「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』⑳「伊藤博文統監の言動」(小松緑『明治史実外交秘話』)⑤ハーグ密使特派事件の真相ー韓人韓国を滅す事態に
2018/01/12
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が報道した「日韓併合への道』の真実⑳
「伊藤博文統監はどう行動したか」(小松緑『明治史実外交
秘話』中外商業新報社, 昭和2年刊)より)⑤
「韓帝親翰事件に続いて、ハーグ密使特派事件が起こり、
憤激した伊藤博文統監が韓帝にただすと、
再び虚偽の回答があり、韓人韓国を滅す事態に。
ハーグ密使特派事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%82%B0%E5%AF%86%E4%BD%BF%E4%BA%8B%E4%BB%B6
親翰事件は、保護制度実施前後の出来事であったので、伊藤統監もさほど重視しなかったが、ここにさしも寛大な伊藤をして、最早容赦ができぬとまで、憤怒せしめた事件が勃発した。
伊藤が、親翰事件以後は、韓帝もその過ちを悔いて必ず無謀の行為を慎むものと安心して、南山脚下の緑泉亭で、得意満面、詩酒微遂に耽っている時に、ハーグの万国平和会議
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%87%E5%9B%BD%E5%B9%B3%E5%92%8C%E4%BC%9A%E8%AD%B0
に突如として三名の韓国全権委員が現われ、先づロシアおよび米国の全権委員を歴訪して、彼等が韓国全権委員として会議に参列し得るように斡旋を依頼し、次いで各国新聞記者を招いて、彼等が韓帝の正式全権委任状を携帯している特派委員たることを告げ、なおその目的が、万国平和会議の壇上に立って日本の横暴を列国に訴え、列国の力をかりて国権の回復を図るにあることを声明したので、それが直に世界の新聞に発表された。
万国平和会議は、1907年(明治40)6月に開催されたものであるから、列国の全権委員は既に韓国が日本の保護国となっている事実をよく知っていたので、この韓国全権委員を相手にしなかった。
しかし日本が伊藤という大人物を統監にして置きがら、韓帝が全権委任状を携帯する委員を特派するほどの大袈裟な陰謀を未然に防げなかったのは、たしかに大失態であった。
この監督不行届きという責任は日本の外務大臣よりも寧ろ伊藤統監の頭上に落つべき筋合であった。細かくいえば、伊藤の幕下で外交事務を担任していた著者の手ぬかりであった。
この事件には、統監の監督下にあった内閣員の関係する筈がなかったので、伊藤は元づ宮内府大臣をして厳重に韓帝に尋ねさせた。韓帝は例に依って知らぬ存ぜぬの一天張で何もおっしゃらない。ただ一寸手がかりとなったのは、一度、宮内官をしていたが、放蕩の為めに免職となった王姪・趙南昇が収入の少いはずなのに、近頃、にわかに金使いが荒くなった事である。趙南昇は一寸小才がきいた上、王族という関係から、常に韓帝の身辺につきまとっていた男である。
伊藤は親翰事件以来、陰謀には必ず運動費がいるから、陰謀の取締には運動費を抑えるのが必要だという考えで、王室財政の収支を厳、重に監督することにしたから、その後は王室から多分の運動費を出すことができなくなっていた。
そこで趙南昇の無駄使いをする金は韓帝の手元から出たものでなく必ず外人方面から出たものと思われたので、著者はさしずめ王室と金銭上の関係を持っているコールブランに目星を着けた。
韓帝は種々の特権を外国人に与えられたが、その中で米国人コールブランという者に、京城の電車および電灯の独占権を特許されその報償として電気会社の株券の半数を受けておられた。
コールブランは配当の代りに時々御用金を納めていた。これは公然配当として出せば、すぐに王室財産の内に編入されて、韓帝が自由に使えなくなるからだ。
著者はコールブランと知合いの間柄であったので、彼を午餐に招き、何気ない体で、
