池田龍夫のマスコミ時評(101)◎『1票の格差4・77倍」◎『武器輸出三原則」揺らぐ」◎『福島第1原発汚染水対策』
2015/01/01
池田龍夫のマスコミ時評(101)
◎『1票の格差4・77倍」に違憲状態の判決相次ぐ(12/11)』
◎『武器輸出三原則」の歯止めが揺らぐ(12/9)』
◎『福島第1原発汚染水対策など、収束の道遠し(12/7)』
池田龍夫(ジャーナリスト)
1票の格差4・77倍」に違憲状態の判決相次ぐ(12/11)
「1票の格差」が最大4・77倍だった今年7月の参院選を無効として、弁護士グループが全国で選挙無効を求めた訴訟で、札幌高裁(山崎勉裁判長)は12月6日、「違憲状態」との判断を下した。
議員1人当たりの有権者数は最小の鳥取県に比べ北海道が最多で、4・77倍。これをめぐって、11月28日には広島高裁岡山支部が「違憲・無効」の厳しい判決を下した。12月5日には広島高裁が「違憲状態」と判断。今のところ「無効請求」を、札幌・広島両高裁は棄却している。
北海道新聞12月8日付社説は「議員1人当たりの有権者数が最も少ない鳥取県の1票
の価値を1とした場合、北海道は0・21でしかない。法の下の平等という民主主義の根幹
がないがしろにされ続けている状態は異常だ。最高裁はこれまで、2007年の参院選に対し
ては『合憲』としながらも、『大きな不平等が存在する』と指摘し、制度見直しに言及した。
最大5倍の格差があった10年の前回選挙には、「違憲状態」を突きつけた。だが、国会が
対応したのは、大阪府と神奈川県を2増とするなどの4増4減だけだ。その結果、7月の参
院選は1票の価値が最も小さい選挙区が神奈川県から北海道に変わったにすぎない。
衆院でも人口最少の宮城5区に対し、北海道1区が2倍超になるなど見直しは急務だが、
国会の動きは鈍い。 国会議員に期待できないのであれば、衆参両院ともに第三者機関が主
導して、改革を推進すべきだ」と、厳しく批判していた。
今後も同種の判決が予想される。選挙制度を抜本的に改革できない国会に対する司法からの厳しい警告にほかならない。絶対多数の自民党政権は「秘密保護法」に莫大なエネルギーを割いたが、自分たちの議席に関する問題には実に不熱心だ。16年の次回参院選挙までの改革を目指して、根本から立て直すべきだ。
「武器輸出三原則」の歯止めが揺らぐ(12/9)
安倍晋三政権は、野党、国民の多くが猛反対していた「特定秘密保護法」を、12月6日深夜強行可決した。国会審議時間わずか60時間余で質疑を打ち切っての暴挙で、その責任をめぐって混乱が続いている。この混乱のすきを狙ったように、安倍政権は5日、「武器輸出3原則」に代わり、新たな「武器輸出管理原則」策定を決め、原案を与党に提示した。
日本の非核三原則は1967年、佐藤栄作首相によって打ち出され、歴代政権が引き継い
できた。
佐藤政権以来、歴代政権が継承してきた
非核三原則が定められた背景に小笠原諸島さらに沖縄が本土復帰する過程があったようだ。当時、核を「使用しない」ことは核不拡散条約(NPT)の交渉時からかんかんがくがく議論されており、日本政府は核を「使用する、しない」については何も言わず、ただ「持ち込まない」にして切り抜けてきた。ところが核積載の米艦船の日本寄港問題をきっかけに、「核を持ち込まない」という表現は核の抑止力維持の観点から問題があるので、三原則を修正して二・五原則とか二原則にしてしまおうという意見が出てきた。
当時の佐藤内閣は、①共産圏②国連安保理決議により武器輸出が禁止されている国③国際紛争の当事国またはそのおそれのある国――の武器輸出を禁止。三木武夫内閣は76年、三原則以外の国にも原則、輸出禁止を決めた。ただ米国などへの武器技術供与などは個別に官房長官談話を出して「例外」を設けてきたという。
日本版NScが「司令塔」に
朝日新聞12月6日付朝刊は、「安倍政権が示した原案では『我が国の安全保障に資する場合』は輸出できる文言を新しく設ける。ただ、②と③の禁止条項は維持する。
