前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

★『日本で奴隷解放に本気で取り組んだ人物は誰でしょうか講座①』★「アメリカ初代大統領・ワシントン、イタリア建国の父・ガリバルディと並ぶ世界史の英雄・西郷どん(隆盛)ー奴隷解放に取組む」★『奴隷解放』のマリア・ルス号事件がある。

      2022/01/21

 

   日本リーダーパワー史(859)記事転載

 「世界史の英雄・西郷どんー奴隷解放に取組む」

前坂俊之(ジャーナリスト)                

「西郷隆盛は世界的な英雄だった」とは明治文化研究会、評論家・木村毅(1894- 1979)の「世界人としての西郷南洲先生」(昭和28年)での弁である。

西郷はアメリカ独立戦争の英雄で初代大統領ワシントンやナポレオンらを尊敬しており、壁に肖像画をかけて、封建武士階級社会を打破し、自由・人権・平等社会を希求した。

ワシントンは元は黒人奴隷農場の牧場主であったが、1789年の第一回米国議会で初代大統領に選ばれ、2万5千ドルの給与が決定された。ワシントンは無私の公僕精神からこの給与を辞退した。

西郷も同じく陸軍大将に任じられた時の給与(五百両)を辞退しており、無私の精神は共通しており、奴隷解放にも取り組んでいる。

 

当時、世界的に有名だったイタリア建国の父・ガリバルディは、南米各国の独立運動にも活躍して「二つの世界の英雄」とも呼ばれていた。

西郷とは同時代の英雄で、その悲劇的な最期でも共通しており、日本でも有名だった。評論家・三宅雪嶺は「西郷が民主的思想の持ち主で、人格高潔でもはるかに上回る」と高く評価した。

世界史18、19世紀では日本が徳川幕藩体制に眠っている間、英国は産業革命が発展し、フランス市民革命(1789-99)、米国は南北戦争(1861―1865)、ドイツ統一(1864-1871)などのグローバリズムの大波が日本にも押し寄せてきて、西郷ら明治の志士たちによって明治維新が実現した。

「西郷を日本開国の父」とすれば、その思想的リーダーは福沢諭吉である。

福沢は『門閥制度は親の敵(かたき)でござる』と封建徳川時代を激しく批判した。

「生まれた段階で身分が決まる封建階級社会で下級武士の父親は学問を志しながらも、下積みの仕事しか与えられず、無念のうちに45歳の短い生涯を終えた」ことへの強い怒りだった。

福沢は「学問のすすめ」(明治5年)の冒頭で『天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず』という有名な言葉を書いた。人間はすべて平等であり、貧富・家柄・職業・社会的身分などによって差別することに反対して、父の敵(かたき)を討つたのである。

この決めセリフは米国独立宣言(1776年)の中の『すべての人間は生まれながらにして平等であり、生命、自由、幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている』の一節を福沢が翻訳、自己文章化したものだ。

福沢は西郷の行動に共鳴して、明治10年、西南戦争で敗北した後も『丁丑公論(ていちゅうこうろん)』で西郷を一貫して擁護し、最後まで支持していた。2人は真からの民本主義者(民主主義者)であったのだ。

 

ところが、西南戦争以後、明治政府は西郷に国賊・反逆者・軍国主義者のレッテルを張り、今日に及んでいる。西郷の真の姿は平和主義者、非戦論者だったことは、次の事実にも示されている。

  • 勝海舟との2人だけの会談で「江戸城無血開城」を1言のもとに了承し、江戸を戦火から守った。世界史でも稀な和平会談であった。
  • 廃藩置県で専制君主(藩主)を倒して、士農工商制度を廃止し、人権平等社会を実現した。
  • 関東、奥州三藩の反抗諸藩を戦後、寛大に処置した。
  • 征韓論は韓国との戦争を避けるために、武力派を抑え、文官として西郷が単身で交渉派遣に臨んで説得することに端を発した。

さらに『奴隷解放』のマリア・ルス号事件がある。

西郷参議(総理)中の明治五年六月四日、ペルーの帆船「マリア・ルス号」が清国人苦力(奴隷)二百三十二人をのせて横浜に入港した。この清国人は、ぺルーに売られていく奴隷であることがわかった。外務卿・副島種臣はこの非人道的行為を見逃さず、神奈川県参事の大江卓に命じ、同船の差し止めと同船長を告発した。

 