『近頃国王に御用金を納めたそうだが、いくらばかり出したか。』
と訊いて見ると、さすが米国人の事とて正直に答える。-
『十五万円の要求があったので、国王の書付と引換に趙南昇にそれだけ渡した。』
『なにに使われたろうか。』
『それは判らない。』
『ハルバートは、密使事件に関係しているか知らん。』
『それも判らないが、金を渡してから間もなく、彼がシベリア鉄道で欧洲に行っただけは事実だ。』
これだけ開けば沢山だ。大抵見当がついた。
韓帝の謀反
伊藤統監は、再び宮内貯大臣を招いて、韓帝がコールプランから取った金を何に使われたかを取調べるよう命じた。
翌日、宮相・李載克は、統監を訪れて次の通り報告した。
『陛下に伺ったところ、親翰事件に関係しなかったように、密使事件にも関係したことはない。この事件は恐らく雑輩の悪戯であろう。金は趙南昇が受取ったかも知れぬが、朕の手には一銭たりともはいっていないと仰られた。』
光武帝の手に金がはいったか、はいらなかったかは、当面の問題ではないが、帝が一文も受取られなかったとすれば、趙南昇がコールブランの出した金を、全部中途で着服したという形になる。
そこで、統監はすぐに警察をして趙南昇を捕えさせた。帝の受取るべき金を無断で使ったとすれば横領罪になるし、帝の知らぬ間にコールプランから金を取ったとすれば詐欺であるから、彼を逮捕する理由は十分にあった。そうまで悪党でもない趙南昇は、ただ国王の命令で働いただけであるから、自分には何の罪もないとて、素直に一部始終を白状してしまった。
その陳述によると、コールプランから受取った十五万円は、運動費として米人ハルバート、前議政府参賛・李相窩(りそうか)、前判事・李儁(りしゅん)および趙南昇4名に分配された。韓帝はハルバートの草案に係る全権委任状と露帝宛の親書を李相窩、李儁両人に与えた。
ハルバートは、明治40年4月上旬に京城を出発し、李相窩および李儁は2,3日遅れてその跡を追ったが、三人ともウラジオストックで落合い、相携えて露都に赴き、ロシア政府に保護されていた前駐露韓国公使・李範晋の手を経て韓帝の親書を露帝ニコラスに捧呈して、その援助を求めた後、李範晋の長子前駐霹公使館書記官・李瑋鐘(りいしょう)を一行に加え、相携えてハーグの万国会議に行ったのである。
趙南昇の自白の中に、韓帝から委任状と親書を下付されたとあるが、その事実を確める為に、草案の所在を糺問すると、韓帝の申付けでフランス教会に内密に預けた手さげ金庫の中に入れてあると答えた。それを取り寄せて調べて見ると、種々の秘密書類と共に委任状と親書の草案が出て来た。
親書の草案は左の通りである。
『朕、今日の境遇愈々益々艱難にして四顧之を訴うる所なし。唯だ陛下に向って之か煩陳せんのみ。弊邦振興の期全く陛下の顧念に係る。今や、幸に万国平和会議の開かるるあり。
該会議に於て弊邦所偶の実に理由なきを声明するを得む。韓国はかつて露日開戦の前に於て中立を各国に宣言したり。是れ世界の共に知る所也。現時の状勢は深く憤慨に堪えず。陛下弊邦の故なくして禍を被るの情を特念せられ、努めて朕が使節をして弊邦の形勢を将って該会議開催に際し説明するを得せしめ、以て万国公然の物議を致さば、則ち之に因りて弊邦の原権庶(こいねがわ)くぼ収回するを得む。
果して然らば、朕および我が韓全国は感激して陛下の悪徳を忘れざるペし。前駐韓貴国公使回去に際し、願望の深衷を付陳し、該公使に託する所あり、唯垂諒あらんことを望む。』
末文に前駐韓貴国公使・回去とあるは、日露開牧のためロシア公使.パブロフが本国に引揚げようとして韓帝に内謁した時に、韓帝から何か露帝の援助を頼んだものと見える。
この前の親翰事件といい、今回の密使事件といい、韓帝が始終列国元首、殊に露帝に依頼して、日本を排斥しようとしていた事実を立証するものである。如何に宦官雑輩や外国策士などに誤られたとはいいながら、光武帝の軽挙妾動もここに至って極まれりというべきである。
つづく
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