輸出の審査・管理基準も設けるが、三木内閣の原則禁止は撤廃の方向だ。武器輸出の品目や地域が大幅に広がる可能性がある。新原則が決まれば、輸出の可否は外交・安保政策の『司令塔』となる国家安全保障会議(日本版NSR)などでの協議を経て判断される」と分析しており、武器輸出拡大にはずみがつくのが心配だ。
三菱重工などの動きが気懸かり
現に三菱重工など大手企業が武器輸出促進の体制を整えており、国民の知らないうちに本格的武器輸出につながることが懸念される。このほか、原発輸出が気になる。原発は武器そのものではないが、悪用される心配なしとしない。
無人機開発などで各国が鎬をけずっている現状からみて、戦乱の危険性が減るどころか、巧妙な戦術に切り替えられていると考えられる。平和主義を国是とする日本は「武器輸出三原則」の理念の堅持に立ち返るべきだ。
福島第1原発汚染水対策など、収束の道遠し(12/7)
12月4日で、東日本大震災(2011年3月11日)から1000日。福島島第1原発の汚染水処理,使用済み燃料棒取り出し作業などに、連日取り組んでいるが、収束のメドは依然立っていない。
海側の井戸から過去最高値の汚染物質を検出
福島第1原発の海側にある観測用井戸の水から12月4日、ストロンチウム90などベータ線を出す高濃度放射性物質が検出された。過去最高値の1㍑当たり130万ベクレルの高濃度。同じ井戸で11月28日に採取した110万ベクレルを上回った。
毎日新聞12月4日付夕刊が報じたもので、「東京電力が、港湾内に放射性物質を封じ込めるため設置している水中カーテン『シルトフェンス』の外側2地点の湾内海水(今月2日採取)から、放射性セシウムを1㍑当たり13・1~13・4ベクレルを検出とも発表。これまの最高値の1・4~1・6倍の数値だ」と報じた。
シルトフェンスに期待したが…
福島民友5日付朝刊も、「ベータ線を出す放射性物質の半分程度を占めるストロンチウム90を原発外に放出する際の法定基準は1㍑1当たり30ベクレルで、今回の数値は4万3000倍以上に当たる。海側では汚染された地下水が海に流れ出るのを防ぐため、護岸の地中を薬液で固める『土の壁』を造成しており、東電は『海洋への影響はない』と流出を否定している」と、これまた海洋流出を防ぐシルトフェンスの実効が上がっていない現状を指摘していた。
汚染水タンク林立、周辺の土地へ拡大
東京新聞はヘリコプターを飛ばし、原発事故1000日の状況をリアルなレポートを4日付朝刊に掲載した。「護岸近くに無数の太い鋼管を打ち込んで壁を造り、漏れを止めようとする作業が続く。(中略)上空を飛ぶのは、8月にボルト締め型タンクから汚染水漏れが発覚して以来、3カ月半ぶりだ。その間にも、敷地南側にあった野球場は消え、タンクの増設用地へと姿を変えていた。耐久性の高い溶接型タンクに切り替えるため、作業員がコンクリートの基礎を造っていた。北側でも森の伐採が進み、汚染した瓦礫などの一大集積場と化しつつあった。気掛かりなのは、海洋汚染対策。鋼管による遮水壁の建設はかなり進んでいるように見えたが、東電によると完成は10カ月も先だ」との報告を読んで、収束の見通しなお遠しの感が深い。
使用済み核燃料処理など、別の難題続出
原発事故は多岐にわたっており、汚染水以上の難題が目白押しだ。4号機に1500本もある使用済み核燃料取り出し作業は始まったばかりで、作業が完了するのは早くても1年はかかるとみられている。今後、1、2、3号機の核廃棄物も除去しなければならない。更なる難題は、核廃棄物貯蔵施設。報道によると、1号機周辺を中間貯蔵用地とする案などが浮上しているというが、地元自治体との調整は難航するに違いない。予想できない日時と膨大な費用がかかる廃炉への道筋は、まだまだ示せない。東電だけで打開できるはずはなく、政府が積極的に乗り出すべきである。
(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。
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