はともに悪友となる。むしろ彼らから脱して、西洋の文明国と行動をともにし、アジア東方の悪友(中国、朝鮮)とは交際を謝絶するつもりなり」

また、813日『時事新報』社説では「朝鮮人民のためにその国の滅亡を賀す」とまで言い切った。この論説は治安妨害として、時事新報は1週間の発行停止処分を受けた。

「今朝鮮の有様を見ると、王室無法、貴族跋扈、税法も紊乱の極に陥って民に私有の権なく、政府の法律不完全にして無辜を殺すのみならず、貴族士族の輩が私欲私怨を以て私に人を拘留し傷け殺すも、人民はこれを訴えることができない。士族以上、直接に政府に縁ある者は無限の権威をほしいままにして、下民は上流の奴隷たるに過ぎない」

天津条約締結後、日本は正直に朝鮮から撤兵したのに、清国は条約を履行せず逆に兵を増加した。清国から兵を逐次ソウルに送りこむ一方、袁世凱が「通商事務全権」名目で乗り込んで大公館を構え、朝鮮政治を一層支配した。

一方、ロシアも1885年(明治18)に朝鮮との間で朝露密約を結んで、軍事基地を設けた。危機感をもったイギリス海軍は対抗派兵する理由となして同年4月、朝鮮海峡の巨文島を占領するなど、清露英の侵攻で、朝鮮での日本の勢力は大きく後退したのである。

日本リーダーパワー史(693)

『中国/朝鮮行動学のルーツ』中国紙「申報」の論説から日中韓150年戦争史の原因を読み解く

(連載70回)第11回から20回までー清の属国「朝鮮」でおきた反日暴動

「壬午事変」(1882)「甲申事件」(1884)をめぐる『英タイムズ」「チャイナヘラルド」

『申報」の報道、論評

http://www.maesaka-toshiyuki.com/war/15543.html

日中韓150年戦争史の原因を読み解く(連載70回)

の第1回から10回までー福沢諭吉の『脱亜論」の理由、

http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/15476.html

 

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
世界/日本リーダーパワー史(900)ー何も決められない「ジャパンプロブレム」を変革する大谷選手の決定力 /最速王―「日本人の歩みは遅い」と批判した ハリルホジッチ前監督は解任」★『日本は当たり前のことさえ決めるのに15年はかかる』(キッシンジャー)』

「ジャパンプロブレム」を変革する大谷選手の決定力、 スピード最王―「日本人の歩み …

no image
日本風狂人伝(43)ジョークの天才奇才(1)内田百閒のユーモア『美食は外道なり』(1)

日本風狂人伝(43) ジョークの天才奇才(1)内田百閒のユーモア 『美食は外道な …

no image
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』< アメリカ・メルトダウン(1059 )>『トランプ政権半年目で公約実現はとん挫し『ロシアゲート事件』の嵐の中に突っ込んで、政権はキリモミ状態で墜落寸前の末期症状を呈している。』

★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < アメリカ・メルトダウン(1059 …

no image
『世界サッカー戦国史』➈『ガラパゴス/ジャパン/サッカーの未来を開く』★『日本人監督にして科学的トレーニングを強化する』

『世界サッカー戦国史』➈ 日本サッカーの強化法―科学的トレーニングの必要性 前坂 …

no image
世界が尊敬した日本人- 自動車修理工からー代で〝世界のHONDA〃を築いた本田宗一郎

世界が尊敬した日本人      自動車修 …

no image
知的巨人の百歳学(126)『天才老人/禅の達人の鈴木大拙(95歳)の語録』➂★『平常心是道』『無事於心、無心於事』(心に無事で、事に無心なり)』★『すべきことに三昧になってその外は考えない。結果は死か、 生か、苦かわからんがすべき仕事をする。 これが人間の心構えの基本でなければならなぬ。』

 記事再録/百歳学入門(41) 『禅の達人の鈴木大拙(95歳)の語録』 …

no image
日本メルダウン脱出法(640)『アベノミクスに時間を稼いだ幸運」(英FT紙)「日本経済に「空前の好環境」、株価2万5000円へ」など7本

  日本メルダウン脱出法(640) 『アベノミクスに時間を稼いだ幸運」 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(150)再録★<『英タイムズ』(1906(明治39)年12月28日付記事)が報道したよくわかる日本史『海洋民族/海洋国家日本の900年の歴史★蒙古襲来から日露戦争までの海の道>―今こそ、第3の鎖国を解き、アジア太平洋海洋国家へ飛躍しようせよー

    2011/11/28 &nbsp …

no image
日本メルトダウン(903)『 チャイナリスク・お笑い「中国劇場」の一席!』 だから、中国は嫌われる「前近代・共産党独裁 人権低国・習近平皇帝・封建国家」のお粗末!

   日本メルトダウン(903) チャイナリスク・お笑い「中国劇場」の …

no image
 日本メルトダウン(1025)『3・11東日本大震災・福島原発事故から6年』ー『l  ウエスチングハウス破産申請か 東芝に問われる保証責任』◎『福島原発事故から6年 「アンダーコントロール」からほど遠い現状、海外メディア伝える』★『3・11とメディア 福島 もう一つの真実』●『原発事故から6年。食品の汚染度は低下するも「食の安全」は本当に取り戻せたか?』◎『国の東芝支援はあり得ない…「ゾンビ企業」を保護する日本に海外メディアが苦言』★『廃炉措置機関の創設で国が責任を持つ体制に変えよ 福島事故6年目、ガバナンスの根本改革にとりかかるときだ』

 日本メルトダウン(1025) 『3・11東日本大震災・福島原発事故から6年』 …