神奈川県令・陸奥宗光や司法卿・江藤新平らは、国際問題に発展することを恐れて、副島の措置に反対したが、副島は特設裁判所を開かせ、大江卓を裁判長として審理させた。

独、仏、伊、デンマーク、ポルトガルの五領事は反対し、米、オランダの二領事は中立、英国領事は外務省の意見に賛成した。日本政府の陪審判事3人も不干渉論を唱えたが、副島は裁判長大江卓の意見どおり裁判させ、清国人解放の判決を下し、全員、中国に送還した。

奴隷売買が世界的に横行していた時代に、大国に追随せず正義と人権を守り通した判決が出たのは、西郷参議が副島の意見を全面的に支持して、断固として反対派を押さえたためであった。

「国の本来の政治は軍備の不備を恐れず、1国の運命をかけても、正論を以てこれを貫くべし」というのが西郷の持論であった。同年10月の芸娼妓解放令に至る契機ともされる。

一方、岩倉西欧使節団から帰国した大久保利通、伊藤博文らはすっかり『外国恐怖症』になり「外交を事なかれ主義」「追随外交」に舵を切っていった。

これが日本外交のルーツである。

日本リーダーパワー史(858)ー国難の救世主「西郷隆盛のリーダーシップ」に学ぶ。明治維新の主な大改革は西郷総理の2年間に達成された。

http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/27319.html

 - 人物研究, 健康長寿, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『 Z世代のためのス-ローライフの研究』★『元祖ス-ローライフの達人・仙人画家の熊谷守一(97歳)のゆっくり、ゆっくり、ゆっくり』★『小学校の時、先生はいつも「偉くなれ、偉くなれ」というので、「みんなが、偉くなったら、偉い人ばかりで困るのではないか」と内心思った』

 2023/11/12の「」百歳学入門」の記事再録 <写真は5月29日 …

昭和戦前期に『言論の自由」「出版の自由」はあったのか→谷崎潤一郎の傑作「細雪」まで出版を差し止められた『出版暗黒時代』です①

昭和戦前期に『言論の自由」「出版の自由」はあったのか→ 答えは「NO!」ーー19 …

no image
速報(257)<原発事故民間事故調報告書『世界を震撼させた3月の7日間」①<菅元首相のリーダーシップは?!

速報(257)『日本のメルトダウン』   <福島原発事故独立検証委員会 …

no image
日本メルトダウン脱出法(855)日本人を元気にする岡崎慎司(レスター)のウルトラ・スーパーゴール/オーバーヘッドで決勝ゴール‼︎(決定動画)スゲーよ★☆

   日本メルトダウン脱出法(855) オーバーヘッド弾で評価一変!岡崎がこじ開 …

no image
○わが愛する名作「人生劇場」を書いた 豪放磊落<男の中の男>「尾崎士郎」記念館(大田区山王町1-36)を訪問

    ○わが愛する名作「人生劇場」を書いた 豪放 …

『オンライン講座/日本をチェンジする方法論の研究』★『3・11直後に書いた日本復活は可能か?の論考を再掲載』★『明治維新の志士はいずれも20歳の若者たちで、そのリーダーシップに学ぶ』』★『今こそ、「ゲームチェンジャー」(時代を変える若者) こそ出でよ、日本老害社会をぶち壊せ』

2011、6,14に書いた< 日本リーダーパワー史(160)記事再録 『3・11 …

no image
日本一の「徳川時代」授業②福沢諭吉が語る「中津藩で体験した封建日本の差別構造の実態」(「旧藩情」)②

  日本一の「徳川時代の日本史」授業②   「門閥制度は親の …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(85)記事再録/ ★日本の最強の経済リーダーベスト10・本田宗一郎の名語録―『成功は失敗の回数に比例する』★『怖いのは失敗することではなく、失敗を恐れてなにもしないことだ』★『需要がそこになるのではない。われわれが需要を作り出すのだ』

2010/08/04 / 日本リーダーパワー史(80)記事再録 前坂  …

no image
日本リーダーパワー史(928)再録増補版『日本のインテリジェンスの父』川上操六参謀次長が密命して、シベリアに送り込んだ『日本の007、満州馬賊隊長の花田仲之助」』

    2016/02/12 &nbsp …

『Z世代のための戦争史講座②』★『トラファルガー海戦を上回るパーフェクトゲームの「日本海海戦」②』★『東郷艦隊の勝因 とバルチック艦隊の敗北』★『日本は「艦隊決戦」と「大艦巨砲主義」の成功体験におごり、固執して40年後の太平洋戦争で全面敗北した。』

以下は「ツシマ世界が見た日本海海戦」(ロテム・コーネル著、滝川義人訳,並木書房、 …